深夜のファミレスでのジュース研究について熱く語ってくれたのは、音楽家・文筆家の菊地成孔さん。

 当時のガールフレンドと結成した「ジュース研究会」とは? 「ジュー研」の研究開発したレシピとともに、ジュースへの偏愛ぶりを大公開します。


ファミレスのドリンクバーで 清涼飲料文化をルネッサンス


音楽家・文筆家の菊地成孔さん。

 15年ほど前、毎日外食という生活をしていました。しかも、夕食は決まって深夜。そうすると行く店が限られてきて、気分転換のつもりでファミレスに行ってみたんです。

 そこで、ドリンクバーの新たな楽しみ方を思い付き、当時のガールフレンドと「ジュース研究会」を結成しました。「落研」のノリで通称は「ジュー研」。


 研究テーマは、「ファミレスのどんなメニューにも合う究極のノンアルコールカクテルの開発」を目標に掲げました。そのためにまず、いろんなファミレスに行き、ドリンクバーを調査。

 種類の豊富さに加えて、「ティーブレンドができる茶葉がある」「クラッシュアイスが細かく扱いやすい」という点が決め手となり、「ジョナサン」と「バーミヤン」を研究の2大拠点にしました。

ジュー研認定 〜初級篇〜
ホワイト&ブラック

炭酸×炭酸のTHE AMERICANな1杯。スプライトとコーラは1:1で、スライスレモンを3〜4枚浮かべるのがポイント。

寝食を忘れて研究に没頭


 ジュー研の活動はほぼ毎日行われました。

 23時頃ファミレスに集合して、最初の1時間で食事を済ませ、あとはひたすらジュースの研究に没頭。

 一杯の傑作を生むまでには駄作の山で、完成まで20日かかったことも。

 そして、どんなにまずいジュースができても残さず飲み干し、試作と改良を重ね、完成したレシピを大学ノートにイラスト入りで残していきました。

 気持ち的には白衣を着て、グラスは試験管のつもりでした(笑)。酒も飲まず、夢中でやってますから頭も冴えたままだし、ディスカッションも白熱して、気付いたら朝だったなんてこともざらでしたね。

 驚くことに、そんな生活が10年近く続いて、研究成果をまとめたノートも6冊ぐらいまでいきました。

 当時はラジオでジュー研のことをよく話していたので、書籍化の話まで出たりもしたんですが、「我々はやり切った」という思いから解散(笑)。

「これ以上続けても、飲料会社の開発室に顧問として雇われる以外、道はない」と、ノートだけ残して活動を終えました。

ジュー研認定 〜中級篇〜
カルピス烏龍緑

カルピスと烏龍茶の黄金比は6:4。これにクラッシュアイスを浮かべて緑茶を垂らすと、翡翠のアクセサリーみたいで美しい。

清涼飲料史に残る傑作の数々


 残念ながら僕の手元にノートは残ってないのですが、殿堂入りしたレシピは覚えています。

 記念すべき1作目は「カルピス烏龍緑」。

 これは、「ノンアルカクテル界のアダムとイブ」と呼ぶにふさわしい傑作でした。ジュー研の集大成とも言える大作が「T3」。

 コーヒー、紅茶、烏龍茶のミックスなんですが、昔、台湾でコーヒーと紅茶を合わせたお茶を飲んでおいしかったので、果敢に第3のお茶を入れてみようという挑戦でした。

 課題は烏龍茶の濃さだったので、茶葉の量をいろいろ変えて一晩に20杯も試作する日が何日も続いて。おそらく店員さんの間で、「チャッパ(茶葉)」って呼ばれてたと思います(笑)。

 ここで紹介したカクテルレシピは、コンビニで買える飲み物で作れるものばかり。好みに合わせてご家庭でも楽しんでもらえたら長年の研究が報われますね。

ジュー研認定 〜上級篇①〜
アンバサメロン緑

アンバサ(カルピスソーダでも可)にクラッシュアイスを浮かべ、メロンソーダを少量垂らして緑茶を注ぐと翡翠色に。


ジュー研認定 〜上級篇②〜
T3(ティースリー)

コーヒー:4、紅茶:4、烏龍茶(濃いめ):2。映画『ターミネーター3』(T3)に影響され、コーヒーもTEAに含んだ問題作。

菊地成孔(きくち なるよし)さん

音楽家・文筆家。1963年生まれ。音楽家としては、作曲からアレンジ、プロデュースをこなすサックス奏者として活躍。文筆家としては、音楽、映画、格闘技、食などに関する批評を執筆。ラジオパーソナリティやDJなどの出演多数。

Text=Chiaki Tanabe(Choki!)
Photographs=Wataru Sato