北朝鮮の首都・平壌の中心部にある万寿台(マンスデ)の丘にそびえ立つ故金日成主席と故金正日総書記の銅像に異変が生じている。

国営の朝鮮中央通信は先月15日、金日成氏の112回目の生誕記念日の前日の14日、金徳訓(キム・ドックン)内閣総理、崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長、李炳哲(リ・ビョンチョル)朝鮮人民軍元帥ら、党、政府、軍のイルクン(幹部)が、銅像に花籠を捧げたと報じた。記事とともに、数百人の高位幹部が銅像の前に集結している様子を撮影した写真も配信したが、銅像に異変はなかった。

また、朝鮮人民革命軍創建日の先月25日、朝鮮人民軍の将兵、勤労者、青少年学生が銅像に花籠を捧げたとの報道の写真でも、異変は一切なかった。

ところが、米Maxar社が先月28日に撮影した衛星写真を見ると、銅像の周辺にクレーンと鉄骨らしきものが設置されている様子が確認できる。また、今月3日の衛星写真では、高さ25メートル、幅27メートル、奥行き14メートルの白いカバーで銅像が完全に覆われている様子が確認できる。ちなみに銅像の高さは23メートルだ。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党中央委員会(中央党)から先月中旬、銅像の制作を行っている万寿台創作社1号銅像修復室に対して、「銅像を整備せよ」との命令が下された。これに伴い、朝鮮人民革命軍創建日の後で、銅像がカバーで覆われた。

避雷針の設置、鳥の糞などの異物や緑青の除去、表面の研磨とコーティングが行われるとのことだ。作業には、1号銅像修復室の専門家、万寿台銅像管理所や朝鮮革命博物館修復室の職員ら80人が交代で当たっている。完了時期は明確になっておらず、作業の進み具合次第だとのことだ。

また、銅像の下に設置されたエレベーターと「モシム坑道」の自動化システム整備工事も同時に行われている。これは有事の際に、スイッチひとつで銅像を地下空間に収納できるシェルターだ。システムの更新に当たっているのは、護衛局1号モシム坑道管理隊機械室のメンバーだとのことだ。

金日成氏を巡っては、生誕記念日の名称「太陽節」という用語の使用を事実上禁じられるなど、その扱い方に大きな変化が生じた。

全国に4万体あると言われる金日成氏、金正日氏の銅像だが、いずれも神聖な場所とされている。

単なる修復工事に過ぎないとの説明だが、平壌市民が正確な情報を得られているかは不明だが、神聖不可侵なる銅像をカバーに覆われた様子を目の当たりにした平壌市民の間で、様々な噂が飛び交い、不安が広がる可能性も考えられる。