巨匠・ヒッチコック監督(後編)

 例えば、ハリウッドの大女優、エリザベス・テーラー。3人目の夫、マイケル・トッドとの新婚旅行で来日した時、羽田空港で取材した。小さな部屋にカメラマンがわんさか来て、倒されそうになりながら発した彼女の言葉が「ノー・プリーズ」だ。「やめてちょうだい」ってことだが、「ノー」だけではなく、「プリーズ」と付け加えたところに品があるなと感激した。

 引退が報じられたアラン・ドロンの思い出もある。ビジネスで自身のブランドの香水か何かを日本に売りに来た時に東京国際映画祭があった。ドロンの記者会見があるというので行ってみたら、記者は10人もいない。ドロンは「ああ、これだけなのか…」と、つぶやいた。その一言が印象に残っている。それは昭和も終わりの頃(88年あたり)だ。

 かつて、ドロンの周囲は女性を中心にいつも大騒ぎだったが、不世出の二枚目スターも“落ち目”と言っては失礼だが、年齢と共に全盛期の輝きは薄れ、彼が漏らした言葉に時の流れを実感した。

 ヒッチコックに話を戻そう。後に、伊藤君が「サイケデリックって分かったよ。きらびやかで…」と意味を教えてくれた。“昭和元禄”と言われた60年代後半、日本で「サイケ」という言葉がはやる少し前の頃だった。その伊藤君も2016年12月に亡くなられた。

 そして、生まれて初めて飲んだ「アメリカン」の味は今も忘れられない。とにかく薄かった。「これがアメリカンだ」−。

 ヒッチコックはそう言ったのだが、当時まだ、日本で「コーヒー」といえばコーヒーしかなかった時代。今では当たり前だが、コーヒーにも“種類”があるのだということを教えてもらった。面白い人で、取っつきにくさはなかった。私は酒を飲まないが、コーヒーは飲む。コーヒーカップの向こう側に、今もあの日のヒッチコックが座っている。(終わり)



【1960年代】ヒッチコック

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