第14回:『恋は命がけ』

普段はAmazonプライム・ビデオで配信中のオススメ韓国映画を取り上げているこの連載ですが、今回は少し趣向を変えて、Huluで配信中の2013年日本公開の韓国映画『恋は命がけ』をご紹介したいと思います。

現在Netflixで配信中の人気韓国ドラマ『愛の不時着』のソン・イェジンが、悪霊の呪いに悩まされながら恋する女性を演じるラブコメなのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどんなものなのでしょうか?

ストーリー

ストリートで活動するマジシャンのジョグ(イ・ミンギ)は、観客の中に不気味な雰囲気の女性ヨリ(ソン・イェジン)を見つける。ヨリの姿にヒントを得た「ホラー・イリュージョン」に彼女を幽霊役で起用し、大成功を収めるジョグ。だが、一緒に仕事をするようになって1年が経つというのに、ヨリはジョグや仲間たちに心を開こうとしない。常に他人を遠ざけて孤独なヨリと、何とか親しくしようとするジョグだったが、ひょんなことからヨリが抱えてきた秘密を知る。果たして、二人の恋の行方は?

ソン・イェジンのコメディ演技が最高!

実力があるのに人気が出ないストリートマジシャンのジョグは、ある日観客の中に黒ずくめの服装に無表情という、まるで幽霊のような女性ヨリを見つけ、思わず彼女の後を追います。ヨリの暗いイメージから、ホラー要素を取り入れたマジックを思いついたジョグは、早速その場で彼女をアシスタントに勧誘!

こうしてジョグの「ホラー・イリュージョン」は大人気となり、お礼に彼はヨリを何度も飲み会に誘うのですが、何故かヨリは毎回さまざまな理由を付けては拒否することに。

実は高校生の時に事故で死にかけて以来、死者の霊を引き寄せるという能力が身についてしまったヨリ。

更に、事故をきっかけにヨリに憑りついた悪霊が家族や友人を恐怖に陥れるため、彼女の家族もヨリを残してノルウェーに移住してしまったことが判明するなど、ヨリが執拗に人付き合いを避けて孤独に生きてきた理由が、次第に明らかになっていくのです。

ヨリの秘密を共有したことでジョグとの距離も縮まり、二人は互いに好意を抱くようになるのですが、ヨリが好意を持った男性も悪霊に命を狙われるため、遂に襲って来る悪霊との対決へと向かう展開は必見!

次第に凶暴性を増してジョグを襲う悪霊と、過去の悲しいトラウマに対峙するヨリとの対決への期待を高めてくれます。

加えて、友達も作れず家族にも会えず彼氏もいない、無理にでも幸せだと言い張らないと死にそうになるほどの孤独に耐えるヨリが、自分だって本当は幸せになりたいという想いを、電話で相談することしか出来ない女友達に打ち明け、友達が危険を知りながら彼女に会いに来る展開には、女性同士の友情が見事に描かれているのです。

ヨリとジョグ、二人の命がけの恋の行方は、果たしてどうなってしまうのか?

人に言えない秘密と孤独を抱えながら、実は大酒飲みで酒癖が悪く、恋愛に奥手なヨリを魅力的に演じるソン・イェジンが、何と”溺れるカエルの声”のモノマネまで披露する、この『恋は命がけ』。

ヨリを狙う悪霊の意外な目的や、二人の恋の危機を救う意外な人物など、鑑賞後に温かな気持ちが残る作品なので、『愛の不時着』ロスを感じている方に全力でオススメします!

最後に

死者の霊が見えることで孤独な人生を歩んできた女性ヨリと、ストリートマジシャンのジョグとの恋愛を描くラブコメ映画でありながら、そこにホラー要素がしっかり入ってくる本作。

『リング』や『呪怨』に登場するキャラクターのような幽霊や、過去のホラー映画からの引用やオマージュなど、予想外に本格的なホラー描写で観客を怖がらせてくれるのですが、特に印象的なのは、『呪怨』の某キャラクターを連想させる男の子の霊のエピソードでしょう。あまりに悲しい事実を彼がヨリに伝えようとするシーンは、ヨリの置かれた状況にかすかな救いを感じさせてくれて、実に上手いのです。

もちろん、ラブコメ映画としても大いに笑わせてくれるのですが、個性的なヨリの女友達による恋愛アドバイスや、泥酔したヨリのおかげで度々シャツを破かれて上半身裸になってしまうジョグの姿は必見!

中でも、焼酎30本を空けて泥酔した上にジョグに絡んだり、前夜の醜態を思い出して自己嫌悪に陥る姿など、ソン・イェジンのコメディ演技が楽しめる点は、本作の大きな魅力と言えるでしょう。

実際、本編中にも「ホラー映画のヒロインが恋をしたら怖くない」とのセリフが登場するように、本来は真逆なロマンチックなラブコメと正統ホラー映画を見事に融合させた、この『恋は命がけ』。

深い悲しみと孤独に耐えて明るく振舞うヒロインを見事に演じる、ソン・イェジンの魅力が満載の作品なので、『愛の不時着』で彼女を初めて知った方や、『私の頭の中の消しゴム』のイメージが強い方は、ぜひ一度ご鑑賞頂ければと思います。

(文:滝口アキラ)