■適材適所で最適な材料を使用するマルチマテリアル化が軽量化の本命

●低燃費の手段、日本はエンジン技術で、欧州は軽量化で推進

クルマに求められているのは、安全性を確保した上で燃費や排ガス、車両性能を向上させることです。これらの課題を解決するさまざまな手段や技術の中で、すべてにおいて有効なのが車両の軽量化です。

クルマを構成する各種の材料と軽量化技術について、解説していきます。

●軽量化の流れ

厳しい燃費規制が燃費競争に拍車をかけ、メーカーは積極的に電動化や車両の軽量化を推進しています。クルマを構成する部材は、これまでの鉄主体から樹脂やアルミの使用が拡大し、マグネシウムやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)が実用化に入ったという段階です。

現在の軽量化は、主流の鉄から他の代替材料に替わるという流れでなく、適材適所で異種材料を組み合わせる、使い分けるという「マルチマテリアル化」の方向に進んでいます。

また、軽量化そのものを目的とせず、用途に応じて特殊鋼や貴金属、ガラス、ゴム、セラミックスといったさまざまな素材も使われています。

軽量化材料の現状
軽量化材料の現状

●採用が進む高張力鋼板(ハイテン)

クルマ用部材の主役は鋼板であり、ボディパネルやボディ骨格、シャシーなどほとんどの部位に使われています。

最近は特に、衝突安全性能と燃費性能が高いレベルで要求されるようになり、軽量と高強度の両立が求められるようになりました。この要求を満足させるひとつの解が、軽量かつ衝突エネルギー能力が高い高張力鋼板(ハイテン)の採用です。

比較的大きな応力がかかる部位で使われ、980MPaや1180MPa、1470MPaの超高張力鋼板の採用例も増えています。コストは一般的な鋼板よりも高くなりますが、アルミよりは安く、補修やリサイクルが容易という特徴があります。

ハイテンの採用イメージ
ハイテンの採用イメージ

●アルミの採用拡大

アルミは「軽金属」を代表する金属で、自動車の軽量化を牽引する材料としてプラスチックとともに様々な部位へ採用されています。

軽量化に加えて、強度や加工性、耐食性、熱伝導、リサイクル性などの優れた特性を持つため、エンジンやパワートレイン部品、ボディ部品のアルミへの材料置換が進んでいます。

最近はボディパネルだけでなく、ホンダは主にNSXに、海外ではアウディ、メルセデスベンツなどが、モノコックボディの骨格部にハイテン材を採用した新型モデルを送り出しています。

●プラスチック

プラスチック材料は安価・軽量で成形しやすいため、強度を必要としない内装部品から採用が始まりました。その後、強度や耐熱性などに改良を加えたプラスチックが開発され、バンパーやエンジン部品、ルーフなど、その用途は急速に広がっています。

鉄の比重に対して、アルミが約1/3、プラスチックは1/8〜1/10程度です。また、熱によって容易に変形するので、複雑な形状でも成形できます。その他にも、電気や熱の絶縁性が高い、防錆性と防食性に優れ、塗装加工やメッキ処理が可能などのメリットがあります。

課題であった樹脂の耐熱性や耐衝撃性が徐々に改良され、最近は軽自動車のボディパネルにも樹脂が採用されています。

●マグネシウム

マグネシウムは比重1.8(鉄7.8、アルミ2.7)で実用金属中もっとも軽く、大きな軽量効果が期待できます。日本では、燃えやすい特性などの理由から敬遠されていますが、欧米ではアルミ同様、将来有望な軽量化材料と位置付けられています。

●CFRP(炭素繊維強化プラスチック)

クルマにとって理想的な軽量化材料は、軽くて強いCFRP(炭素繊維強化プラスチック)です。

CFRPは、軽くて強い、硬くて寸法精度が高いなどの特長を生かして、クルマへの採用が始まりました。CFRPの比重は約1.8で鋼(比重7.8)の約1/4、強度(引張強度/比重)は鋼の約10倍です。

一方、課題はコストと生産性です。CFRPのコストは、2017年時点で1500〜7000円/kgで、鋼の約10倍です。

課題は徐々に解消されつつあり、最近はボディ構造にCFRPを使ったクルマも出現しています。

CFRPの効果
CFRPの効果

低燃費化の手段として日本はエンジン技術に、欧州は軽量化に注力しています。言い換えると、日本の軽量化技術は欧州に後れを取っていると言えます。

本章では、クルマで使われる部材と軽量化について、材料ごとに紹介します。

(Mr.ソラン)