江川を指名した阪神豪腕社長・小津正次郎(後編)

 ただ、この記事から3週間余り後に、冒頭の小津新社長の就任会見が開かれたのだった。実はこの就任会見の1週間前、石川県の山中温泉で小津を取材している。宿泊先を訪ねた。「後任監督がどうのこうのというより、球団フロントがどんなチームを作るのか、が第一になる」。

 そのとき、この言葉の意味が理解できていなかった。取材が終わると、思いがけないことを言われた。「あした、時間があるんだったら、もう一度ここへ来ないか。テレビドラマの舞台になっとる“こおろぎ橋”(TBS系、主演・樋口可南子)へ行くんやけど、タクシーは呼んであるから」

 断る理由はない。こおろぎ橋で夫妻の姿をカメラに収めると、今度は小津家の菩提寺だという福井の永平寺へ向かった。思えばすでに球団社長就任が決まっていた小津は“陰の存在”から表舞台に出る覚悟、決意を込め、ご先祖に報告する旅ではなかったか。

 就任後、浜田車庫跡にブルドーザーが入ると一躍“ブルドーザー社長”の異名が付けられた。監督にブレイザーを呼び、西武との間で主砲・田淵を軸とするトレードを成立させた。続けてドラフト会議での江川指名。巨人サイドの「リーグ脱退」の脅しにも「トレードには応じない」と突っぱねた。しかし、年が明けると電撃の“江川−小林繁”のトレード劇。後日、舞台裏の真相を聞いたが「これからも誰にも言わないし、墓場に持っていく」と口を閉ざした。

 激動の社長についてまわり、悔いがあるとすれば一つ。次期社長について取材できていればどんな反応が返っていたのか。これから球団トップに立つ人が1社だけにニュースを流し、敵を作るような事はしたくないはず。一方で、つたない記者相手にも正面から向き合ってくれた人。今もふと、そんなことを思う時がある。(終わり)



【1970年代】小津正次郎


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