「内藤國雄・人生自在流14」間に合った親孝行(後編)

 【内藤國雄・人生自在流14】(後編)

 紀子はそれから寝込んで1週間後に臨終を迎えた。いまわの際、呼吸が突然大きく荒くなった。

 「私は飛び起きて母の手を握った。呼吸は激しくなり、やがてピタリと止まった」

 享年53。7年前に亡くなった父親も同じ53歳だった。ともに若死にである。

 「母っ子だった私は言葉に言い表せないほどのショックだった。よく『頭の中が真っ白に』というが、逆にこれまでのことが走馬灯のように回り始めた」

 紀子は朝早くから夜遅くまで忙しく働き、その寝姿を見たことがない。毎日、洗濯板を力をこめてゴシゴシこすっていた姿が思い浮かんできた。

 家にいたお手伝いさんから「日陰のモヤシ」と陰口されるほど体が弱く、その意味でも紀子に苦労をかけてきた。

 さらに将棋界に入ったことで心配させた。18歳、三段でもたついていた時、紀子がつぶやくようにいった言葉が忘れられない。

 「上の子は皆大学出ているのに、くにちゃんだけ…。悪いねえ」

 すぐ返事をした。「産んでくれただけで感謝している。ここまで育ててもらったらもう大丈夫。もう心配しなくていいよ」

 久しぶりに母は笑った。=敬称略=

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