この記事は『ひるまず進め!アルプスの山中を駆けあがっていく38台のクラシック・ポルシェ』の続きです。

日曜のプログラムはアルプスの周辺をなすヴェルコール山地に集中していた。私たちはポルシェの神、ユルゲン・バルトとローランド・クースマウル組をレシャラソン峠で取材するために、列に並んでいた。彼らが乗っているのは、924ターボをベースに製作した924カレラGTSのレプリカだが、1979年に20位、1980年に19位でフィニッシュしたクルマそのものの姿だ。
 
スチュワードは、私たちの"ジウジアーロがデザインした芸術的な"ヴレデスタイン製ウィンタータイヤを一瞥すると、首を横に振った。スタッドがないとダメだ、このステージはそれほど凍っていると。私たちは山の中を歩いていくことは許された。後講釈ながら、ここは競技者の目からすると全ラリーの中でもっともチャレンジングなSSに違いない。
 
驚いたことに、雪と氷に覆われた路面状況では、パワーがものをいった。アルピーヌA310と、ドイツ人女性2人のフォードRS2000が、ヴェルコール最初のSSのトップに躍り出た。雪はたっぷり積もっていたものの、スタッドが雪を掻いてその塊を道路から引き剥がしたのだ。トンネルでは数メートルほど上に、大きな氷柱が危なっかしくぶら下がっていて、雲の中を恐る恐る走るのは、まるで飛行機の中にいるようだった。


 
進むラリーを追跡取材するには、途中のSSを飛ばすことも必要だ。にもかかわらず、私たちは後れをとっていた。SS一ヶ所につき1時間ほどかけていたし、ルート上で有利なポイントへ次々、移動した。そのため全車を見ることは難しく、一度も見られなかったクルマもかなりの台数にのぼる。それでも、誰がどのあたりにいるかは、ある程度は予想可能であり、そこにかなりの幸運が加われば、名物SS内の名コーナーで、様々なクルマの一団が通過するのを見られるのだ。
 
ゴディサール峠からカリ峠に下る道中、サン・タンドレ・レ・ザルプで、とあるコーナーの脇では犬ぞりのチームがいて、彼らの犬を放しているのを見た。ペルティ峠では私たちが立ち止まったのは、無数のヘアピンを眼下に見下ろすような場所で、ラリーカーが走っていくその頭上を、ゆっくりと20頭ほどの鷲が飛んでいる姿をも楽しめた。そういえばフォード・ファルコンもいた。この狭い田舎道には大き過ぎる一台ながら、ディーニュ・レ・バンのSSでは見事に1位。しかし悲しいことにリタイアしてしまった。
 
私たちは高速道路を全開で踏みながら飛ばし、サン・ナゼール・ル・デゼールに戻った。暫定の総合1位だったジャンマリア・アゲムのランチア・フルヴィアを撮るのにいいタイミングだったからだ。彼は一時的に少し順位を落とし、ポルシェの数台もそうだったが、リザルトに大きな影響を与えるものは実質的にもう何もなかった。


アルプスを越えてエズへ・・・次回へ続く