長年、紅白を愛してきたからこそ、物申したい!


「第70回NHK紅白歌合戦」の紅組司会・綾瀬はるか、総合司会・内村光良、白組司会・櫻井翔。

 1月ももうすぐ終わり。紅白を語るには少々時が経ち過ぎているが、思い出とは発酵食品のようなもの。脳内で熟した感想をグイグイ語りたくなるのが人の常である。

 ということで、令和初の紅白歌合戦。新時代の初の紅白だ、寿げ寿げと、カニを購入し張り切って見た。

 が、なぜか私が張り切っている年ほど、盛り上がらない紅白。人生って永遠に片思いの連続である……。

 長年紅白歌合戦を心から愛してきたからこそ言おう。ついに年末のリアル視聴枠「年忘れにっぽんの歌」に切り替える時期が来たかもしれない。


紅白初出場の日向坂46。初々しさを具現化したらこうなる、というくらいに可愛らしい。

 2018年のような祭り感は無く、代わりに襲い来る戸惑い。特に今ドエライ問題作を見ているのではないかと思わされたAI美空ひばり!

 私の意見は丸ごと中村メイコさんと同じである。紅白でまさか手塚治虫SFばりのディストピア感を味わおうとは。


“Matt加工”でブレイクした桑田真澄の次男・Matt。天童よしみの新曲「大阪恋時雨」をピアノで伴奏した。

 いやいや、ちょっと落ち着けマイハート。2018年の米津玄師に引き続き、今回も素晴らしい発見がたくさんあったではないか。

 ちょっと不思議な加工の人としか思っていなかったMattの気品。嵐の歌のうまさ。そして予習なしで視聴したKing GnuとOfficial髭男dismのスタイリッシュ・ボイス!

 これらは、2019年紅白を見なければ、気づかないまま人生終わっていたかもしれない。そりゃとんでもない話だ!

 ということで、今回も文藝春秋取材班によるリハーサル写真が充実しているので、それをメインに愛でつつ、ほんの一部ながら見どころを振り返ろう。込み入った感想はそれからでも遅くはない。さあ、時を戻そう!

コラボづくしの前半戦は 演歌陣の包容力を尊敬

■Foorin「パプリカ〜紅白スペシャルバージョン〜」

 幼いメンバーが大物出演陣にガンガン絡んでいく姿に感心。私があの年頃のときは、洟を垂らし母のスカートで拭いていた……。

 後ろできらびやかな衣装をまとった椎名林檎がものすごく真剣にパプリカダンスをしているのが萌えポイント。

■郷ひろみ「2億4千万の瞳―エキゾチック“GO! GO!”ジャパン―」


ヒロミGOの華もすごいが、この距離感でも「似てる……」と感心する錦織圭選手のそっくりさん(写真左、赤いシャツを着た方)も素晴らしい存在感を放っている。

 NHKホールの廊下を走り、スポーツ選手そっくりさんを引き連れ「ヒアウィゴー!」「ワンモアターイム!」「ジャペアオオオン!」とひたすら叫ぶ郷ひろみ以上に元気な64歳を私は知らない。彼の体力気力はシニアの希望。

■島津亜矢「糸」

 人気ピアニスト、清塚信也とのコラボ。島津亜矢の歌唱に合わせ、「ううん」「おおぅ」と陶酔の表情で奏でる清塚氏の全身芸術家なピアノに圧倒。引き終わった後の手の挙げ方までマーベラス。

■おしりたんてい「ププッとフムッとかいけつダンス」

 チビッ子は本当におしりとかうんことか好きだ。しかしこの歌を誰より笑顔で生き生きと踊っていたのは郷ひろみ。彼は本当にシニアの希望。

■天童よしみ「大阪恋時雨」

 Mattがピアノで応援。2018年武田真治に続き異業種格闘的になるのかと思ったが、いやいや心洗われる名コラボ! 2人のアイコンタクト、一緒に口ずさむシーンは微笑ましく、音楽を愛する者同士の素晴らしいパフォーマンスであった。

 子ども時代、天童と「のど自慢大会」で優勝を競うライバルだった上沼恵美子がアップで抜かれ、その北島マヤ&姫川亜弓感に萌えた。

■山内惠介「唇スカーレット」


圧巻のお面軍団全員を愛おしく感じ「ああ私は山内惠介様の顔が本当にタイプなのだ」と確信した。

 山内惠介のお面をつけたアクロバット軍団が大量に湧いて出る! 巨大な惠介人形が目からレーザービームを出す! それに動じず天才バイオリニスト、木嶋真優が狂気のメロディを奏でる! 気配り王子山内惠介の振り切った自己主張レボリューションに大感動。

■三浦大知「Blizzard」


三浦大知は映画『ドラゴンボール超 ブロリー』の主題歌「Blizzard」を披露。

 引力に抗える男として有名。この人が本気を出せばアッサリ数時間レベルの空中浮遊を成功させそうな気すらしている。エネルギーが爆発するような超絶歌唱とパフォーマンスを見て私は確信した。彼は地球人ではないと!

