相手が前向きすぎると、人間、疲弊する。映画も同じ、前向きすぎる人がヒロインだと、ぐったり弱る


『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』(2018年)より。

「後ろ向きになりがちな人は、前向きに生きましょう!」幼稚園児でもわかるこの理屈。

 しかしこれほど難しく、リアリティのない提案はないかもしれない。なぜなら、ポジティブになること自体が、簡単なようでひどく難しく、時に前向き提案が逆に人を弱らせてしまったりする。

 とりわけ映画におけるそれは、逆効果のケースが多々。なぜなら前向きすぎる人が前向き提案をする仕組みだからなのである。

 元気が出る映画として真っ先に挙げられるのが、『ブリジット・ジョーンズの日記』に『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』。

 どちらも名作。理屈抜きに面白い。でもネガティブな人間が本気でポジティブになろうとする手段として観ると、これらはむしろ逆効果になりかねない。


『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001年)より。

 両作品の主人公は二人ともぽっちゃり系、自分に満足はしていない。でも幸せ願望は人一倍。そこまでなら多くの女性にとって共感性が極めて高い存在。みなその程度のネガ要素は持っている。

 でもヒロインたちはそこから脱皮するパワーがとてつもないからこそ、ポジティブになれる物語となる訳で、そういう元気すぎる人の言動を濃厚に見せられると、人間却って落ち込む。

 現実の社会でも、ポジティブシンキングの権化みたいな人に、前向きになる方法を散々伝授された挙句に「私が元気を分けてあげる」なんて言われると、逆に魂を吸い取られてぐったりする。ポジティブすぎる人と対峙すると人間は疲弊するのだ。

 ましてや二人とも、ぽっちゃりそれ自体が充分にかわいい。今のままで充分に愛されている。幸せになるのが目に見えている。むしろ羨ましいような存在。

 いや、面白いことなど何も起こらない日常の中に埋もれそうになっていて、自信を持つきっかけなども見つからぬ人間にとったら、彼らはいっそ妬ましい。

 どうしたらああいう風に生きられるんだろうと、溜息つく人がポジティブになどなれっこないのだ。

 いや逆に、別のきっかけで気持ちが前向きになれ、事がうまく運びそうになった時に観ると、ちょうどよく共鳴し、さらに元気になれる、それだけは間違いない。心が丈夫になってる時に観るべき映画、なのである。

 ただ“ダイエットに失敗した時”だけは異様に元気が出るので、ぜひご利用を。


『キューティ・ブロンド』(2001年)より。

 同様のポジティブすぎるヒロインながら、ぽっちゃり系ではなく全身ピンクの服を着たブロンド女ゆえにインテリたちから馬鹿にされるも、“反骨精神?”でピンクの服を着たまま猛勉強の末に弁護士になる『キューティ・ブロンド』。

 これは自分に自信がない、自分を好きでない人が観ると、意味不明。“自分大好きな人”讃歌なので使い方を注意してほしい。

 かくして、「元気が出る映画」として有名な映画ほど、じつは取り扱い注意。もちろん娯楽としては最高だが、心が痛んでいる時は慎重を期してほしいのである。


◆『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』(2018年)

容姿にコンプレックスがあり、仕事も恋も積極的になれないぽっちゃり女子の主人公が、自信を得たことで輝きを増していく。

Photo:Voltage Pictures/Allstar Picture Library/Zeta Image



◆『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001年)

恋と仕事に奮闘する、出版社勤務の32歳独身女性ブリジット・ジョーンズの日常を描いたロマンティック・コメディ。

Photo:Miramax Films/Photofest/Zeta Image



◆『キューティ・ブロンド』(2001年)

恋人に捨てられた大学生エルが、持ち前のポジティブさで困難を乗り越えながら弁護士を目指し、奮闘する青春コメディ。

ブルーレイ発売中 1,905円
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2018 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.
All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

後ろ向きな心を救うのはとても意外だけれどナニーもの。そこにある不思議な法則


『私がクマにキレた理由』(2007年)より。

 じゃあ一体何を観ればいいのか? じつはとても意外だけれど、“ナニーもの”。

 ナニーとは、言うまでもなくベビーシッター。6歳頃まで親の代わりに子どもを育てる乳母のこと。子どもの有無を問わず、職業を問わず、立派なナニーを描いた映画は一様に女を元気づけてくれるのだ。でも一体なぜ?

