日向坂46・小坂菜緒、17歳。1stシングル「キュン」からすべてのシングル表題曲のセンターを務める彼女だが、小中学生の頃は学校が苦手で、引っ込み思案な少女だった。そんな小坂が大勢のファンの前、輝く笑顔を見せられるようになるまでにはどんな葛藤があったのか。グループ初のドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』(公開日調整中)に先駆け、ひも解いてみたい。

■引っ込み思案な少女

 昨年11月、小坂が主演を務めた映画『恐怖人形』で本人にインタビューを行った時に感じたのは、落ち着いた様子で淡々と語りつつも、瞳の奥に宿るグループの“顔”を背負う覚悟だった。

 2017年8月。日向坂46の前進であるけやき坂46の二期生としてデビューした彼女は、今や、グループの象徴と評価される機会も少なくない。

 2019年2月のグループ改名以降、シングルデビューを飾った1stシングル「キュン」から4thシングル「ソンナコトナイヨ」まで、4作連続でセンターに抜てきされグループのパフォーマンスをけん引。一方、個人でも雑誌「Seventeen」(集英社)や映画出演など、活躍の幅を広げている。

 しかし、彼女たちの歩みをたどった書籍『日向坂46ストーリー』(集英社)によれば、加入前の彼女は必ずしも目立つ子ではなかった。

 小学校時代。引っ込み思案な性格だった小坂は、友達になじもうとわざと明るく振る舞っていた自分に対して「これはホントの私じゃない」(※1)と葛藤していた。

 中学校へ入ってからも、一歩外へ出れば周りの目を気にする毎日。インタビューでも、「同級生からも『しゃべりかけるなオーラすごいよ』と言われるほどでした」と明かしてくれたが、そんな彼女が、「自分を変えられるんじゃないか」(※2)と一縷(いちる)の望みを託したのが、けやき坂46のオーディションへの参加だった。

 そして、グループ加入から約5ヵ月後。2018年1月に彼女にとっての大きな転機が訪れた。

■センターへの思い「孤独感」から「覚悟」へ

 曲ごとのポジションでメンバーの命運が左右されるのは、坂道シリーズの伝統。けやき坂46もけっして例外ではなく、二期生初のオリジナル曲「半分の記憶」(欅坂46の6thシングル「ガラスを割れ!」収録)で、センターに選ばれたのが小坂だった。

 ただ、当時の彼女は「私がセンターで納得してる子なんて、ひとりもいないんだろうな」(※3)と悩んでいた。自身の評価と周囲の期待に挟まれた少女は、誰もが憧れるはずのポジションに立ちながらも「周りのメンバーが自分のことをどう思っているのか」(※4)と、込み上げてくる重圧や選ばれた者だけに押し寄せる孤独感と常に戦い続けていた。

 しかし、活動を重ねるにつれて彼女は、メンバーたちが「背中を支えてくれてたんだ」(※5)と気が付いた。きっかけとなったのは、2018年12月11日から13日にかけて日本武道館で行われたけやき坂46の単独ライブ「ひらがなくりすます2018」であった。

 リハーサル中、自身がセンターを務める曲『JOYFUL LOVE』の初披露にプレッシャーを感じていた小坂。そんな彼女に対して、先輩の一期生や同期のメンバーたちは次々と「大丈夫だよ」(※6)と声をかけてくれた。

 自分一人ではない。改名して以降も、メンバーの温かさを受けながらセンターに立ち続ける彼女は、自身のポジションについて「楽しさよりも、怖さや不安の方が正直大きい」と本音をにじませる。

 ただ、今はもう怯えるばかりではなくなった。センターに対して「逃げ出したくても逃げられない」と覚悟を決めた彼女は、たくさんの観客を前に堂々としたパフォーマンスを見せてくれている。

 4月には坂道研修生から高橋未来虹、森本茉莉、山口陽世が加入し、グループにも変化が訪れた今。センターとして、小坂がどのような強さを見せてくれるのか。12月6、7日に予定されているグループ初の東京ドーム公演に向けて、期待も高まる。(文:カネコシュウヘイ)


※1、2『日向坂46ストーリー』P208 ※3『同』P239 ※4『同』P315 ※5、6『同』P316 ※高橋未来虹の「高」は「はしご高」が正式表記