◇大相撲春場所千秋楽(22日・エディオンアリーナ大阪)  結びで白鵬と鶴竜の優勝を懸けた大一番が待っていたが、私には朝乃山と貴景勝戦の方が気になって仕方がなかった。朝乃山が勝つと、11勝でも大関に昇進するかもしれない。これはあくまで私の考えであった。それに、内容も問われる。とにかく勝たねばならぬ。

 今場所がダメでも来場所があると悠長なことを言う人もいるが、来場所の保証など誰がしてくれるものか。チャンスは、そうは何度も巡ってこない。いちるの望みがあるのなら、千秋楽で必ず望みをかなわせなければいけない。

 恐らく朝乃山にも、その思いがあったとみる。対する貴景勝も勝ち越しが懸かっている。もし負ければ、来場所は屈辱のかど番となる。両者の意地が相撲の中に見て取れた。

 貴景勝が鋭い当たりから先に前へ出る。今場所の貴景勝は不調を極めていたが、14日目は本来の押しに戻っている。しかし、攻められたのはこの場面だけ。懐の深さに物をいわせて朝乃山は待望の左でまわしを引いた。貴景勝の押しが止まる。

 ここからは朝乃山の独壇場となる。あまり私もはっきりと覚えていないが、たぶん右四つに組み止めたと思う。こうなると、貴景勝は打つ手がない。力尽きて、静かに土俵を割った。朝乃山は何事もなかったかのように勝ち名乗りを受けたのである。

 結びの白鵬と鶴竜戦は過去の対戦成績が示すように、圧倒的な相撲で白鵬が44回目の優勝を決めた。いまさら驚くことでもないので、これといった感想はないが、この特別な場所を終始、引っ張り続け、見事に横綱の責任を果たしてくれたのは立派の一言に尽きる。

 それよりも打ち上げ後、審判部が朝乃山の大関昇進にゴーサインを出したとの朗報が入った。私の願いが通じたようで、うれしい限りである。

 この1年間で、朝乃山が本当に力をつけてきたのは承知の通りである。常に2桁勝つ地力は、大関に昇進しても十分に通じるのは間違いない。右四つの型は、ほとんど言うことはない。長身だが腰がよく下がり、下半身の安定は白鵬に次ぐほどであろう。残る課題は立ち合いの厳しさである。当たりをもっと鍛え、前に出る馬力がつけば鬼に金棒となろう。とにかく、生きの良い大関誕生はめでたい。

 もう大関確実のような話になって申し訳ない。無事千秋楽を迎えることができて、今はホーッとし、そして疲れがドーッと出てきている。今こうして原稿を書いているが、早く済ませてビールで乾杯でもしたい気持ちであります。

 28日で78歳になります。お年寄りが毎日コロナに感染し、亡くなられています。その都度、今度は俺の番かと結構、気を使う毎日でした。それでも何とか仕事を全うできたので満足です。23日に帰京します。来年は果たして来られるでしょうか。おしまいに今できた一句。

  ハッケヨイ 戦い終えて 春を知り                 勝昭   今年は大阪城の桜など、すっかり忘れていました。お粗末。(元横綱)