興収50億円以上が6本。2017年上半期のヒット作。

■「役に立たない映画の話」

「君の名は。」興収250.3億円は別格!?

爺 今年上半期のヒット作の数値が色々と判明したので、これについて皆で語ってみようと思う。

女の後輩 また数字をネタにして、あーだこーだと言い合うわけですね(笑)。

先輩 今年の上半期はけっこう調子が良かったんじゃないですか? どこもヒット作が多かったようだけど。

後輩 昨年上半期に興収50億円以上をあげたのが「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」116.3億円、「ズートピア」76.3億円、「名探偵コナン/純黒の悪夢」63.3億円、「妖怪ウォッチ/エンマ大王と5つの物語だニャン!」55.3億円の4作品でした。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

(C)2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

先輩 ところが今年はその50億円以上が6作品あるというんだよ。

爺 それは凄い。大躍進じゃないか、映画業界。

後輩 いや、それはどうなんでしょう? トップは「君の名は。」なんでしょ?

君の名は。 DVD スタンダード・エディション

DVD スタンダード・エディション (C)2016「君の名は。」製作委員会

先輩 その通り。興収250.3億円。これは歴代4位の成績で、日本映画だけだったら「千と千尋の神隠し」の308億円に次ぐ歴代2位の大ヒットだ。

女の後輩 ただ正直、この映画が今年上半期の作品かといえば・・・。

後輩 そうじゃないですよねえ。昨年の8月から、延々ロングランしていますから。上映中であることを考えれば、確かに今年の作品としてカウントすべきでしょうが。

先輩 昨年の夏休み映画であり、正月番組でもあるという・・(笑)。

爺 これはもう、別格だわな。スペシャルな地位。

女の後輩 では、今年上半期の別格作品として「君の名は。」。興収250.3億円ということで。

「美女と野獣」、歴代18位の大ヒットだが・・。

美女と野獣 場面写真1

(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

先輩 続いて見ていくと、4月に公開されたディズニーの「美女と野獣」。これが現時点で123.4億円をあげる大ヒットになっている。「君の名は。」を除けば、この作品が今年上半期のナンバーワン・ヒット作ということになります。

後輩 最終的にはいくら行きそうですか?

先輩 123.7億円ぐらいじゃないかな。ちなみにこの額は歴代ヒット作第18位というポジションだ。

女の後輩 大ヒットしましたが、何かそう大騒ぎした印象もないんですよね。

後輩 なんというか、映画のヒットの仕方というのも、昨今ではストーリーが必要になってきていますよね。例えば「この世界の片隅に」みたいに、最初は63スクリーンでスタートしたのが、徐々に上映館が増えて、話題が盛り上がっていったような。そういうプロセスを見聞きすることで、初めて「ああ、ヒットしてるんだなあ」と実感出来たりします。

この世界の片隅に メイン

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

先輩 「この世界の片隅に」の場合はそういうプロセスを経て、現状では興収26億円だというけど、「美女と野獣」はその4倍以上の大ヒットになっているわけだ。ただ、確かにこの映画の場合、同じディズニー・アニメの「アナと雪の女王」のような社会現象が起きたかといえば、そうではない。逆に見れば、そういうことがなくてもここまでの興収を上げられたということにならないか?

爺 そういうことだな。「美女と野獣」を見たいか見たくないかと言えば、アニメ版や昔のジャン・マレー主演のフランス映画を知ってたりする人は、やはり興味を持つと思うんだよ。

女の後輩 ジャン・マレー主演のフランス映画なんて・・公開時に見ている人は、もはやご隠居と同じくらいの年齢ですよ。

爺 まあそれはともかく、見たいか見たくないかと言えば、ほとんどの人が見たい、興味を示す。それが即ち原作ものやリメイク、リブートやシリーズもののネームバリューだと思うんじゃよ。

先輩 それはそうですね。それと「見たい」という気持ちと、実際に映画館へ行く行動のハードルが低い。今や全国にシネコンがありますから。配給会社としても拡大公開を行って、全国的に見やすい環境を作っているってこともあるけれど。

女の後輩 しかも映画の評判も悪くないわけですから、クチコミも効いたでしょうし・・。

爺 現在のシネコンは、全席指定席で立ち見を出さないから、場内が以前のように賑やかにならないんだな。立ち見を出さないからこそ、それを見越して大ヒットを狙う作品は大規模な拡大公開を行っている。「美女と野獣」のオープニング・スクリーン数は?

