“世の中で一番美しいのは詩だよ”という言葉に導かれて


思潮社 2,000円。

今月のオススメ本『美しいからだよ』

 第54回現代詩手帖賞受賞作を含む、全13篇収録の第1詩集。

 〈すべてのものは透明になるというのなら、ダイヤになったあなたを、通りすがりの取るに足らない、知らない誰かにあげてしまいたかった。あなたを誰かにあげたかったあなたを誰かのものにしてあげたかった。〉(「モーニング」)


 第1詩集『美しいからだよ』が先日、詩の世界で最高峰とされる新人賞・中原中也賞受賞の栄誉に輝いた、水沢なお。

 選考委員の高橋源一郎はツイッターで、〈この詩集、歴史的な意味を持つものになるかもしれませんね〉と表明。

 詩の世界に、ニューヒロインが誕生した。

「賞をいただいたことで、自分の書いているものは詩なんだ、と少しホッとしました。

 小学生の頃から小説はずっと書いていたんですが、高校の国語の先生が授業中に“世の中で一番美しいのは詩だよ”とおっしゃっていて。大学生になってから急に、その言葉が気になり出したんです。

 初めて書いた『沼津』という詩は現代詩手帖の投稿欄に掲載していただけたんですが、“これは詩なのかな?”と不安でした。

 2作目はネットで“詩の書き方”と検索して、連があって行があって……みたいな枠にハマった書き方をしたら、落選しました(笑)。詩は自由に書いていいんだな、と思うようになったんです」

 24歳の若き詩人の作品は、会話体を大胆に採用しており、物語性が極めて高い。小説にも似た味わいがある。

「自分でも執着して書いているなと思うのは、何かと何かの関係性です。“私と姉”とか、“心と体”とか。

 これがもし小説であれば、もっと説明を入れたり、文章と文章の意味の繫がりを気にしたりすると思います。

 詩は、そういう作業を入れずに、凝縮されたイメージだけを提示できる。そのぶん、単語レベルで言葉を磨いていく感覚があります」

 小説や漫画、アニメや映画など、古今東西のさまざまなカルチャーから想像力の養分を得ているのは明らかだ。 

 1冊まるごと読み通してみると、「詩の形式で書かれたSF作品ではないか?」という驚きが残る。

「私のようで私ではないもの、人間のようで人間ではない存在に惹きつけられる感覚があります。生き物全般に興味がありますね。

 例えば、クリオネみたいな透明な生き物。不思議な生き物だなぁと思うけど、爪って透明じゃないですか。人間も透明を作り出せるんだ……と考えると、急にドキドキしてきます」

 表題作は、「美しい体よ」「美しいから、だよ」のダブルミーニングだ。

「私はたぶん、頭の中はぎゅうぎゅうだけど、体は空っぽ。登場人物の、他人の体を借りて、体というものの実感を探っているんだと思うんです」

 言葉を用いて、世界の真理を探求しようとあがく詩人の姿は間違いなく、「美しい」。

 彼女の研究成果を、これからも追い続けたい。


水沢なお(みずさわ なお)

1995年、静岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。2019年に第一詩集『美しいからだよ』が発売になり、第25回中原中也賞を受賞。

文=吉田大助