新型コロナウイルスは、あっという間に世界中に流行した。人と人の接触で感染するこの感染症の流行は、現代の世界で、いかに人の交流が活発になっているか気づかせるものでもある。

私たちの暮らしは、他の国・地域とのビジネスをはじめ、さまざまな人のつながりなしには成り立たない。今もインターネットなどを通じて私たちは世界とつながり、力を合わせて困難な時期を乗り越えようと模索している。

今こそ語りたい、タピオカドリンクが流行ったワケ


ところで1年前、世の中の注目を集めた流行は、おいしくてインスタ映えして、町で手軽に持ち歩けるタピオカドリンクだった。原宿や中目黒など、タピオカドリンクのスタンドが立ち並ぶ町では、ドリンクを手にした若い女性であふれた。ビジネスマンや、ミドルな夫婦たちも、店に行列していた。

私も去年、数店ほどで買ってみたが、店によって味わいが違うことが面白かった。中には、タピオカに芯が残っている残念なものもあったし、粒の大きさも店によって違っていた。このバラエティの豊かさが、「タピ巡り」とハシゴする若者を増やしたのだろう。

それにしても、緑茶や中国茶にミルクや砂糖を入れるドリンクを、抵抗なく飲む日本人がこんなに多いのは驚きと言える。欧米でそういう習慣があると聞くと、嫌がる人は今もたくさんいるからだ。ブームの折、甘い烏龍茶や緑茶への抵抗感を聞かなかったのは、そこにタピオカが入っていて、ふつうのお茶とは別物と思った人が多かったからだろう。

抵抗が少なかったもう一つの理由は、1996年に日本上陸を果たしたスターバックスがすっかり浸透し、コーヒーにいろいろなものを加えてデザート感覚で飲む習慣を身に着けた人が多くなっていたことが考えられる。デザートドリンクを知っていたことが、スイーツ感覚のタピオカドリンクを受け入れる素地になっていたと考えられる。

流行の理由は、インスタ映えするから、くにゅくにゅしたタピオカの食感が日本人の好みだからなどと分析されている。

私はそれに加えて、お茶がおいしい、というグルメな点が流行が幅広い世代に広がった理由だと去年書いたことがある。

タピオカドリンクは日本だけの流行ではなく、アメリカが先行していた。中国や韓国でも流行した。このドリンクを好きなのは、日本人だけではないのである。

日本に根づくかも?ティースタンド文化


「サードウェーブ」と呼ばれる、ブルーボトルコーヒーなどの世界的なコーヒーブームがあったことから分かるように、タピオカドリンクの前にはコーヒーが世界中で流行した。

その次に流行る、流行っていると言われたのがお茶だ。どちらも代表的なし好品ドリンクだ。しかし、もともとお茶が飲まれていた国では、コーヒーの流行で、お茶文化に陰りが見えていた。

日本もその例外ではない。そもそもペットボトルのお茶が広まっていて、茶葉は売れなくなっている。ペットボトルのお茶は便利で飲みやすいが、上手に淹れた急須のお茶の味にはかなわない。しかし、上手に淹れることが難しい。面倒だ、と思う人も多いだろう。

そこへ登場したのが、タピオカドリンクを売るティースタンドだ。お茶を上手に淹れる技術が、高い店が多い。タピオカの流行が廃れても、お茶で勝負できる、と見越すTHE ALLEYなどのブランドもある。実際、同ブランドのリピーターたちは、タピオカ抜きでお茶を注文していると、去年取材したときに聞いた。

コーヒーがよりおいしくなってブームになったように、お茶が手軽なスタンドでおいしく飲めることで、再発見する人は多いのではないだろうか。

お茶好きの私にとっては、気軽にお茶を飲める環境が整い、流行るのはとてもうれしい。疲れたとき、イライラしたときも、お茶を飲めば落ち着く。もっと流行ってくれれば個人的にはうれしい。

それから、タピオカドリンク流行の最大の要因は、台湾から日本へ進出するブランドが増え、次々と出店したこと。店がたくさんあるから買う人が増えたのだ。最近は、豆花の店なども台湾から上陸している。人口が少ない国の企業は、海外に市場を求める。人口減少が進む日本の飲食業界も、アジアに多く進出している。

やっぱり私たちは、お互いを必要としているのだ。

阿古真理(あこ・まり)


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©坂田栄一郎

1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』、最新著書『母と娘はなぜ対立するのか』(筑摩書房)など。