吉野川の激流が少しずつ岩を削り、2億年以上の時を経てつくり上げられたという大歩危峡(徳島県三好市山城町)。険しい山々に囲まれた秘境だ。

 町には多くの妖怪伝説が語り継がれる。「道の駅 大歩危」の近くには「妖怪街道」がある。1キロほど進むと、児啼爺(こなきじじい)の石像と出会う。民俗学者・柳田国男「妖怪名彙」、水木しげる「ゲゲゲの鬼太郎」に登場するキャラクターは、山城町上名が伝説発祥の地とされる。

 約2キロの街道には、次々と妖怪が現れる。少し奥まった所には「妖怪の里」があり、独特の妖気が漂う。

 付近はかつて交通が極めて困難なエリアだった。崖に落ちる、川に流される危険と隣り合わせの生活。親、地区の長老は子供たちに自然の脅威から命を守る心構えや、危険な場所に近づかないことを言い聞かせた。それが数々の伝説の始まりとも言われる。

 昔、全国各地で身近な存在だった妖怪は都市化に伴いどこかへ消えたが、この地では生き続けているかのようだ。



※写真は2018年6月、撮影