 おそらくは、社会的に注目されない報われない立場にあるナニーが、ピュアな心の子どもたちから慕われ、最初はナニーを見下す母親たちが、最後には尊敬するようになるというストーリーの仕組みが、ネガティブな心が自然とポジティブに転換していく心模様と完全に呼応するから。

 典型的なのが『私がクマにキレた理由』で、スカーレット・ヨハンソン扮するヒロインは有名大学を出たものの就職に失敗、“社会勉強”と称してナニーになるものの、惨めな苦労の連続。

 しかし大きな挫折の中での小さな小さな成功感が、結局は人間の心を上向きにしてくれるのだと教えてくれる。保育はなかなか感動的な仕事なのだ。


『タリーと私の秘密の時間』(2018年)より。

 一方、子育てと家事で限界に達していた母親が完璧なナニーに身も心も救われる『タリーと私の秘密の時間』は、母親の立場で観ると本当に深く重く、色々と救われるが、その母親役のために18キロ太ったシャーリーズ・セロンのぶくぶくのお腹には、劇的に変われる人間の潜在能力を見せられたようで、がぜん勇気が出るから不思議だ。

 そして『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』は、差別とパワハラに苦しむ黒人メイドたちの訴えを世に知らしめようとする白人ライターをエマ・ストーンが演じる作品。

 当時のアメリカで最下層の黒人メイドをリスペクトさえできる鷹揚な心と正義感を育ててくれたのは黒人メイド、それを辛気臭くなく説教臭くなく描いた物語は、前向きになんてなれない今の社会でも力強く生きるヒントを授けてくれる。

 諦めるところは諦め、抵抗するところは抵抗する、……という具合に。


『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』(2011年)より。

 結局のところポジティブになるって、テンション高くはしゃぎ回ることではなく、社会においてどんなにささやかでも、何らかの役割を果たせたという達成感それ自体に宿るものなのではないか。

 だからこそ社会的に恵まれない、でも誇り高い職業、ナニーの達成感に心奪われ、ちょっと勇気づけられ、気がつけば心が上向きになっているのだ。

 ちなみに、『タリーと私の秘密の時間』でナニーが一晩で部屋をピカピカにしたことにより全てが好転していく場面で、多くの人がはっとする。心が切り替わる瞬間を見た気がしたから。

 そう、前向きになるって要はそういうこと、そこまで単純かつ簡単なことなのだと、気づくからなのだ。

 部屋を片付けることは、断捨離の概念を引っ張り出すまでもなく、自分をリセットし、ゼロに戻し、心を仕切り直して暮らしをやり直すこと。そういう瞬間にポジティブさが不意に宿るということ、感覚的に思い出させてくれるのだ。


◆『私がクマにキレた理由』(2007年)

主人公のアニーはひょんなことから高級住宅街に住むセレブ一家のベビーシッターに。上流家庭の実態をリアルに描く。

〈特別編〉DVD発売中 1,419円
発売元:ショウゲート
販売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2014 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.



◆『タリーと私の秘密の時間』(2018年)

3人目の子どもが誕生して心も体も限界に達したヒロインが、ベビーシッターとの交流を通して復活する姿を描く人間ドラマ。

DVD発売中 3,900円
発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:エイベックス・ピクチャーズ
© 2017 TULLY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.



◆『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』(2011)

1960年代の米ミシシッピを舞台に、若い白人女性のスキーターと2人の黒人メイドの友情が旧態依然とした街を変革していく。

Photo:DreamWorks SKG/Allstar Picture Library/Zeta Image

自分の中にある才能も胎動するような、才能開花の名もなきサクセスものを観て何らかひとつやり遂げよう


『タイピスト!』(2012年)より。

 なおさら心を前向きにするのに“から騒ぎ”はいらないこと、片付け的な身近な心の切り替えが全てであることがわかった訳だが、では心が前向きになったところで一体何をするのか?

