『居眠り磐音』製作の大きなきっかけとなった『超高速!参勤交代』

(C)2019 映画「居眠り磐音」製作委員会

5月17日より松坂桃李主演の『居眠り磐音』が劇場公開となりました。

佐伯泰英のベストセラー時代小説を原作にしたこの作品、日本映画に久しくなかった本格的ヒーロー時代劇として、スリリングかつユーモラス、その奥に哀感がこもるエンタテインメントとして、時代劇ファンならずとも必見の快作に仕上がっています。

本作の本木克英監督は、昨年の『空飛ぶタイヤ』(18)をはじめ、今もっとも面白い映画を世に放ってくれる俊英であり、いわば信頼のブランドといっても過言ではありません。

今回はそんな本木監督が『居眠り磐音』以前に手掛けた大ヒット時代劇『超高速!参勤交代』二部作をご紹介!

たった5日で江戸へ参勤!?無理難題に挑む弱小藩の面々

映画『超高速!参勤交代』は2011年に第37回城戸賞を受賞した土橋章宏の脚本(2013年には小説化)を基に製作されたものです。

(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会

時は江戸期、徳川八代将軍吉宗が治める享保20年(1735年)、陸奥国磐城の湯長谷藩の藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は1年の江戸勤めを終えて国に戻ってきたばかり。

ところが徳川幕府の老中・松平信祝(陣内孝則)から、藩が所有する金山の調査結果に疑義があるため、事情説明のために「5日の内に参勤せよ」との命令が下ります。

これは無理難題をふっかけて藩を取りつぶし、金山を手に入れようとする信祝の謀略でした。

石高15000石で、4年前の飢饉のために蓄えもなくし、参勤する費用もない弱小・湯長谷藩。

政醇は藩と領民を護るため、家老・相馬兼嗣(西村雅彦)の案を受け入れます。

それは少人数で山中を走り抜け、幕府の役人が駐在する宿場町のみ人を雇って大名行列を組むという、実に奇抜なものでした。

かくして、一匹狼の忍び・雲隠段藏(伊原剛志)の道案内で江戸に向けて出発した政醇ら湯長谷藩一行8名。しかし信祝も彼らを亡き者にすべく、ひそかに刺客を放っていました……。

本作はユーモラスなタイトルから想像がつくように、コミカルかつアクティヴ、そしてスピーディな時代劇で、本木監督自身、戦後の日本映画黄金時代における明朗快活な東映時代劇のラインを狙ったと発言しています。

基本は日夜走り続け、宿場では行列を装いつつ、刺客の来襲によるチャンバラもありと、ドタバタの中にも緊迫感の描出を怠ることなく、さらには宿屋の飯盛り女お咲(深田恭子)と政醇の恋模様など、エンタメ要素てんこもりで迫る本木演出は絶好調! の一言ではすまされないほどの快進撃。

それに相応する形で、第57回ブルーリボン賞作品賞や第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞するなどの高評価。

興収も15億5000万円のクリーン・ヒットとなり、以後、時代劇映画が定期的に作られるきっかけにもなっていきました。

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「柳の下のドジョウ」以上の成果を収めた続編

そして本作も急遽、続編『超高速!参勤交代リターズ』(16)が前作と同じスタッフ&キャストで制作!?

超高速!参勤交代リターンズ メイン2

(C)2016「超高速!参勤交代 リターンズ」製作委員会

江戸まで「参勤」した政醇たちですが、今度は「交代」。即ち湯長谷藩に帰るまでの騒動が描かれます。

参勤で持ち金を使い果たした政醇たちですが、何と湯長谷藩で一揆が勃発したとの知らせが入りました。

幕府の目付が藩に着くまでに収束できなければ、藩がお取りつぶしになるのは必定!

目付が到着するまで、あと2日。政醇らは参勤の倍速で藩に交代せねばならなくなるのでした……。

映画界には「柳の下にはドジョウが二匹いる」とのたとえがあり、本作もそれに倣って企画された続編ではありましたが、前作で培われたスタッフ&キャストのチームワークとその熱意を本木監督が受け止めつつ、笑いも殺陣もスケールアップされた逸品に仕上がっています。

特に幕府軍1000名VS湯長谷藩7名で繰り広げられるクライマックスは圧巻!

興収も11億6000万円と、続編映画としての使命を見事に全うしてくれました。

思えば戦後日本映画黄金時代の後、テレビの普及で1960年代あたりから徐々に製作本数が減少していき、1980年代以降はまったく作られない年もあるほどすたれていった時代劇映画ではありますが、21世紀に入り、また少しずつさまざまな趣向を凝らしながら現代の観客のニーズに合わせたものが作られるようになっていきました。

特にこの『超高速!参勤交代』二部作のヒットは、もはやテレビ時代劇すらほとんど作られなくなって久しい昨今、多くの時代劇ファンを映画館に呼び戻す大きなきっかけとなり、その結果、今年2019年の時代劇映画ラッシュに結びつき、『居眠り磐音』のような本格ヒーロー時代劇の復活にまで至ったと捉えて間違いありません。

本木監督の新旧時代劇の妙を劇場およびモニターで、ぜひご堪能ください。

(文:増當竜也)


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