北朝鮮が深刻な財政難の打開のために、17年ぶりとなる公債の発行を計画しているとデイリーNKが伝えたのは今年4月。

発行量の4割はトンジュ(金主、新興富裕層)に外貨で販売し、残りの6割を国営の工場、企業所が、国から割り当てられた生産計画の実行に必要な資材などの購入に必要な小切手に当てるという自転車操業的なものだった。しかしその消化は順調とは言いがたい状況と伝えられていたが、結局は中断されることとなった。

平壌のデイリーNK内部情報筋は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)経済部の幹部が先月初めに内閣と傘下の機関に対して指示書を下した。その内容は次のようなものだ。

◯国家機関公債および国家貿易公債の流通の一時中止
◯国家計画委員会財政委員会を中心とした売却分と在庫量の確認、検収
◯各機関に割り当てられた公債は、回収して中央銀行に集めて凍結

新規の公債発行は中止し、未発行分は無効化するというものだ。

また、「中央の指示により公債利用を執行した機関の現在の財政状態を診断し、今年の計画量を調整できるようにする」との内容も含まれている。政策に忠実に従ったことで苦境に追い込まれていた機関を救済するという意味合いだ。

この指示は、8月に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第6回総会で、金正恩党委員長が既存の経済政策の失敗を公式に認めた後で下されたものだ。中央党経済部で公債発行計画の修正に関する議論があったものと思われる。指示文には「公債流通による年末および来年の5カ年人民経済計画についての課題修正を承認する」との一文が入っているとのことだ。

失敗の理由だが、トンジュ(金主、新興富裕層)や幹部に、そっぽを向かれたことが大きい。公債の発行の噂が流れ、無理やり買わされることを恐れた彼らは、輸入品の買い占めやドル買いに走り、経済が混乱した。

そして、彼らの予想通り「押し売り」が強行された。

平壌郊外の流通拠点、平城(ピョンソン)の事情に詳しい中国の貿易業者は今年6月、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、朝鮮中央銀行が支店網と職員を動員して、住民に対して1人あたり5000ウォンの公債の購入するように呼びかけたが、反応が薄かったため、機関、企業所、食堂などに押し売りしていると伝えた。

デイリーNKの情報筋が伝えたのは「買わなければ殺す」という驚くべきものだった。平壌郊外の江東地区炭鉱連合企業所が、国から割り当てられた公債を、坑道を所有するトンジュに押し売りしようとした。それに反発したトンジュは、「党政策非難罪」という罪状で、裁判を経ずに処刑された。