ヤクザ顔負けの用心棒…北朝鮮「警察権力」の利用方法

ヤクザ顔負けの用心棒…北朝鮮「警察権力」の利用方法

民主主義国家において警察は、犯罪の捜査、防止、交通安全など、市民の生命と財産を守ることが本分だ。しかし、全体主義国家においてはその役割が異なる。市民よりは、国家を守ることを優先させ、そのためには市民を暴力的に弾圧することも厭わない。つまり、警察は庶民が信頼できる存在ではないのだ。

そんな国で問題が起きれば、警察を頼るのではなく、コネのある権力者を通じて圧力をかけてもらったり、ヤクザを使ったりして、私的制裁を加えて問題を解決することも少なくない。

そんな国の一つである北朝鮮で、ある女性が警察を逆に利用して、自分の恨みをはらすという出来事があった。

デイリーNK内部情報筋の説明によると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)に住む女性Aさんは、中国キャリアの携帯電話を所有していた。

茂山は、国境を流れる豆満江(トゥマンガン)を挟み中国と向かい合う地域。ここだけでなく、中国と国境を接する地域には、密かに中国キャリアの携帯電話を使う人々がいる。北朝鮮の携帯電話は、国内通話、国内限定のイントラネットを使うのは自由だが、外国との通話や世界と繋がるインターネットに接続することはできない。そのため、中国の携帯電話を使っているのだ。

しかし、金正恩党委員長は中国の携帯電話の使用を「国内情報の流出、国外情報の流入」の元凶として、厳しく取り締まるよう指示を出した。保衛部(秘密警察)は、取り締まりを行うと同時に、中国の携帯電話を使う人を脅迫し、多額のワイロをむしり取るネタとして使っている。おとり捜査をして罠にはめ、逮捕した上で拷問を加え、財産をむしり取るケースもある。

そんな状況下、Aさんは中国の携帯電話を持ち、使いたい人にレンタルする商売を営んでいた。おそらく保衛部に定期的にワイロを納めることで見逃してもらっていたのだろう。

数ヶ月前、同じ茂山に住む女性Bさんが携帯電話を使いたいと訪ねてきた。Aさんは貸し与えたが、Bさんはいつまで経っても返そうとせず、「紛失した」と言い訳を繰り返すばかりだった。本当に紛失したのか、ネコババして売り払ったのかは定かでない。

このような場合でも、所有者は保安署に被害届を提出できない。中国の携帯電話の所有、使用が違法であるため、届けを出した本人が捕まってしまうからだ。市民の財産より、国家の安寧を優先させているのだ。

とりあえずAさんは数ヶ月待ったが、Bさんは一向に携帯電話を返す気配がない。売掛金や借金を年内に回収する習慣のある北朝鮮。11月になっても動きがないため、Aさんはついに最終手段に出た。保安署に被害届を出したのだ。

当然、AさんもBさんも保安署に連行された。しかし、Aさんには考えがあったのだ。中国の携帯電話を持っていると自首すれば、処罰はされるものの労働鍛錬隊(軽犯罪者を短期間収容する刑務所)送りになるだけで済む。この程度なら、コネとカネを使いうまくやればすぐに出てこられる。

一方のBさんには重い処罰が下されるだろう。運が良くても、拷問で半殺しにされた上で高額のワイロを支払わされ、ようやく釈放となる。気の毒なのは、Aさんから携帯電話を借りていた善意の第三者がトバッチリをくらい、2〜3人が取り調べを受けているというのだ。

「Aさんは『どうせ死ぬなら一緒に死のう』と言っていたらしい」(情報筋)

Aさん、Bさんに対して地元の人々は、「取り調べを受けるのなら一人でやればいいのに、他人にまで噛み付くのか」と批判している。同時に「保安署は保安節(11月19日の警察記念日)の行事や年末の様々な警備にかかる費用をワイロで稼ぎ出した」と保安署を皮肉っているという。


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