韓国の文在寅大統領は14日、青瓦台(大統領府)で行った年頭の記者会見で、「南北間、そして朝米間対話のいずれも現在は楽観できないが、悲観する段階でもない」と指摘。一方で、米国の大統領選が本格化してゆけば、北朝鮮と対話する余地も狭まることを前提に、「朝米間に時間的な余裕が多いとは思っていない。朝米はできるだけ早く対話に乗り出す必要があり、韓国政府もそうなるよう努める」と述べた。

これは、7日に発表した「新年の辞」で、米朝対話の進展を待つよりは南北協力を先行させたい意思を明らかにしたことの延長線上にあるものと言える。

この「新年の辞」に対し、米国のハリス駐韓大使がすかさずけん制したのは本欄でも述べたとおりだ。昨年、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するかどうかを巡って、韓国が米国から多大な圧力を受けたことは記憶に新しい。それを思い出すまでもなく、安全保障問題で米国との歩調を乱すことは、韓国にとって大きなリスクを伴う。

しかしそうまでしても、北朝鮮には文在寅氏からのラブコールを受け入れる気配はない。北朝鮮は文在寅氏の会見にぶつけるように、韓国がパッシング(Passing=素通り)される理由を解説してみせた。

北朝鮮の対外宣伝メディアである「メアリ」14日付の論評で、「南朝鮮(韓国)当局はなぜ無視されなければならないのか」としつつ、次のように主張した。

「歴史的な北南宣言(注=昨年の首脳会談における南北合意)が発表された後、私たち共和国は終始、その履行のために主導的かつ善意的で度量の大きい措置を相次いで取ると同時に、南朝鮮当局が民族の問題を解決するために、外勢との『協調』よりも、民族の利益を優先する立場を取るべきであることを、わかりやすく助言もし、忠告もした。しかし、南朝鮮当局は北南宣言の履行のための根本的かつ原則的な問題からは目をそむけたまま、米国に盲従盲動し、我々と合意した宣言のいずれの条項も履行できなかった。むしろ隠蔽された方法で高度な戦争装備を搬入し、外勢との合同軍事演習を繰り広げながら、同族を狙った軍事的敵対行為に固執する裏切り行為をはばからず、全民族の怒りを誘った。

盲従は無視を招き、裏切りは軽蔑を呼ぶものだ。

いかなる自主性もなく、外部勢力に盲従盲動する南朝鮮当局に果たして何を期待することができるだろうか」

このような主張は、北朝鮮が従来から繰り返してきたもので、その内容は単純明快だ。北朝鮮が望むのは、開城工業団地や金剛山観光の再開など南北の経済協力であり、米韓合同軍事演習の完全な中止であり、米国からのステルス戦闘機導入などの軍事力増強の停止である。これらのいずれも、米国との合意なくして韓国が独断で実行するのは不可能だ。

こんな要求を突き付けてくる北朝鮮と対話したいなら、文在寅氏は南北対話より先に、米国との対話を先行させる必要がある。