巨匠・ヒッチコック監督(中編)

 では、船の中で何の話をしたかというと、次作の「サイコ」という題名のサスペンス映画についてだった。ケーリー・グラント主演の「北北西に進路を取れ」が1959年に日本で公開されてヒットしていた。「サイコ」の日本公開は60年9月だったから、横浜港で取材したのは、その年だったのだろう。

 私は当時28歳。ものを書く仕事がしたくて、大学卒業後も電通、日本短波放送(現ラジオ日経)と1年ずつ転職して、社会人3年目でデイリースポーツへ。記者になって5年目あたりだったか…。

 「サイコ」の内容を聞いた。後に、彼の作品群の中では「めまい」(58年)や「鳥」(63年)と並ぶ、代名詞的な傑作として高い評価を得るわけだが、まだ誰も見たことがない。どんな映画かと尋ねると、ヒッチコックから「サイケデリック」という言葉が飛び出した。初耳だった。まるで意味が分からない。通訳はいたが、訳せない。困りましたよ。

 同席した他紙の記者で、後に音楽評論家となる3歳下の伊藤強(70年からフリー、00〜04年に日本レコード大賞審査委員長)と「サイケデリック…。分からないなぁ」と話したことを覚えている。記事に書いても、その言葉を日本では誰も知らないから削られる。見出しにも取ってくれないだろう。「?」のまま、謎の言葉には触れずに原稿を書いた。

 海外の有名人やスターを取材していると、生涯忘れない言葉に出くわすことがある。※(中編)に続く



【1960年代】ヒッチコック

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