世界中どこもコロナ、コロナ、コロナである。感染のスピードと死亡する危険度には驚くばかり。不要不急の外出自粛の中、アスリートたちも苦慮している。

 ボクシング界で最も注目されているWBAスーパー王者&IBF世界バンタム級王者井上尚弥(27)=大橋=もその一人。昨年11月、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)トーナメント決勝でノニト・ドネア(フィリピン)を下して優勝し、今や世界に名をとどろかすスーパースターだ。

 本来なら4月25日、米国・ラスベガスでWBO世界バンタム級王者ジョンリエル・カシメロ(31)=フィリピン=との3団体統一戦に臨んでいたはずだった。しかし感染拡大の影響で対戦の延期を余儀なくされている。

 これについて先週、井上が大橋ジムを通じてコメントを発表した。「試合延期をしっかりと受け止めているので心境に変わりはなく、来る日に向けて調整中です。焦りは何一つありません。現在はオーバーワークでも練習不足でもなくスキルを落とすことなくキープしています」とまずは現状を報告した。

 そして「カシメロ選手もトレーニングが出来る環境にあるとの情報なので、しっかりと仕上げてほしい。その情報以外にこちらにもしっかりとした情報が入っているので気にしていません。必ず3団体統一戦を実現させますのでファンのみなさん楽しみに待っていてください」と続けた。

 さらに外出自粛にも触れ「今は皆が辛い状況です。一人一人の意識で守れる命が助かり、近い将来を変えます。そのためにも不要不急の外出を控え、人との接触を減らし、この大変な状況を乗り越えましょう」と呼び掛けた。焦らず、動じず、思いやりに満ちたこのコメントからは王者の風格が伝わってくる。

 中米のニカラグアでは25日、観客にマスクの着用させるなど、感染防止策を施した上でボクシングの試合を開催したと報じられているが、今のところこれは例外かもしれない。興行を主催するトップランク社のボブ・アラムCEOは、井上―カシメロ戦の実現の優先順位を第一に挙げながらも試合実現が流動性であることを否定しない。

 大橋秀幸会長もコメントを出した。「状況にもよるがカシメロ戦を第一に考えています」としながらも「この世界情勢。状況の変化にも対応したい」。こちらも井上同様に浮き足だってはいない。

 先行き不透明で陣営も達観しているようだが、このビッグカードだけは何とか実現してほしいものである。(格闘技評論家=第1回オープントーナメント全日本空手道選手権王者)