 じつはそこがとても重要で、何らか目的が欲しい。ポジティブになったところで些細な事でも成し遂げられたら自信の地固めができ、人生が一気に進むから。

 資格を取る、お稽古事を始める、何でもいいが、そういう時に役に立つのが、名もなき女が才能を開花させるスペシャリスト系の映画。

 芸術やスポーツでのサクセスストーリーは、やっぱり遠い夢物語になり、実際に元気が出る効果にまでは至らないパターンだが、これが普通の職種となると、事情がはっきり変わってくる。

 みんなやればできる、自分にだってできるのだという、仕事に対するリアルな前向き感が底からじわじわと増していくのだ。

 例えば『タイピスト!』。今時はもうその職業自体が成立しないが、これは1958年のフランスを舞台にした映画。

 他にあまり取り柄はないが、タイプの早押しには目覚ましい力を発揮したOLが早押し大会に出場、勝ち進んでいく洒落た根性モノというべき作品。

 パソコン早打ちなら私も負けない、という人には“気持ちが好転するきっかけ”になるだろう。


『ジョイ』(2015年)より。

 一方、TVショッピングで自作のモップを売りだす普通の主婦の物語『ジョイ』も、今やネットでオリジナル製品を売って成功できる時代だけに自分の中の可能性にも気づいて興奮するかもしれない。

 またここでも黒人差別のある時代、数学に天才的な能力を持つ黒人女性たちがNASAで活躍するまでを描いた『ドリーム』があり、実力さえあれば誰でも認められ、世に打って出られるという今に通じる話。

 ただし、頑張れば報われる、逆境にあってもきっと誰かが見ていてくれる、そういう至極当たり前の希望につながる作品は、あまりに予定調和すぎて安っぽく感じてしまうが、普通の職種の仕事モノは、そういう展開にするしかないのだとも言われる。


『ドリーム』(2016年)より。

 仕事モノで全く救いのない終わり方をすると、これが不治の病モノや殺人鬼モノよりも深い絶望感や厭世観を残し、社会をいたずらに暗くするからタブーなのだとか。

 従って私たちも、ありがちな展開にもちゃんと勇気づけられることになっている。それこそお約束の前向き映画なのだ。

 仕事で結果が出せずクサった時、また仕事で嫌な奴がいた時の処方薬として、ぜひ。


◆『タイピスト!』(2012年)

タイプの早打ちしか取り柄のないヒロインが世界大会に挑み奮闘する。1950年代フランスのカルチャーとファッションにも注目。

Photo: Momentum Pictures/Allstar Picture Library/Zeta Image



◆『ジョイ』(2015年)

冴えない日々を送るシングルマザーのジョイが、触らずに絞れるモップを発明し……。人生を一変させ、大企業を築く感動ドラマ。

ブルーレイ発売中 1,905円
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.



◆『ドリーム』(2016年)

アメリカ初の有人宇宙飛行計画を陰で支えた、NASAの黒人女性たちの知られざる功績を描く。実話に基づくサクセスストーリー。

ブルーレイ発売中 1,905円
発売・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

現実逃避のち、強烈な孤独、でも大きな希望に向かって心が温まるハッピースタート。傷心の一人旅ものこそ究極


『食べて、祈って、恋をして』(2010年)より。

 そして総合的に私たちを前に向かせるジャンルは、というならズバリ“失意の一人旅もの”。

 なぜかどの作品も、失恋か離婚で何もかも嫌になり、休暇をとって長旅に出かけるというシチュエーション。「よくある話だね」とさしたる期待もしないで観ても、必ず心が晴れ晴れするのは不思議なほど。

 誰でもできる旅によって、現実逃避とともに未来への希望が形になり、幸せになれそうな可能性がバーンと開花して終わる一挙解決パターン。

 最初は強烈な孤独感に襲われるものの、徐々に心が温まり、ハッピーエンドではなくハッピースタートなつくりだからなのだ。

 正直、一人旅で新しい恋が実るというお約束の展開は、安易すぎてちょっと腹立たしくもあるけれど、例外なく幸せな気持ちになれるのは、それがさほど非現実的でもないから。

 私の知人も、離婚して傷ついて一人“船旅”に出たらその船で知り合った人と、とんとん拍子で再婚という展開になった。傷心一人旅は侮れないのだ。

 その最高傑作はやはり『食べて、祈って、恋をして』。イタリア→インド→バリと、少しずつ、でも価値観を根本から変えていく長旅はそれだけで体の中が浄化される。生涯に一度は真似てみたい旅である。

『ホリデイ』はクリスマス休暇にホームエクスチェンジをした2人の女性、どちらも男がらみで失意の旅。うまく行き過ぎだろうと思うが、どちらも新しい恋に出会って超ハッピーエンド×2。