先輩 773スクリーンです。

爺 そうなると、毎回満席ということにはならないかもしれないな。昔は「お立ち見の余地もないほどの大ヒットです!!」と言ってたんだが。

女の後輩 未だに「場内お立ち見の出る大ヒットです!!」ってプレスリリース書いて送ってくる配給会社があるけどね。立ち見で2時間、映画を見てみなよ。どんだけ疲れるか。

後輩 かつては映画会社が必死になって作品をヒットさせようとしていた、そういう様子が目に見えましたが、最近では日本映画の製作委員会方式のように、周辺の企業と手を組んで、複数の企業が作品を盛り立てる工夫をしている。いわば熱量が分散しているんですね。だから「そんなに大ヒットしたのか?」ということになってくるのだと思います。

先輩 それは今回取り上げる、今年上半期の大ヒット作6本に共通していることなんだよな。大ヒットの実感が今ひとつ希薄という。

爺 だから唯一、映画会社が中心になって情報発信すべく頑張っていたのが「君の名は。」というわけだ。これはシリーズでもないし、オリジナルなわけだし。

先輩 まさに某社のトップが言うように「周知を集める」わけですね。今や外国映画の配給でさえ、それが起こっている。

後輩 外部の企業とタイアップするとかは、以前からよくあったじゃないですか。

女の後輩 そういうレベルじゃなくて、いわばキャラクターを共有してビジネスを展開しようという手段よ。ディズニー・アニメなんかの場合は、既にメディア別にパートナー企業が決まっているでしょうから。

新記録更新の「名探偵コナン から紅の恋歌」

爺 その次に興収が上がった「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」の場合は、「ハリー・ポッター」シリーズの流れをくむ作品で、ハリポタ・シリーズの最終作「ハリー・ポッターと死の秘宝PART2」が2011年7月公開で興収96.7億円をあげているから、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」の興収73.4億円は、成功の部類じゃないかな。

ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(字幕版)

女の後輩 あ、まだハリポタが終わって6年しか経ってないんだ。

後輩 だから観客もハリポタ・シリーズのファンが中心でしょうね。

先輩 同じくシリーズものでは「名探偵コナン から紅の恋歌」が興収68.7億円をあげており、これはシリーズ最高記録になった昨年の「純黒の悪夢」の63.3億円を上回り、さらに記録を更新した。凄いシリーズになったもんだなあ。

名探偵コナン から紅の恋歌 メイン

(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

爺 昨年の「名探偵コナン」は、劇場版20周年記念とあり、派手に盛り上げたが、今年は百人一首をモチーフに、しっとりと落ち着いたイメージを前面に押し出して来たんだな。

先輩 もともとこのシリーズの主要客層は20代の女性ですから、女性層を狙った展開が功を奏したとみるべきでしょう。

女の後輩 オープニング時点での女性客比率が全体の64パーセント。年齢層も20代が41.5パーセントで最多ですから、まさに狙った層の観客が来ているわけですね。

先輩 この作品の場合、シリーズとして昇り調子なのは、やはり毎作品きちんきちんとクォリティの高い作品を作っているからだろう。理想的なシリーズ展開だね。

「モアナと伝説の海」VS「SING/シング」は、ディズニーの勝ち!!

SING/シング ポスター

(C)Universal Studios.

後輩 それにしても、ファミリー・ターゲットのヒット作が多いですね。

爺 上半期は正月もあるし春休みもゴールデン・ウィークもあるから、例年こうした顔ぶれなんじゃが、今年の場合は外国映画が頑張っている。

先輩 春休みには、ディズニー・アニメ「モアナと伝説の海」と、イルミネーション・エンタテインメントの新作「SING/シング」が同時期に公開されましたが、興収は前者が51.5億円、後者が51億円と、わずかな差でディズニーが勝ちました。

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

女の後輩 ほんと、わずかな差よねえ。でも両方とも興収50億円を超えているんだから凄いわ。

後輩 ここに来て、イルミネーション作品は、日本でもすっかりファミリー番組として定着しましたね。目下上映中の夏休み映画「怪盗グルーのミニオン大脱走」も好調ですし。

先輩 ファミリー番組がひとつ増えたんだよ。少子化で子供の数は減っているのに。

爺 しかし、こうして上半期作品のヒット作を見ると、大ヒットすべき作品は当然のようにしたという感じだな。事前に「これは当たるだろう」と予想出来る作品ばかりで、想定外の大ヒット作がない。

「ファミリー映画しか大ヒットしないんですか?」

女の後輩 「ドラえもん」は、今年どうだったんですか?

(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2017

先輩 興収44.3億円。前年対比3.1億円のアップだ。

後輩 極端な話、今ファミリー映画しか大ヒットしないんでしょうか?

爺 ううむ・・・それはわしも感じるところだが、それとシリーズものな。

先輩 それは観客の側にも原因があると思います。未知の作品に面白さを期待して、というよりも内容の予想がつくシリーズ作品や、ディズニー、イルミネーションといったブランドのほうを信じる。観客の保守化といえば、そうかも知れません。

女の後輩 だいたい今、年間1000本以上の映画が公開されているわけでしょ。何を見たら良いのか迷っちゃうわよ。そうしたら実績や知名度のある作品を選ぶのは、当然よ。

爺 「スター・ウォーズ」のスピンオフはいくら上がったんだい?

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ポスター

(C)2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

先輩 「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」は、46.25億円。「ドラえもん」より上です。ただし「フォースの覚醒」が116.3億円と興収100億円を超えていますから、シリーズというとらえ方をすると、いささか物足りないですね。

後輩 ルークもハン・ソロも出てこない「スター・ウォーズ」でここまで行ったら御の字ではないかと。

先輩 とにかく、下半期でこのヒット作のタイトルが、どう変わっていくか。それは楽しみだね。

爺 まったくだ。昨年の「君の名は。」「シン・ゴジラ」のようなサプライズ・ヒットが起きることを期待しているよ。

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(文:斉藤守彦)

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