◇大相撲春場所14日目(21日・エディオンアリーナ大阪)朝乃山●(下手投げ)○鶴竜

 下手投げで倒れ込む直前、朝乃山が土俵につきかけた左手をサッと引き戻した。身を守る本能も押さえ込み、執念むき出しの魂の粘りも、鶴竜にはわずかに及ばなかった。対横綱2連敗で4敗目。大関昇進の目安として求められた直近3場所計33勝へ、今場所で求められた12勝には届かなかった。

 「(左手の動きは)勝ちたいって気持ちが出たと思う。あとちょっと、すごい悔しかったっす」

 勝利のためにコンマ何秒かを体を張って稼ぎ、土俵下に転落した。いったんは軍配が上がったが、物言いが付いて行司差し違えで黒星に。花道を引き揚げ、VTRを確認すると天を仰いで文字通り、がっくりと肩を落とした。

 大関とりの3場所、横綱戦の白星は昨年の九州場所の不戦勝だけ。相撲を取れば3敗だった。横綱撃破でのアピールは叶わず、取組後は「悔いはないんで。まだ自分が弱い。それだけ」と正直に思いを吐露。「出直しです」と2度繰り返し、白星の日にも見せなかった今場所イチの笑顔とともに引き揚げた。

 白旗ムード全開だったが、あきらめるのはまだ早い。土俵下で一番を見守った境川審判部長代理(元小結両国)は「横綱相手に果敢な攻めの姿勢は感じた」と前向きに評価した上で、審判部が預かる昇進問題についても言及した。

 「力は十分に付いていると思う。うかつなことは言えないけど、安定した成績で今場所の内容も良い。明日(千秋楽)が終わって、そこでどういう見解になるか。話し合うのか、数字(33勝)を重く見るのか」。目安にとらわれない姿勢を示した。白星締めなら希望も見えてくる。

 運命の千秋楽は、38年ぶりの一人大関で7勝7敗の貴景勝に挑戦する。「思い切っていきます」と最後の力を振り絞り、無心の右四つの攻めで大関昇進の吉報をたぐり寄せる。