「応援制限」に続いて「入場制限」。開幕が1カ月以上も延期され、4月24日に再設定されたプロ野球の新型コロナウイルス対策だ。平たく解釈すると、少人数で静かに―。球場に足を運ぶファン心理を考えれば、「これでは行く意味がない」という悲嘆が聞かれるのも無理はない。

 日本野球機構(NPB)とJリーグによる新型コロナウイルス対策連絡会議では、3月12日に専門家チームからさまざまな提言が示された。反響が大きかったのは、飛沫(ひまつ)感染や接触感染のリスクを下げる応援方法の提案。それに照らすと、山崎康晃(DeNA)の登板時の「ヤスアキジャンプ」や広島の名物「スクワット応援」などは「高リスク」と判断される可能性が高く、全球団で従来の応援スタイルからの大幅転換を余儀なくされる。

 また、濃厚接触のリスクを回避するために観客同士の距離を確保することも求められ、「満員開幕」は絶望的。高齢者や複数の基礎疾患を持つ人らに対しては来場自粛が呼び掛けられる。

 一見すると確かに厳しい内容だ。だからといって、専門家チームを非難するのも筋が違う。愛知医科大大学院の三鴨広繁教授は「われわれは『延期ありき』ではない。どのようにしたらリスクを減らし、開催できるかを考えて提言させていただいている」と繰り返し、東北医科薬科大の賀来満夫特任教授は「リスク管理をしっかりと行うことを踏まえ、今後の開催にあたっては、これまで以上の十分な注意と対応をとり、ご判断をいただきたい」と最終的な決断は主催者側になることを強調している。

 議論の前提として「無観客試合の否定」があることを忘れるべきではない。無観客であれば、選手や関係者のリスクは残るものの、観客のリスクはゼロになり、開催のハードルは下がる。ただ、観客を入れて開催したいというのは、12球団の総意だった。

 試合はしたい。観客も入れたい。その希望を両立させるために専門家チームは頭を悩ませ、提言をつくった。日本国内では都市部の陽性患者が増加し、感染源を追えない症例も多発している。感染リスクを“安全圏”まで下げ、プロ野球を興行として成立させる―。NPBの斉藤コミッショナーが表現した「複雑な方程式」に確かな「解」はあるのだろうか。(井上学)