現在、自粛生活を強いられている独り暮らしの人の中には、いつしか主食がインスタントラーメンと化している人も多いのではないでしょうか?(……って、それは私のことですけど)

ふと思うに、日本人は老若男女問わずラーメンが大好きなのでしょう。専門店は常に行列ができ、格安チェーン店では餃子と炒飯をセットにし、インスタントも今ではさまさまなバリエーションの品が次から次へと並び、一生飽きることはないといっても過言ではないほど!?。

そうした状況の日本だからこそ、ラーメンを題材にした映画やドラマも、かなり多く作られています……

《キネマニア共和国〜レインボー通りの映画街461》

今回はそんな映像の中のラーメンに、想いを馳せていきたいと思います!

ラーメンをメインに据えた映画やドラマ

まずはラーメン映画の代名詞といえば、やはりこれ。

流行らないラーメン屋を営む未亡人タンポポ(宮本信子)に魅せられたタンクローリーの運転手(山崎努)が、味から何まで徹底指導して店を再建させるという伊丹十三監督のラーメン・ウェスタン映画『タンポポ』(86)です。

劇中はラーメンのみならず、さまざまな料理のうんちくも多数登場するグルメ映画としても楽しめます。

実は海外でも公開されてヒットした『タンポポ』ですが、それを見てラーメンの魅力に取りつかれた監督ロバート・アラン・アッカーマンが、何とブリタニー・マーフィ主演で東京を舞台に作り上げたラーメン映画が『ラーメンガール』(08)です。

これは恋人を追いかけて来日するもふられてしまったヒロインがラーメンの魅力に取りつかれ、ラーメン修業を始めるお話。師匠に扮するのは西田敏行。『タンポポ』の山崎努も『タンポポ』へのオマージュとして登場します。

人生に絶望していたふたりの女子高校生(中村ゆりか&葵わかな)が、祖父(石橋蓮司/彼も『ラーメンガール』に出演)が閉めようとしていたラーメン屋の名物の味を再現させようと奮闘するのが『ラーメン食いてぇ!』(18)。

若手女優コンビとベテラン名優のタッグが嬉しい映画ですが、そこになぜかウイグル自治区の大草原のドラマまで絡まってくる!?

実家のラーメン屋を継いだ若者(斎藤工)が、今は亡きシンガポール人の母が遺した日記をきっかけに、母方の親族との交流などを経てラーメンとシンガポールのソウルフード“バクテー(骨肉茶)”をミックスさせたラーメンテーを完成させるのが、日本=シンガポール=フランス合作の『家族のレシピ』(17)。シンガポール料理の美味しそうな風情も魅力的ながら、戦争の傷痕にも直視した姿勢に好感の持てる作品です。

ラーメンが印象的に映えるエピソードの作品

ドラマの一エピソードとして、ラーメンが印象的に用いられている作品も数多く存在します。

最近では怪獣映画の傑作『シン・ゴジラ』(16)の劇中、首相臨時代理に指名されてしまった元農水相・里見佑介(平泉成)が、目の前にあるラーメンが延びてしまったことを嘆くくだりが挙げられるでしょう。

総理の器ではないものの里見さんが人情味ある好人物としての面を露にしてくれる名シーンで、かなり印象的だったこともあってか、何と後に「里見総理のラーメンどんぶり」なる商品まで売られることになりました!

ローマ帝国から現代日本にタイムスリップしてしまう浴場設計技師ルシウス(阿部寛)の不思議な冒険譚を描くコメディ・シリーズ第2弾『テルマエ・ロマエⅡ』(14)では、タイムスリップした温泉街にて初めてラーメンを食べて、あまりの美味さに感激してしまうルシウスに店主(懐かしや白木実!)が餃子をサービスしてくれるユニークなシーンがあります。(確かにラーメンと餃子はセットだ! ちなみにルシウスは餃子を1個懐に入れて、ローマに持ち帰ろうともするのでした)

北野武監督のバイオレンス映画『アウトレイジ』(10)では、一転しておっかないエピソードが登場。麻薬の密売人であった中華料理屋の主人(マキタスポーツ)が、厨房で大友組の水野(椎名桔平)から菜箸を耳に突っ込まれ、相棒の安倍(森永健司)によって中華包丁で指を切り落とされ、おまけにその指が入ったタンメンが客に出されてしまう! 北野武=ビートたけしならではの残虐さとブラックユーモアを両立させた演出でした。

沖田修一監督の出世作『南極料理人』(09)では、南極観測基地内でインスタントラーメンが切れてしまって落ち込む隊員のために、主人公の“南極料理人”西村くん(堺雅人)があり合わせの材料で麺とスープを作り、お手製ラーメンを完成させてみんなに喜ばれるシーンも好もしいものがありました。

