都市インフラの安全対策がずさんな北朝鮮では、しばしば大規模な爆発事故が発生。多数の犠牲者が出ている。

国境の川・鴨緑江(アムロクカン)をはさみ中国の対岸に位置する北朝鮮の新義州(シニジュ)市では最近、大規模な列車火災があった。筆者は北朝鮮の列車火災と聞いて、2004年4月に龍川(リョンチョン)で起きた大爆発事故の記憶がよぎった。8000棟の建物が吹き飛び、1500人が死傷した悪夢のような大惨事である。

そして今月3日、やはり中国との国境に面した北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)で大きな爆発が連続して起きた。デイリーNKの情報筋が、その様子を対岸の中国吉林省の長白朝鮮族自治県から撮影した。

情報筋の話によると、恵山市内の中心部、塔城洞(タプソンドン)の民家で3日午後6時10分ごろ、火災が発生した。保管していたガソリンに火が付き、プロパンガスのボンベに引火、爆発した。隣家にも飛び火した火災は、次々にプロパンガスを爆発させ、10回も爆発が続いた。

さらに近隣の住宅にも引火し、地域住民が消火活動を行い、1時間半後に鎮火した。しかし、消防車は出動しなかった。

この火災で、北朝鮮で「ハモニカ社宅」と呼ばれる長屋1棟が全焼。住民6人が現場で死亡し、30人が負傷して両江道人民病院に搬送されたが、翌朝に3人が亡くなり、死者は合計で9人に達した。恵山市安全部は、火元の家に住んでいた国境警備隊の哨所長を逮捕し、火事の原因について取り調べを行っている。

火の勢いが強かったせいか、家財道具は何一つ持ち出せなかったようだ。当局は、被災者に対してコメ、布団、衣類などの生活必需品は提供するが、「不注意による事故」だとして、巻き込まれた人まで含めて一切の補償は行わないとしている。また、生活必需品の配布も「税負担」、つまり、当局の負担ではなく、被災者あるいは市民から金品を徴収して行うとのことだ。

当局の関心は、住民の生命や財産には向けられていないようだ。「家の中にあった(金日成主席、金正日総書記の)肖像画を安全に持ち出せた者はいないか」と被災者に尋ねているというのだ。

当局は、火災や水害の際には、最優先で肖像画を守ることを指示し、その結果、怪我をしたり、命を落としたりした人がいれば美談として持ち上げる。そのネタを探していたということだ。

塔城洞には、亡くなった抗日パルチザンを葬る恵山革命烈士陵があり、普天堡(ポチョンボ)戦闘勝利記念塔、両江道革命史跡館など、政治的に重要な施設が集中している。