北朝鮮の国営・朝鮮中央通信は10月16日、両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)市に、人民病院が開院したと報じた。

三池淵市人民病院の開院式

【平壌10月16日発朝鮮中央通信】労働党時代の山間文化都市の典型に立派に転変した三池淵市(両江道)に近代的な病院が新しく建設された。

保健医学的要求と主体的建築美学思想が完璧(かんぺき)に具現された三池淵市人民病院には、各科に最新医療設備と器具が立派に具備されており、遠距離医療サービスシステムが構築され、医療サービスの情報化が実現して患者に対する診断と治療を迅速かつ正確に行えるようになった。

(中略)

李日煥副委員長は開院の辞で、三池淵市人民病院は最高指導者金正恩党委員長が金正日総書記の故郷で住み、働く三池淵市の人民が最も先進的な医療サービスを受けながら健康な体で文化的な生活を享受するようにするために建ててくれた愛の贈り物であると述べた。

また、三池淵市人民病院は保健医学的要求と主体的建築美学思想が完璧に具現された地方人民病院の標準であると述べ、全ての治療・予防機関と防疫単位の活動を根本的に改善してわが国の社会主義保健医療制度の優越性をより高く発揚させることに言及した。

演説者は、みんなが人民の天下第一の楽園を実現してくれる偉大なわが党、わが国家のために奮励努力することによって朝鮮労働党第8回大会に向けた「80日間戦闘」で誇らしい勝利を収めていくことについて強調した。−−−

金正恩氏が力を入れてきた、三池淵の再開発工事の一環として完成した新しい人民病院だが、開院早々から不協和音が聞こえてくる。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、11月中旬に道内の経歴のある医師や医大を出たばかりを新人ら20人が「贈り物医師」として、三池淵に集団配置された。物」というのは、金正恩氏が直々に派遣したという意味だ。

意思に反して山奥の病院に配属された医師たちは文句タラタラだ。

「見回しても山とホコリしか見えないこんなところで、一体いかにして極寒に耐えて生きていかなければならないのか」(医師)

朝鮮中央テレビの29日の天気予報では、両江道の道庁所在地の恵山(ヘサン)の最低気温は氷点下17度、最高気温は氷点下4度。これでも充分寒いが、三池淵にある白頭山密営は氷点下23度〜氷点下12度。最も寒い時期には氷点下40度まで下がる。

国営メディアは、三池淵に住宅が次々に建設されていると伝えているが、医師には住宅が与えられず、ホテルで寝泊まりしている。住宅が与えられたとしても、手抜き工事でまともに住めない状態である可能性もある。

そんな不満を聞きつけた朝鮮労働党三池淵市委員会はカンカンだ。党委員長は、医師らをこう叱りつけたという。

「全国では配給がもらえないのに、三池淵ではジャガイモとはいえ、平壌レベルの配給を受けられる。それだけでも満足しろ」

そもそも、集団配置は、誰も行こうとしないところに人を送り込むことだ。

生まれ育った故郷から遠く離れ、生活インフラも整っておらず、副業で商売をしようにもまともな市場すらない。そんな集団配置先に嫌気が差して、勝手に故郷に戻ってしまったり、中には脱北したりする人もいる。

それを見越してか、市党委員会組織部は医師に対して「三池淵から逃亡を図れば、党に対する裏切り行為で、評定書(人事評価書)に永遠にレッテルを貼り付け、どこにも行けなくしてやる」と脅かしている。

医師にしてみれば、こんなところから逃げ出して、都会で人民病院に籍を置き、個人病院を開業した方がよっぽど儲かり楽な暮らしができるが、それができなくなるという警告だ。

ただ、命令は時が経つにつれうやむやになるのが北朝鮮の常。医師は遅かれ早かれ、現地幹部にワイロを掴ませて、山奥の極寒の地から逃げ出すだろう。