この記事は『埃まみれだったポルシェ930のレストアをスタート!』の続きです。

後付けのアフターマーケットパーツは、もちろん美点観点から許されなかった。信頼性と実用性を重んじるナインマイスターは、新たにフューズボードと配線類を製作、同時にオリジナルのエバポレーターマウントとスイッチ類を生かして効率の良い電動エアコンディショナーを共同開発したらしい。シートはオリジナルだが、新しいヘッドライナーやカーペットとマッチするようにレザーは張り替えられた。オーディオシステムが取り付けられていたインテリアパーツも交換された。そのうちのいくつかのパーツは白紙から作られたという。

「以前のオーナーはダッシュボードの一部を切り取って、そこにCB無線をはめ込んでいたんだ。ただし左ハンドル仕様のダッシュボードの部品は手に入りにくい。皆、後期型のクルマを初期型仕様に改造したがるからだ。ちょうど私たちは右ハンドルの79年モデルを使って935仕様を製作していたんだが、そのクルマ用に下部セクション全体をスチールで作っていた。その作業を左右対称に置き換えることができた。その右ハンドル車からはグローブボックスの蓋とCDIボックス、いくつか燃料系のパーツも流用することができた」
 
いっぽうでは、ドライブトレーンを組み直すためのパーツの選別が着々と進んでいた。コリンの友人のひとりがたまたまスペアのクランクとコンロッドをストックしていたが、オリジナルパーツの多くは失われていた。実は930ターボのエンジンをスタンダードスペックにリビルドする人はあまりいない。耐久性を向上させるパーツがあり、値段もそれほど変わらないからだ。とりわけ、パワーアップのためのインタークーラーが備わった78年以降のモデルでは一般的である。



このようなレストアでは常識的手法だが、ピストンとシリンダーは新品に交換された。強化パーツはポルシェ純正品と比べて格段に値が張るというわけでもない。マーレのピストンとニカシルコートのシリンダー、964のカムシャフトとポート式インテークを使ったエンジンの排気量は3.4リッターに拡大し、そこにK27ターボが装着された。これで無理なく964ターボと同等のパワーを生み出すことができる。オリジナルの4段ギアボックスとリミテッドスリップデフはそのまま使用することになった。

「これらは常識的な選択だ」とコリンは説明した。「K27ターボよりもっと新しく、もっと優れたターボチャージャーを使うこともできるが、年代を考えた場合も930ターボには最適な組み合わせだ。最新のウェイストゲートとより精密な制御を活かして、私たちは0.7バールに代えて0.95バールの過給圧を設定している。このクルマは380から400bhpを一日中でも発揮できる」

「この種のクルマの場合、インタークーラーのサイズによってパワーが制限されてしまう。3.3ℓターボに400bhp以上を求めるのは無理がある。私の意見では、930ターボは400bhpがちょうどいいレベルだ。サーキットで走らせたいなら、もっと大型のインタークーラーをつければいい。しかし、400bhpに留めておけば、毎日問題なく思い切り走らせられるはずだ」
 


それ以外は、ボルトやナットに至るまでオリジナルに忠実にレストアされた。過去30年間の大半の時間をタイプ930の製作に費やして来たコリンは、新しいビルシュタインダンパーを選択してわずかに硬いサスペンションセッティングを施したが、スタビライザーやトーションバー、3.3リッター用ブレーキ(1978年に改良された)などはすべてスタンダードのままである。フロントが7インチ、リアは9インチ幅の16インチ径フックス製ホイールに履いたミシュランタイヤを最後に装着して、正統派の、ただし若干の新解釈を取り入れた930ターボが完成した。


 
エグゾーストから炎を吐き出すような刺激的な70年代のモータースポーツのDNAは、見事にレストアされた930ターボにしっかりと受け継がれている。サーキット生まれの偉大なマシンとのダイレクトな関係は説明不要である。これはいささかも角を矯めていないモンスターなのである。