将棋の高校生棋士・藤井聡太七段(17)は28日、東京・千駄ケ谷の将棋会館で指された第91期棋聖戦五番勝負第2局で渡辺明棋聖(36)=棋王・王将と合わせ三冠=を90手で破り、2連勝で最年少タイトル獲得に王手をかけた。第1局はスーツ姿だった藤井七段だが、この日はタイトル戦で恒例となっている和装で登場した。

 対局場には若武者のりりしい姿があった。藤井七段は公開対局やイベントでは和服を着たことがあったが、タイトル戦では初めて。漆黒の羽織に紺の着物、グレーのはかま。師匠の杉本昌隆八段(51)から贈られたものだった。

 その姿は最後まで微動だにしなかった。盤上は先手・渡辺棋聖が急戦矢倉から先攻すると、これを力強く迎え撃つ妙手を用意。いきなり両軍が中央で激突する大決戦となったが、ここで攻防の秘術を尽くした藤井七段。最後は天下の三冠を相手に悠々と抜け出し、午後6時38分、終局の瞬間を迎えた。消費時間は藤井七段3時間55分、渡辺棋聖3時間50分だった。

 終局後、和服での初めての長時間対局で勝利を挙げた感想を聞かれた藤井七段は「実際着てみると、思ったより快適で普段通りにできた」とコメント。初タイトルへ向けては「五番勝負は5局で1つの勝負。今までと変わらない気持ちで臨めれば」と気を引き締めた。一方、渡辺棋聖は「均衡が取れるよう指したつもりだが、1手でバタバタとダメにした」と首をひねった。

 先手番だった第1局は157手の大熱戦の末の勝利だったが、第2局は後手番ながら完勝劇でのブレーク(タイトル戦の後手番で勝つこと)。これで展望は大きく開けてきた。これまでの最年少獲得は屋敷伸之九段(48)の18歳6カ月。1990年の第56期棋聖戦での快挙だった。藤井七段が7月9日に東京・千代田区で行われる第3局に勝つと17歳11カ月で、これを7カ月上回る。

 コロナ禍による対局延期の影響で過密日程を強いられている藤井七段。今月は何と9局を消化した。今後もこの状況は続き、次は中2日で地元愛知県での対局となる7月1〜2日の王位戦七番勝負(中日新聞、東京新聞主催)開幕局を迎える。コンディションの維持がカギを握る。

 ▼藤井聡太(ふじい・そうた) 2002(平成14)年7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身の17歳。12年にプロ棋士養成機関の奨励会に入会。16年、最年少の14歳2カ月でプロ入り。17年6月、デビューから無敗で最多29連勝を達成。一般棋戦優勝3回。20年6月、棋聖戦挑戦者となり、最年少タイトル挑戦記録17歳10カ月20日を樹立。名古屋大付属高3年生。

 ▼将棋のタイトル戦 タイトル保持者と挑戦者が五番勝負もしくは七番勝負で争う将棋の棋戦には竜王戦、名人戦、叡王戦、王位戦、王座戦、棋王戦、王将戦、棋聖戦があり、8大タイトル戦と呼ばれる。現在、タイトル保持者は4人。豊島将之竜王・名人、永瀬拓矢叡王・王座、木村一基王位、渡辺明棋王・王将・棋聖となっている。