(C)創通・サンライズ

日本のアニメーション映画にはTVアニメーション・シリーズの総集編というスタイルを採ったものが少なからず存在します。

そもそも今に至る空前の国産アニメーション・ブームを築きあげるきっかけになったのが、1974年から75年にかけて放送された同名TVシリーズ(全26話)を総集編映画としてまとめて1977年に発表するや空前の大ヒットを記録した『宇宙戦艦ヤマト』に他なりません。

最近では2011年のTVアニメーション・シリーズ『魔法少女まどか☆マギカ』(全12話)を2012年に再編集した『劇場版魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語』『同[後編]永遠の物語』の総集編2部作映画として発表され、大ヒットしたのが記憶に新しいところ。その後完全オリジナルとなる続編映画『同[新編]叛逆の物語』(13)も製作されています。またこれらは世界10か国以上でも公開され、好評を博すとともに『[新編]』はアカデミー賞長編アニメーション映画部門の日本代表として出品されました(ノミネートはされず)。

また2017年に放送されたTVアニメ『メイドインアビス』(全13話)も『劇場版総集編メイドインアビス【前編】旅立ちの夜明け』(19)『同【後編】放浪する黄昏』(19)として劇場公開。そして現在、その続きを長編オリジナル映画として描いた『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』が大ヒット上映中で、さらにその後を描くTVシリーズの製作も予定されています。

さて、こうした日本におけるTVアニメーションの総集編映画の構築に多大な貢献を果たしたのが富野由悠季監督であることに異を挟む方は少ないのではないでしょうか。

1979年から80年にかけて放映されたTVアニメーション・シリーズ『機動戦士ガンダム』(全43話/俗に“ファースト・ガンダム”とも呼ばれています)の監督であり、それを基に自ら劇場用映画『機動戦士ガンダム』(81)『同Ⅱ 哀・戦士編』(81)『同Ⅲ めぐりあい宇宙(そら)編』(82)の3部作を発表し、これが空前の大ヒットになったことで、今に至るガンダム・ブームが世代を超えて受け継がれてきています。

そして現在、富野監督が久々にガンダム・ワールドに復帰したことでも話題を集めたTVアニメーション・シリーズ『ガンダム Gのレコンギスタ』(14〜15/全26話)が、全5部作の劇場用映画『Gのレコンギスタ』として現在鋭意制作中……

《キネマニア共和国〜レインボー通りの映画街440》

2月21日からその第2作『Gのレコンギスタ Ⅱ』「ベルリ撃進」が2週間限定で劇場上映&配信されます。これぞ既にTVシリーズを見ていた方も必見の、見事なまでの“映画”に成り得ているのでした!(もっとも全く知識のない方は、2019年に公開&配信された劇場版第1部『Gのレコンギスタ 行け!コア・ファイター』を見ておいたほうが得策でしょう)

宇宙世紀から1000年後の未来を舞台にした新たな若者たちの戦い

まずTVアニメーション・シリーズ『ガンダム Gのレコンギスタ』はファースト・ガンダムの世界観で宇宙戦争の歴史となり、最終的には人類滅亡寸前にまで追いやられた“宇宙世紀”からおよそ1000年後の未来“リギルト・センチュリー(R.C.)”を舞台に繰り広げられていく作品です。

R.C.1014年、宇宙世紀の惨禍を反省し、人類は技術進歩に自ら制限をかけながら徐々に繁栄していました。

その中で前世紀の遺物でもある軌道エレベータ“キャピタル・タワー”は、宇宙から供給される唯一のエネルギー“フォトン・バッテリー”を地球に搬入する経路として維持されるとともにいつしか神聖視され、タワー周辺の地“キャピタル・テリトリィ”は宇宙からの恵みを感謝しつつ技術の発展などを禁じる世界的宗教“スコード教”の聖地にもなって久しいものがあります。

一方、かつては北米とも呼ばれた大陸の国家アメリアと欧州地域国家ゴンドワンの間で大陸間戦争が始まり、それとともにアメリア側はスコード教が禁じる宇宙世紀時代の技術を蘇らせようとし、その一環としてキャピタル・タワーを我が物にしようと画策。

これに対し、キャピタル・テリトリィは自衛組織“キャピタル・ガード”を結成し、さらにはそこから対外対抗組織“キャピタル・アーミィ”が派生していきます。

そして本作の主人公は、キャピタル・ガードの養成学校に通う候補生ベルリ・ゼナム(声/石井マーク)。

敬虔なスコード教徒でキャピタル・タワーの運行長官ウィルミット・ゼナム(声/田中敦子)を母にする彼は、突如宇宙から降下してきたモビルスーツ“G-セルフ”と、中に乗っていた記憶喪失の少女ラライヤ・マンディ(声/福井裕佳梨)をめぐってアメリア軍の秘密独立部隊“海賊部隊”とキャピタルの諍いに巻き込まれたことを機に、やがて衝撃の真実を知らされていくのでした……。

