「ダメだって」王は珍しく怒っていた(後編)

「ダメだって」王は珍しく怒っていた(後編)

 翌朝、私は城之内邦雄の自主トレ取材で静岡・熱海にいた。ホテルにデスクから電話がかかってきた。

 「オイお前、今日、王が婚約を発表するってよ。お前のカミさんから電話があったよ」

 デスクの声を聞きながら、受話器を落としそうになった。まさか昨日、麻雀していたときのあの言葉が…全てを理解した。交際中だった恭子さんといずれ結婚するのは分かっていたのに…。

 私の家内も王家と親しくさせてもらっていた関係で、王の知人から「今日婚約発表するらしい」という伝言を預かった。そして連絡のつかない私に代わって、会社に電話してくれた。

 それにしても、王の婚約スクープ…逃した魚は大き過ぎた。当時の編集局から「バカ野郎。不忍池(上野の会社近くにある池)に放り込んでやろうか」と怒鳴られた。デスクには「私の机の一番上の引き出しに恭子さんの写真が入っています。それを使ってください」と返すのが精いっぱいだった。

 その日の夜、王に電話を入れた。「ワンちゃん、おめでとう」。王は「今みんな集まってるからウチにおいでよ」と言ってくれた。自宅で開かれたお祝いの席に私もお邪魔させてもらった。

 「おめでとう」と言ったものの、少し浮かない顔の私に酒を勧めてくれた。そして、またポツリ。「アキさん、オレ麻雀のとき言ったよね」と私の肩を軽くたたいた。王の笑顔を見たとき、もうスクープを逃したことなど忘れていた。深夜まで宴会は続いた。

 「もう遅いから今日は泊まって行きなよ」

 担当を離れた後も交友を続けている。今でも年に一度は電話で近況を聞いている。私は生涯「王番」である。(終わり)



【1960年代】


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