◇龍の背に乗って

 9回、無死一塁から根尾の投前への犠打を、広島のDJ・ジョンソンが悪送球。ファウルゾーンを転々とする間に、決勝点が入った。

 根尾のバント。昨季の公式戦では1、2軍ともになかったが、秋のフェニックスリーグではチームの方針もあり、3度ある。つまり、非公式戦とはいえ1軍では初犠打。「根尾も1軍ではああいうシチュエーションもある」。与田監督の言葉に異論はない。ただ、好奇心で根尾には聞いてみた。「高校時代にバントしたことは?」。彼は首を横に振った。

 「ひょっとしたら西谷監督はサインを出したのに、僕が見落としたことがあるのかもしれませんが…。やったことはないですね。(同じ高校でも)平田さんは自分の判断でセーフティー気味にやったりしていたとは聞いています」

 僕が知る限り、バント知らずでプロに入った中日の選手は、高橋と根尾だけだ。平田、堂上、福田…。強豪校だからか、それが高校野球だからか、とにかくみんなやっている。ただし、数は多くはないだろう。タイプに違いはあれども、プロ野球とはお山の大将の集団だ。甲子園のスターや2軍の主砲も、1軍に上がれば「犠牲」を求められるようになっていく。

 両リーグ本塁打王の山崎武司が5、3年連続首位打者のアロンゾ・パウエルがなぜか1、三冠王3度の落合博満でさえ中日時代にも1犠打の記録が残っている。ちなみに「外国人を除く、1000打席以上の現役選手」の条件で調べると、バント知らずは5人だけ。その1人が本塁打と三塁打で復調の兆しを見せた福田(1776打席)だった。

 「(DJ・ジョンソンは)球が動くので、少し怖かったです」。根尾は1ボールから一発で決めた。ほとんどの選手がいつか、どこかで覚えるのが送りバント。この日は記録には残らないが、開幕1軍を勝ち取れば本物の初犠打の機会も訪れるはずだ。

(渋谷真)