TVシリーズ6〜11話を基に怒涛の展開を示す第2作

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5部作劇場版第1作『Gのレコンギスタ 飛べ!コア・ファイター』はTVシリーズの第1〜5話を基に再構築されています。

G-セルフは海賊部隊に捕獲され、ラライヤはキャタピタル側に保護されましたが、やがてキャピタルはG-セルフ奪還にも成功。その中に乗っていた“姫”ことアイーダ(声/嶋村侑)が捕虜になります。

G-セルフは誰にでも操縦できるわけではなく、ラライヤとアイーダしか認証しないと思われていましたが、何とベルリも認証することが発覚。

まもなくして海賊部隊はアイーダ救出に乗り出しますが、失敗。その際に恋人カーヒルをベルリに殺されてしまったアイーダは忸怩たる想いを抱きつつ、やがてG-セルフを奪還してベルリやラライヤ、ノレド(声/寿美菜子)を伴って部隊へ帰還するのでした……。

そして第2部『GのレコンギスタⅡ ベルリ撃進』ではTVシリーズ第6〜11話を基に再構築されています。

人質のラライヤとノレドを守るため、またカーヒルを殺した負い目もあって、海賊部隊に協力することになったベルリのさらなる試練。

そんなベルリらを救出するという口実で、スコード教の禁忌を破ってどんどん武装化していくキャピタル・アーミィ。

下層階級として差別される“クンタラ”出身でキャピタル・アーミィの“マスク”ことルイン・リー(声/佐藤拓也)の戦果への焦り。

実はアメリア軍最高責任者グシオン・スルガン(声/木下浩之)の娘だったアイーダの心境の微妙な変化。

様々な思惑が絡み合いながらドラマは序盤戦から怒涛のような展開を示し、飽きさせるところは微塵もありません。

TVの総集編の域に留まらない“映画”としての秀逸な構成

実はこの劇場版5部作、それぞれが1時間40分=100分前後の上映時間で構成される予定で、現に本作まではそのフォーマットがなされています。

一方、元のTVシリーズは全26話で、タイトル部分などを外した各話の本編はおよそ20分前後。

つまり20分×26話÷5=104分

単純計算すると、1本100分の劇場版にTVシリーズ5話分が少しのカットで入りきる仕様ではあります(もちろん実際は、もっと複雑かつ繊細な編集をもって劇場版は構築されています)。

とかく総集編映画の宿命で、TVシリーズのファンから「あのシーンがない」「あのシーンがカットされている」といった不満の声が聞こえがちですが、この5部作の場合、その心配はさほどありません。

しかし、ならば改めて映画にする必要はないのでは? という一部の声に対しても、はっきり「NO!」と答えられるのが、この5部作の秀逸なところです。

通常のTVシリーズの各話はそれぞれ起承転結、もしくは序破急の構成がなされているもので、これをそのまま単純に繋ぎ合わせてしまうと、1本の映画の中に起承転結が幾度も繰り返されるという、意外に見づらいものになってしまうのです。(それは『宇宙戦艦ヤマト2199』『同2202』の劇場イベント上映版などを見ても明らかでしょう)。

逆にTVシリーズを大幅にカットして映画独自の起承転結を成した作品のほうが(TVファンの不満はともかくとして)映画としてはむしろ見やすかったりもして、その伝でいうと富野監督の劇場版ガンダム・シリーズこそはまさにその筆頭であると断言できます。

たとえば『機動戦士ガンダム』劇場版3部作はそれぞれ2時間15分前後の尺が採られていました。

その続編『機動戦士Zガンダム』(85〜86/全50話)の劇場版3部作(05〜06)の尺はそれぞれ100分弱。

『∀ガンダム』(99〜00/全50話)の劇場版は各128分の2部作(共に02)仕様でしたが、いずれも映画ならではの構成の醍醐味を堪能できます。

そして今回の『Gのレコンギスタ』も1、2作を見る限りにおいては絶妙の編集で1本の“映画”としての大きな起承転結(もしくは序破急)の妙を堪能できる構成になっているのに驚きを隠せません。

これはやはり若き日に「コンテ1000本斬り」を自称しながらさまざまなTVアニメの絵コンテに携わってきた富野監督ならではの秀逸な映画的構成力の賜物ともいえるでしょう。

今回も完成披露試写会の席で富野監督は「“映画”を作りました」と公言。

つまりはTVシリーズを繋ぎ合わせた安易なものではない、“映画”ならではの醍醐味に満ちた5部作が構築され得ているのです。

一方、作画や音響などもTVシリーズの段階で秀逸な仕上がりではありましたが、劇場版制作に際してさらにブラッシュアップされているので、既にTVシリーズを見ている方々も改めて本作ならではの魅力に引き付けられることでしょう。

本来は「2週間限定上映」などとけち臭いことを言わず、堂々と大掛かりな規模の形態でもよいのではないかと訴えたいほどのクオリティの高さです。

劇場での鑑賞が可能な環境にある方はぜひ映画館で、惜しくもその環境にない方もぜひ配信でご覧になってみてください!

(文:増當竜也)