幻となった「開幕戦」で柳が披露したのは変幻自在の投球だった。宣言通り、習得したシンカーを数球にとどめて6イニングを1失点。新球を駆使したパ・リーグ相手のオープン戦とは一転、直球とカーブを軸に開幕投手の広島・大瀬良と渡り合った。

 「カーブは、前回はあまり投げていなかったので多めに投げました。球の高さ、カウントでの使い方。どうやったら打たれるか、どうやったら打ち取れるかがよく分かった。有効に使えたので良かったと思います」

 26試合で11勝を挙げた昨季、カーブの比重は全体の11・4%だった。この日は全89球のうち19球(21・3%)。3回、菊池涼に116キロを左中間席に放り込まれても配球から消すことなく使い続け、広島打線を手玉に取った。

 150キロを超える直球や魔球のような変化球があるわけではない。「いろんな投球ができれば、それに越したことはない。いろんな球を軸にしながら、いろんなスタイルで投げていければ強みだと思う」。目指すべき姿は明確だ。

 2018年5月25日以来、2年ぶりのマツダスタジアム。いつもは真っ赤に染まるスタンドは静まり返っていた。「観客がいなくて雰囲気が違うけど、自分の投球はできた」。重圧は比べようもないが、勝利に導いた事実と記憶は残る。