■坂本冬美「祝い酒〜祝! 令和バージョン〜」


坂本冬美は菩薩顔というか、天女顔というか、ものすごく尊い顔だと思う。

 最初の和太鼓で「いよーっ!」と掛け声をかけたイケメンに突然フォーリンラブ。調べたところKing & Princeの岸優太様というお方であった。

 紅白はこういったラブアクシデントがあるから気が抜けない。言わずもがな冬美様の歌唱はパーフェクト!


King & Prince。岸優太は左から2番目の彼だ。

山陰出身の“ヒゲダン”を 同郷の母が応援宣言

■King Gnu「白日」

 ずっと「白目(しろめ)」だと勘違いしており、どんなコミカルな歌なのだろうと思っていたがとんでもなかった。素晴らしくスタイリッシュ! 2018年の「Lemon」と同じく、紅白以降エンドレスリピート状態だ。

 ボーカルの井口 理はスウェットで登場しオイオイ買い物帰りかいと思ったが、MVの衣装と同じ服装で挑んだと知り、勉強不足な自分に恥じ入った。

■五木ひろし「VIVA・LA・VIDA!〜生きてるっていいね〜」

 ゴキゲンな人生讃歌……なのだが、アップテンポな曲ゆえに、チコちゃんと岡村隆史、そして筋肉サックスの武田真治がいささかはしゃぎすぎる場面もあった。笑顔でそれを受け止める五木ひろしの器の大きさよ……。

 NHKは五木ひろしと天童よしみの包容力に対して、ギャラとは別の形で謝礼を出してもよいのではと思う。

■Official髭男dism「Pretender」


全員20代ながら4人中3人が既婚者の“ヒゲダン”。真面目なキャラクターも応援したくなるポイント。

 バンド名から、メンバー全員髭モジャで男臭いゴリゴリのロックを歌うと決めつけていた。

 ところがどっこいとても素直そうな青年が、最高にスウィートな声で「君はキレイだ」と言ってくれるもんだから好きにならないわけがない! 原田真二を思い起こさせるロマンチックボイスに夢中。

 メンバーに島根県の出身の方がいらっしゃるということで、島根生まれの母が突然応援宣言をした。「故郷が同じ」は瞬時に絆を生む。

マジックにけん玉にAIに 大騒ぎな後半戦

■水森かおり「高遠 さくら路〜イリュージョンスペシャル〜」


常にチャレンジを忘れない水森かおり。ピンクのドレスに隠れた脚は、練習に次ぐ練習で青タンだらけのはずである。泣ける……。

 2018年に引き続き、メイガスとコラボ。歌いながら人の胴体をぶった切るというイリュージョンに挑戦したかおり嬢。

 最後のピンクの衣装への早替えも見事に決まったが、誰か彼女に伝えてよ。もうビックリサプライズ無しで歌っても誰も責めないと! でないとこのままメイガスの弟子になりそうで心配。

■三山ひろし「望郷山河〜第3回けん玉世界記録への道〜」


三山ひろし。首から下げているけん玉がアクセサリーのようでかわいい。

 2018年より一人多い125人で挑戦。けん玉ギネスのプレッシャーを背負いながら、往年の三波春夫を思わせる笑顔と感情をこめた歌唱を貫く姿は感動。

 結果は失敗だが、いやもう気にしなくていい。ギネス達成か失敗か聞かれても、すぐ答えず目が泳ぎまくるギネス公式認定員の方に同情。ものすごく言いにくかったのだろう。

■YOSHIKI feat. KISS<YOSHIKISS>「Rock And Roll All Nite‐YOSHIKISS version.‐」

 YOSHIKIの「11歳の頃彼らの音楽に救われた」というエピソードを聞き、KISSって皆さんおいくつなのだろうかと素朴な疑問が浮かんだ。調べてみたらギターを壊していたポール・スタンレーさんは68歳。ジーン・シモンズさんに至っては70歳。素晴らしい。

■関ジャニ∞「関ジャニ∞前向きにきばってこーぜ! OSAKAメドレー」


写真左、ピカチュウの耳に押され気味な横山裕が愛しい。

 5人になっても弾けた笑顔と歌唱の関ジャニ∞。なにわ男子の応援、そして増えていくピカチュウ! 踊りが揃うピカチュウがかわいくて悶絶!