 後味がとてつもなくよく、観るたびに恋がしたくなる。いっそ魔法にかかってみたい、リアルに失意の折に観るべき一本。


『ホリデイ』(2006)より。

 そして本気で気持ちを立て直したいと思っている人は、『トスカーナの休日』を観たい。

 夫に裏切られ、家まで奪われ、仕事もスランプ。親友の勧めでトスカーナへ旅に出て、単なる旅のつもりが、一軒の家に魅せられて新たな人生をそこで始めることになる。

 そっか、そういう選択肢もあるのだ。誰かと出会うより先に新しい土地で人生を始めてしまってもいいのだと。ともかく全てから解放された気持ちになる。心が自由になる。

 それこそがポジティブになるベストな方法であると思い知るはずなのだ。


『トスカーナの休日』(2003年)より。

 旅は体ごと別の場所に移動することで、心をリセットし生き方を変える最も簡潔な手段。こうやって映画で様々な場面を精査するにつけ、旅は人間に特別な力を与えることがわかってくる。

 そもそもが自分から動き出さなきゃ旅にならない。だから繰り返し旅に出ている人に、悩み深き人はいない。

 旅から旅へ落ち着く暇なく動き続けている人に不幸せな人はいない。それは人生の最も単純な法則。

 だから前向き旅の絶対のコツは旅先でも積極的に人生を揺り動かすこと。旅の恥はかき捨てだ。


◆『食べて、祈って、恋をして』(2010年)

ジャーナリストとして活躍するヒロインが離婚と失恋を経て、自らを立て直すために自分探しの旅に出た日々を描く人間ドラマ。

スペシャル・エディション ブルーレイ 2,381円
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2010 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.



◆『ホリデイ』(2006年)

恋に破れた2人の女性同士が、休暇中にお互いの家を交換する“ホームエクスチェンジ”を試み、人生を開花させていく。

Photo:Columbia Pictures/Universal Pictures/Photofest/Zeta Image, by Zade Rosenthal



◆『トスカーナの休日』(2003)

夫の裏切りですべてを失った主人公が、親友のすすめでイタリアのトスカーナ地方へ旅行に行き、その地で新たな人生を模索する。

Photo:Touchstone/Allstar Picture Library/Zeta Image

心のゆとりまでくれるコスメ


ヒアルロン酸を増やす乳酸菌液を20000mg、コラーゲンを5000mg配合。内側からのうるおいケアがかなう美容ドリンク。ヒアルモイスト発酵液 1箱(50mL×10本) 4,000円/日清食品

 さて日々の美容法としてポジティブになれる意外なカギは、ヒアルロン酸など、人間の材料となるものを体の中で生み続けるインナーケア。

 ヒアルモイスト発酵液は、想定を超える様々な効果が話題だが、全身がうるおいで満たされると気持ちまでうるおって、とげとげイライラしなくなるのは不思議なほど。

 ポジティブシンキングはやはりインナーケアが決め手になりそうだ。


UVカット、メイクアップ効果、炎症ケア、保湿……とマルチに活躍する高機能UVバーム。UVカラーバーム SPF50+・PA++++ 全2色 18g 5,600円/ドクター津田コスメラボ

 一方で、あれもこれもと使わにゃならない美容に疲れたうえに、肌が揺らぎがちな人は皮膚科医・津田攝子氏開発の津田コスメが新しく放ったUVカラーバーム。

 UV下地もファンデの代わりもしながら、ニキビ炎症跡やシワまで治っていくという凄いバーム。

 煩わしさもストレスも消える超高機能は、安定した美しさのみならず心のゆとりまでくれるはず。


気分で選べる香りが揃う。左から:アロマティカル ボディ UV SPF30・PA++ 001 120g 1,800円、イグニス イオ ハーバルスキンウォーター RM 100mL 3,000円/イグニス(2020/4/5発売)

 一方、何気ないデイリーケアの香りはとても大きな決め手。

 イグニスの新生ブランド イオはUVケアにもミストにもフレグランス顔負けの完成度の、体に染み渡る心地よくナチュラルな香りがついていて、毎朝毎晩幸せになれる。

 いつの間にか前向きな日常が続いていくはずなのだ。

日清食品


https://www.nissin.com/jp/


ドクター津田コスメラボ


https://www.tsuda-cosme.com/


イグニス


https://www.ignis.jp/

齋藤 薫 (さいとう かおる)

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌で多数の連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など、著書多数。

文=齋藤 薫