アニメーション映画では、新海誠監督の『君の名は。』(16)に出てくる高山ラーメンも印象的。

また宮崎駿監督『崖の上のポニョ』(08)でのインスタントラーメンの描写は、さすが食を美味しそうに描いたら右に出る者なし!のスタジオジブリの賜物でしたね。

個人的に一番印象に残っている映画の中のラーメン・エピソードは、山田洋次監督の『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』(77)です。

ここでは刑務所から出所したばかりの主人公(高倉健)が食堂に入ってまずビールを、続けてカツ丼とラーメンを注文します。シャバに出たばかりの喜びや戸惑いなどを食事で表現した名シーンで、高倉健は数日絶食してこのシーンの撮影に臨んだとのことです。

刑務所ということでは、所内の囚人らが今まで一番美味しかった料理の話をしながら正月のおせち料理争奪戦を繰り広げる土山しげる原作、前田哲監督『極道めし』(11)の中で、新入りのチンピラ主人公(永岡佑)が話すのは、恋人(木村文乃)が最後に作ってくれた丼の底に千切りキャベツを入れ、仕上げに焦がしネギ油を上から豪快にかけるインスタント塩ラーメンでした(一度やってみたいものです)。

人気グルメ・ドラマに出てくるラーメン・エピソード

『極道めし』は後にドラマ化もされていますが(18)、グルメドラマ・ブームの火付け役ともいえる、できるものなら何でも注文したものをマスター(小林薫)が作ってくれる深夜営業の食堂を舞台にした阿倍夜郎原作の『深夜食堂』シリーズ(09〜)では、ラーメンを頼むと通常インスタントラーメンが出てくるのに、タンメンだけは生麺で作ってくれます。そのタンメンの麺抜きを注文するタクシー運転手(片岡礼子)のエピソード(第31話)も秀逸でした。

久住昌之&谷口ジローの漫画を原作に、実際のお店も紹介してくれるドラマ『孤独のグルメ』(12〜)では商談仕事とグルメ趣味を兼ねてるかのような輸入雑貨貿易商・五郎(松重豊)が、第1シーズン第3話で汁なし担々麺、第12話でソーキそば、第4シーズン第5話で参鶏湯ラーメン、第6シーズン第11話で冷やし担々麺などなど、ひと味違った麺類を食するエピソードが多数登場。原作者自身がその店を訪れるお楽しみコーナーもあります。

同じく久住昌之原作のドラマ『野武士のグルメ』(17)では、気弱ながらも野武士の誇り高き姿に想いを馳せる定年退職者の主人公(竹中直人)が、客のいない中華料理屋で醤油ラーメンを注文したものの……という、誰でも一度は“あるある”なエピソード(第2話)を面白おかしく披露してくれます(厚化粧の主人役・大島蓉子と竹中直人のキミョーな絡みも笑えます)。

ドラマ(15〜)にもアニメ(18)にもなった鳴見なる原作の『ラーメン大好き小泉さん』は無口でミステリアス、そして驚異的なまでのラーメン・マニアである女子高生・小泉さん(ドラマ版は初代・早見あかり、二代目が桜田ひより/アニメ版の声優は竹達彩奈)がありとあらゆるラーメンを渡り歩いていく作品で、ドラマ版アニメ版の双方で実在の店舗などが紹介されるので、情報的にも大いに役立ちます。

小津映画の中のラーメン

さて、小津安二郎監督作品といえば“和”のイメージが強いのですが、実は意外なことに小津映画の中に日本そばやうどんが出てきたことはありません。

逆にラーメンはよく登場します。

古くは『一人息子』(36)から『お茶漬の味』(52)、『早春』(56)『東京暮色』(57)『彼岸花』(58)『秋日和』(60)、そして遺作となった『秋刀魚の味』(62)と、さまざまなシチュエーションでラーメンをネタにしながら登場人物が他愛なくもほのぼのとした会話を繰り広げていくのです。(また小津監督がひいきにしていた実在の店で撮影されることも多かったようです)

実際の小津監督はそばなども好物だったようですが、自作にそういった和の要素を盛り込むことはなく、むしろラーメンやトンカツといった庶民的な料理(ケーキなどもよく出てきます)を意図的にアイテムとしながら日本の情緒を醸し出す術に長けていたのでした。

ちなみに監督個人は昔ながらの中華そばと、神奈川独自のサンマーメンも好んでいたとのことです。

……と、ここまで書き進めてきて、もうおなかが空いて辛抱我慢ならなくなってきたので、私はインスタントラーメンで空腹をしのぎたいと思います。

最近は大ヒットした韓国映画『パラサイト』(19)のジャージャーラーメン(チャパグリ)のレシピもネットにアップされていたりもするので、そういうのにチャレンジしてみるのもいいかもしれませんね。

(文:増當竜也)