 50になって初めてファンクラブなるものに入り、それが関ジャニ∞だったという友人の気持ちもわからなくもない。いやもう、元気が出る歌声である。

■ビートたけし「浅草キッド」

 ブルーのライトに照らされた孤独な背中が美しい……! 時には音が走ってしまうのもいい。

 私はたけしさんのファンではないが、こういうのを聞かされると、嗚呼、やっぱり紅白は良い歌番組だと思うのである。「苦しかったけど楽しかった」そんな下積み時代をドッと思い出すカスレ声にむせび泣き。

■菅田将暉「まちがいさがし」


菅田将暉のパーフェクトな美しさよ……。画面に向かって「ありがとう、ありがとう!」と繰り返してしまった。

 ファッショニスタの菅田君らしく奇抜な衣装を期待したが、よくよく考えたら、このメランコリーな曲調的にド派手なもん着てたら逆に浮いていただろう。

 白組に合わせてか、染めた銀髪が美しい。演出側もそう思ったのだろう、歌唱中、カメラアングルはほぼほぼ菅田君のドアップだった。グッジョブ……。

■竹内まりや「いのちの歌」

 おキレイ。私がCDなどで知っている竹内まりやの歌声より50倍くらい湿度が高かった。

■嵐「カイト」


嵐は新曲「カイト」と、「A・RA・SHI」と「Turning Up」のメドレーを披露。

 嵐ってこんなに歌がうまいのかと今さら仰天しまくった。

 そんな私に対し姉と母が「私たちは天皇陛下の即位を祝う国民祭典の『Ray of Water』を聞いて気づいてましたー」とドヤ顔を向けてきたが、それとて、ものすごく最近の話ではないか。家族全員気づくのが遅い。

■氷川きよし「紅白限界突破スペシャルメドレー」


「今、誰がアーティストとして最高にノッてる?」と聞かれたら、9割がこの人の名を挙げるのではなかろうか。デビュー20周年を迎えた氷川きよし。

 とても楽しみにしていた「大丈夫」が「大丈夫! 大丈夫!」だけってオイオイと思ったが、仕方がない。キー様が今回尺を取って歌いたいのは「限界突破×サバイバー」のほうなのだろう。龍がガックンガックン揺れるのも気にしないほどヘドバンする姿に後光が。

解放の女神MISIA、そして“紅白”歌合戦が終わる日

 いろいろ見どころはあったが、なんといっても2019年紅白の主役はMISIA。「IN TO THE LIGHT」のハイトーンボイスでは、寝ていた家族数人が一斉に飛び起きた。

 レインボーの旗をかざし、ドラァグクイーンたちが華麗に踊るステージはもはや映画のワンシーン!

「歌で世界を解放する女神」といった風情のMISIAを中心とした大迫力のパフォーマンスに口が開いたまま。「AI美空ひばり」でどよどよしていた心がドッカーンと希望的に上がった。

 突然異世界の楽園に飛ばされ、そこを仕切る王様に特別な接待を受けている錯覚に陥ったほどである。

 そして、もう「紅白」歌合戦という括りをやめるべき時期に来たのかもしれない。MISIAが掲げるレインボーカラーを見てそう思った。

 以前から「そろそろ『紅 vs 白』じゃなくて、『若手 vs ベテラン』にしたほうがいい」という説を唱えている人が何人もいたが、来たのか、その時期が!

 さらに今回メドレーが多かったことで、逆に歌への飢餓感が増した。メドレーは確かにオイシイ部分だけいくつも聞けてお得感はあるのだが、やっぱりステキな歌は一曲丸々世界観に浸りたい。もっと歌を! フルコーラスを頂戴!! 出場歌手も、もはや正規とフライング組と特別枠とミックスベジタブル状態である。

 ジャニーズJr.は、本当に初出場のとき感動が薄れやしないか。

 もう気持ちが追いつかないわ。さらば紅白。また逢う日まで、逢える時まで……。

 とかいいながら、今年の年末も、新聞の曲順一覧を見てウキウキしてるかもしれない。毎年そうだ。紅白は、別れるといいながら長年ズルズル続いている彼氏的な!?

 嗚呼、私は2020年末、どの番組を見るためにカニを買うのか……。


田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

文=田中 稲
撮影=文藝春秋