鬼気迫るオーラを醸し出していた。白鵬は12日目に冷静さを欠いた相撲で、正代に痛恨の1敗。立て直すのか、ずるずるいくのか。流れを決める大一番で、朝乃山を真っ向勝負で圧倒した。

 右の相四つの相手に張り差し、かち上げも封印した。当たって前に出るだけ。その形になって負けたとしても、それは朝乃山が強かったということ。ミックスゾーンを無言で通過した白鵬の真意は分からないが、そのくらい一途に臨んだのではなかったか。

 八角理事長(元横綱北勝海)も「集中力あったね、今日は。(立ち合いが)低いよね。立ち合いの差だよね」と12日目とは別人の内容に白鵬を高く評価した。

 「目に見えない。不思議な緊張感」という、新型コロナウイルスとの闘い。場所が始まれば目の前の力士、そして自分との闘いが待っている。普段の場所なら千秋楽まで良心的に取材対応する横綱が、2日連続で無言だった。異例の場所だからこそ、終盤戦の重みを今まで以上に感じているからだろう。

 場所前にこんな話をしていた。大鵬が貴ノ花に敗れ、千代の富士は貴乃花に敗れ引退。「琴ノ若関と対戦したことがありまして、琴ノ若関の息子さんも新入幕。大鵬関の孫、納谷も、朝青龍関のおいっ子も出てきました」。時代の流れを感じ、朝乃山よりも若い、新しい力が芽生えてきたことを漏らし、こう続けた。

 「そういう芽がずい分出てきましたけど、たくさん昔のビデオを見て何かこう、バトンタッチというかあるじゃないですか。そういうものを待っています」。

 ただ、今はまだその時ではない…無言を貫きながらも、相撲で答えているように見えた。