新型コロナウイルスに世界中が翻弄された2020年。サッカー界も例に漏れず難しい舵取りを強いられた状況下、「はじめてのJリーグ」を順調に航海してきたクラブが四国にある。

 それが今季J3に初参入した今治。前節は今季初の連敗を喫し1年でのJ2昇格こそ難しくなったが、ここまで30試合を終え12勝10分8敗・勝ち点46で16チーム中8位。特に失点数23は長野と並び2位タイの堅守を誇っている。

 では、なぜ今治は好調を維持しているのか?通常、試合開催2日前にリモート形式で行われるスペイン人指揮官・リュイス監督記者会見を追っていくと、その理由がそこかしこに見て取れる。

 例えば夏ごろの会見。メンバー選出の基準についての質問に、指揮官がまず言ったのは「私は全員の選手を信頼している」。続いて「練習からの働きを見てメンバーは判断している」。そしてこのコメントは以後、何度問われてもいささかのブレもない。

 そして目標も「目の前の試合を勝つ」が常。秋口に入ってJ2昇格ラインが見え、にわかにザワザワする私たちが昇格への意気込みを振っても泰然自若。「スペインのマスコミはもっと騒ぎ立てる。マスコミとはそういうものです」と理解を示しながらも「次の試合に全力を注ぐ。それが終わってから次の試合を考えます」と、これまた毎回同じ話が繰り返される。

 唯一の例外は「次の秋田戦は寒いことが分かっている」と気候について身をすぼめ、笑いながら語った長野戦前くらいだ。

 合間に日本語交じりのジョークは入りながらも、自クラブの話では極めて慎重に語るリュイス監督。ただ、この「明確な判断基準」「ブレない」「信頼」。そして「重要な点は語らない」は、SNS全盛の現代で間違いなく必要とされる要素である。

 ではみなさん、自らに置き換えてみてほしい。自分が直接言われていないことを人づてに聞いたらどんな感情が生じるのか?答えは明らか。個人レベルの不信感はやがて組織の崩壊につながり、逆に個人同士の信頼は組織の結束につながる。そう考えると今治の躍進は必然であることがお分かりになるだろう。

 そんな今治のJリーグ1年目も残り4試合。リュイス監督いわく「我々はJリーグの新米。学ばなくてはいけない」日々は、12月20日・ホーム夢スタでの最終節・相模原戦まで貫かれていく。(スポーツライター・寺下友徳)