◇22日 大相撲春場所千秋楽(エディオンアリーナ大阪)

 史上初めて無観客で行われた静寂の場所で、関脇朝乃山(26)=高砂=が大関昇進を確実にした。大関貴景勝(23)=千賀ノ浦=を押し倒して11勝4敗。貴景勝には3連勝で、直近の3場所を計32勝13敗とした。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、昇進を諮る臨時理事会の開催を了承。25日に「新大関朝乃山」が誕生する。横綱白鵬(35)=宮城野=が横綱同士による相星決戦で鶴竜(34)=陸奥=を寄り切り、13勝2敗で2場所ぶり44度目の優勝を決めた。

 夏場所での出直しを覚悟していた大関とりを、朝乃山が無心の攻めで逆転成就させた。

 2横綱に連敗して迎えた千秋楽。貴景勝が得意とする突き押し相撲で真っ向勝負に出て、左前みつを引いた。まわしを切られても足を止めず、左に回って突進し、土俵下へ一気に押し倒した。得意の右四つには組めずとも、一人大関に完勝。大関の座にふさわしい11勝目だった。

 「自分の中で大関はないと思って、悔いのないように、来場所につなげようと自分の相撲を取り切った結果。実感はないっす」

 天国の2人の恩師を会場に「招待」し、力を借りた。2017年初場所で幕下優勝し、関取昇進を決めた一番を見届けて40歳の若さで死去した富山商高相撲部の浦山英樹監督と、今年の初場所中に55歳で急逝した近大相撲部の伊東勝人監督だ。

 「見てくれていると心に決めて取りました」と、2階のいす席に2人の姿をイメージ。土俵へ上がる前に視線を向けた。苦しいときには「自信を持って行け」「しっかり当たれ」と叱咤咤(しった)激励の教えが響き、背中を押してくれた。

 大関昇進の目安とされる、三役での直近3場所合計33勝には届かなかった。それでも、昇進問題を預かる日本相撲協会審判部は相撲内容を重視。昇進を審議する臨時理事会の招集が決まった。

 境川審判部長代理(元小結両国)は「きょう勝てば、ということで落ち着いた。誰と対戦しても堂々として、本格的な右四つの形を持った良いお相撲さん。本人の持つ資質、伸びしろは十分ある」と高評価。横綱も視野か、との問いに「大丈夫じゃないですか」とうなずいた。

 期待に応じるように、朝乃山は「プロに入ってから2つ(大関と横綱)を目指してやってきた」と胸を張った。富山県出身では、大関が番付の頂点だった時代の太刀山以来、111年ぶりの大関誕生へ。その第一歩を刻む25日から、横綱の座を見据えていく。