「内藤國雄・人生自在流5」“海坊主”に教わった社会的試練(前編)

「内藤國雄・人生自在流5」“海坊主”に教わった社会的試練(前編)

 【内藤國雄・人生自在流5】(前編)

 羽織、袴で正装した男が内藤家を訪れた。足袋の白さがなんとも印象的。通っていた将棋道場主の藤内金吾七段(当時)だった。内藤少年が14歳の時だ。

 藤内七段は真剣な顔で「将棋のプロにさせなさい」と、母親と兄たちに申し入れた。

 父親は、その直前に死亡していた。代わって長兄が尋ねた。

 「國雄は将棋界に入って何段までいきますか?」

 藤内七段は即座に答えた。「私以上、八段にはなります」。自信に満ちた口調。八段は当時日本に10人しかいなかった。

 母が口を開いた。

 「学校はどうなりますか?」

 「棋士に学校は必要ありません」

 「國雄は気の弱い性格で、勝負に耐えられるでしょうか」

 「國雄君は楽天的な性格でプロに向いていますよ」

 自信に満ちたその言葉がきいて家族はプロ入りを承諾した。末弟で体が弱く、あまり期待されていなかったことも幸いしたのかもしれない。

 「OKが出て、私は飛び上がるほどうれしかった。好きな将棋で生きていけるなんてこんなうれしいことはない」。内藤少年は満面笑みだった。

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