■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。51回目の更新、今回もよろしくお願いします。

どんな時にもユーモアを。これは本当に重要で必要なことだと感じます。

しかし、ふとすると、生活に忙しく、生きていくのに精一杯で自分本意で自己中心的になってしまうのが常。仕方ないといえば仕方ない。けれども、心に余裕を作り、例えば人と関わる時に、一つユーモアをプラスするだけで周りも、自分も少し軽くなる。いろんな作品を見るたびにそう思わされる。

真面目な話をするときにも、ストレートに話すより、ひとつフックを挟んだほうが、本題がしっかりと相手にも刺さるからかなり重要なファクター。大人になるということは、そういうことにも気を遣えるようになることなのかしら、、と思います。

重たい題材を、監督の持つ高いユーモアセンスで包みこみ、子供の目線で紡いだコチラの作品をご紹介します!

『ジョジョ・ラビット』

時は第二次世界大戦下のドイツ。10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、今日から青少年団ヒトラーユーゲントの合宿に参加することでひどく緊張していた。"空想上の友達”アドルフ(タイカ・ワイティティ)から励まされて、ジョジョは気を取り直して家を出る。合宿で待っていたのは、片目を失ったクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)らの厳しい戦闘訓練だった。

ヘロヘロになりながらも、なんとか1日目を乗り切るジョジョは、唯一の実在の友達で気の良いヨーキー(アーチー・イェーツ)と眠りにつく。ところが2日目に、命令通りにウサギを殺せなかったことで、ジョジョは臆病者だとバカにされる。さらにはジョジョ・ラビットと不名誉なあだ名をつけられてしまう。アドルフのおかげもあり、なんとか元気を取り戻したジョジョは、手榴弾の訓練で張り切り過ぎて大怪我を負ってしまう。

ジョジョのたった一人の家族で、勇敢で優しい母親ロージー(スカーレット・ヨハンソン)が、ユーゲントの事務所までいき抗議をし、ジョジョの怪我が完治するまでは大尉の指導の元、奉仕活動をすることになる。

帰宅したジョジョは、亡くなった姉インゲの部屋で隠し扉を見つける。おそるおそる中を覗くとそこには一人の少女が匿われていた。ユダヤ人のエルサ(トーマシン・マッケンジー)と出会う。混乱するジョジョに、エルサは「通報すれば?でもあんたも母親も協力者だと言う。そうなれば全員死刑」と脅したのだった。ジョジョは考え抜いたあげく、エルサにユダヤ人の秘密を全部話してもらうという条件をつけ、自身がユダヤ人壊滅のための本を書くことを思いつく。その日からエルサとの生活が始まった。

ところが、ある日、ジョジョの家に秘密警察が乗り込んできて、、、、

本年度のアカデミー賞では6部門ノミネートされ、脚色賞を受賞した注目作。私も公開してすぐに鑑賞しました。見終わった後に、これは素晴らしすぎだとぐるぐるぐると舌を巻きました。作品賞を逃したけれど、本年度は特にレベルの高いアカデミー賞でした。

監督は、本作でアドルフ役も務めている、タイカ・ワイティティ。

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』『マイティ・ソー バトルロイヤル』などを監督し、今後も待機作がある、ユーモアあふれる作品を得意としている監督。さらには役者としての地力もあり、幅広く活躍している。

私は監督の作品は、「マイティ・ソー」と「シェアハウス〜」の2作しかまだ観られていないのですが、着眼点の素晴らしさが群を抜いている。

ヴァンパイヤたちが同居している様子をドキュメンタリーのように捉えて、各所にシュールなやり取りを散りばめた「シェアハウス〜」は、終始ニヤニヤ笑けます。

原作クリスティン・ルーネンズの著書『Caging Skies』を元に映画化した本作。

原作にユーモアとファンタジーをふんだんに盛り込み、見事に昇華。子供の目線で、第二次世界大戦下のドイツを描く。

第二次世界大戦の映画というと、重たく、もういいよと言いたくなってしまうほどのメッセージの強さを盛り込んだ作品が多い中、『ジョジョ・ラビット』はまさに異質。とてもチャレンジングな姿勢を目の当たりにしました。

子供目線の世界のため、衣装の軍服や、セットの色味が少しカラフルでファンタジーのような世界を彷彿とさせる。ウェス・アンダーソンの『ムーンライト・キングダム』が頭を過ぎりました。その為に、観る側に変な緊張感を与えることなく話が進んでいき、そのうえ、監督自身が演じているアドルフや友人のヨーキーとのやり取りが微笑ましくかわいらしさを演出(後半は少し変化しますが)。そのシリアスとユーモアのコントラストが抜群に良い。

そして、賞賛すべき俳優人!

主役のジョジョ役のオーディションはかなり難航したようで、監督は各国から送られてくるオーディションテープを1000本以上見ても決まらず、どうすべきか悩んでいる時に、ローマン・グリフィン・デイビスに出会い、その瞬間にオーディションが終わったそうです。まさに天才。しかもこれが映画初出演という驚き。ジョジョの愛くるしいキャラクター、造形、愛されたいという欲求に真っ直ぐな心情を見事に体現。

周りを固める大人キャストも、まさにベストアクト!

母親のスカーレット・ヨハンソンは今までのどのキャラクターよりもハマっていて、サム・ロックウェル(最近特に素晴らしい出演作ばかり)演じる大尉、彼は一見強面だけれども、ゲイで軍服デザイナーに憧れているチャーミングな人物、それを軽やかに演じている。

ワイティティの采配も俳優人も、素敵なテキストの上で自由に舞っている印象でした。それを彩る名曲たち。ビートルズにトムウェイツにデヴィッドボウイ、、普通なら敬遠する名曲を(時代も無視して)ストレートにポップソングをぶつけてくる、監督のセンスに唖然としました。

ここまで心をあっちにこっちに揺さぶられたのも久々、、、

素晴らしすぎる本作。重たいテーマを、真っ直ぐに捉えてつつもユーモアで包みこみ、捻り上げた本作。是非劇場で観ていただきたい!

リルケの詩

「すべてを経験せよ 美も恐怖も生き続けよ 絶望が最後ではない」

これで閉めさせていただこうと思います。

それでは、今回もおこがましくも、紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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映画『ジョジョ・ラビット』■監督・脚本:タイカ・ワイティティ(『マイティ・ソー バトルロイヤル』)■出演:ローマン・グリフィン・デイビス、タイカ・ワイティティ、スカーレット・ヨハンソン、トーマシン・マッケンジー、サム・ロックウェル、レベル・ウィルソン他■全米公開:10月18日 ■原題:JOJO RABBIT ■配給:20世紀フォックス映画■コピーライト:(C)2019 Twentieth Century Fox&TSG Entertainment■公式Twitter:https://twitter.com/foxsearchlightj■公式Facebook:https://www.facebook.com/FoxSearchlightJP/■公式Instagram:https://www.instagram.com/foxsearchlight_jp/■公式HP:http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/