北朝鮮の朝鮮中央通信は2日、金正恩党委員長が1日、肥料工場の竣工式に出席したと報じた。金正恩氏の公開活動が伝えられるのは20日ぶりだが、この間に飛び交った「死亡説」は間違いだったことが明らかになった。しかしその一方、健康に何らかの問題が生じたのではないかとの疑いは、完全には払しょくされていない。

実際、朝鮮中央テレビが2日に公開した肥料工場竣工式での金正恩氏の映像を見ると、右手首に手術痕のようなものが見え、同氏がこの間に心血管疾患の手術を受けていた可能性が高まっているのだ。

また、北朝鮮内部ではこの間、全国各地の党・行政機関に対する金正恩氏からの指示が途絶え、4月29日になって久しぶりに下されたものの、その内容の変化が現場幹部らの懸念を駆り立てていると、韓国デイリーNKが伝えている。

デイリーNKの内部情報筋によると、従来は毎週水曜日か木曜日、各地域の党・行政機関に対して金正恩氏の名義による「方針」が通達されていたが、それが十数日間にわたり途絶えていたという。

そして、29日になって久しぶりに伝えられた「方針」は、それまでと構成や中身が異なっており、現場では「元帥様(金正恩氏)に何かあったのではないか」との疑念が持ち上がっているという。

従来の「方針」は7項目以上で構成されていたが、29日のものは3項目しかなかった。ちなみに、金正恩氏が雲隠れする直前の9日に伝えられた「方針」は10項目からなっていたという。

29日の「方針」は、内容も平板だった。「平壌総合病院(建設への)支援の強調」「軍民一体化の運動活性化」「農業部門での適期の播種(種まき)」といった具合に、従来から言ってきたことを繰り返しただけだった。

特に、金正恩氏が語った「お言葉」の引用がひとつもなかった。金正恩氏名義のこの種の通達では、金正恩氏の言葉をカギカッコ付で引用し、何月何日の発言かが明記されるのが普通だ。

また、下部機関から提起された問題について、金正恩氏が解決策を示す形の項目もなかった。

こうした現象について、北朝鮮の内部事情に詳しい脱北幹部は、「最高指導者の『お言葉』をねつ造することは決して許されない。つまりは本当に言及がなかったのだろう」と語る。

一方、「方針」を伝えられた幹部たちは不自然なものを感じながらも、それを金正恩氏の健康問題と結びつけることは避けているという。そんなことをして金正恩氏の権威を傷つけたとみなされたら、どんな目に遭わされるかわからない。

「平壌では、外部からの情報に接する人々も多く、元帥様の健康問題に関する噂も共有されていると思うが、敢えて口に出すような愚を犯す人はいないだろう」(情報筋)