台湾は2018年をもって、長年続けられてきた徴兵制度を廃止した。1994年生まれ以降の男性は、4ヶ月の軍事訓練を受ける義務は残るものの、軍隊に行く必要はなくなった。また、韓国では徴兵制度が存続しているものの、その期間が段階的に短縮されている。宗教上の理由による兵役拒否も認められ、タブーとされていた徴兵制度の存廃についても社会的な議論がなされるようになっている。

このような兵役の撤廃、縮小の流れとは真逆の方向に動いているのは北朝鮮だ。男性には10年の兵役が課されているが、今まで対象外だった女性に対しても2019年4月から兵役が課されるようになり、女性兵士が急増していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の軍関係者によると、徴兵検査を受けて合格した女性は、男性より短い6年、軍官(将校)の場合は8年間の兵役に服することになる。合格基準は満18歳以上、身長150センチ以上、体重48キロ以上だ。ただし大学進学、芸術、スポーツなどの特技を持った女性は対象から除外される。

北朝鮮は2015年4月から、女性の兵役義務化を推進していた。しかし、娘を持つ親たちの抵抗に遭うなどし、実施が遅れていたのだ。また、ワイロなどによる兵役忌避も横行していた。

女性の兵役実施に伴い、今まで男性が9割以上を占めていた軍に、女性兵士が大量に流入し始めたという。

それにしてもなぜ、兵役が嫌がられるのか。それは、軍隊での生活環境が極めて劣悪だからだ。

軍隊では食糧の不足が常態化し、栄養失調が蔓延している。食糧の供給源となっているのは非効率極まりない協同農場だが、輸送過程での横流しなどで目減りし、質も粗末なものに入れ替わってしまう。

腹をすかせた兵士たちは、民家や協同農場を襲撃する。中には越境して中国で事件を起こす者もいる。親たちは、軍隊に送り出した子どもが餓死しないように仕送りをするが、経済的な負担は非常に重い。

それだけではない。男性の上官が、朝鮮労働党への入党を推薦してやる、待遇を改善してやるなどと持ちかけ「性上納」を強いる事態が頻発しているのだ。

平安北道(ピョンアンブクト)の軍関係者は、戦闘部隊における事務、補給などの役割を男性兵士から女性兵士に置き換え、女性だけの部隊を編成する作業が進んでいると伝えた。これには、性犯罪を防ぐ意味合いもあるだろう。

様々な抵抗にもかかわらず、軍当局が女性に対しても兵役を課した背景には、少子化がある。

男性は国営企業や行政機関など、ろくな給料がもらえない職場に配属されているが、女性は必ずしも職場に属する必要はない。そのため、女性が市場で働き、現金収入を得る。出産、育児に割く時間的、経済的余裕がない。また、子どもの教育費も過大な負担となる。

多くの夫婦が子どもを持たない、持っても1人という選択をした。それが少子化を招き、ひいては軍の兵力補充に支障をきたす結果となった。