コンビニ「Xマスケーキ」「おせち」が早くも販売開始 社員、バイト“自腹買い”の実態

コンビニ「Xマスケーキ」「おせち」が早くも販売開始 社員、バイト“自腹買い”の実態

 先月11日、セブン-イレブンのオーナーらが公正取引委員会を訪れ、セブン本部を告発する一幕があった。訴えのなかには「おでんを勝手に発注された」という、にわかには信じ難い内容も……。店の目玉となる季節商品だけに、本部としても“売らんかな”の姿勢であることは想像に難くないが、こうした話はおでんに限ったことではないようだ。『セブン-イレブンの真実』の著者でフリージャーナリストの角田裕育氏が、過酷なノルマ事情を繙く。

 ***

 10月に入り、暦の上では本格的に秋になった。とはいえ、日によっては暑さが残り、冬はまだまだ先というのが実感ではないだろうか。実際、クリスマスや正月も2カ月以上先のイベント。にもかかわらず、コンビニ業界では早くも「クリスマスケーキ」と「おせち」の販売予約を受け付けている。

 年末年始の目玉商品の予約がすでに始まっていると聞き、少々驚く方も多いだろう。実際、セブン-イレブン(以下セブン)の各店舗では、すでにそれなりの数の予約注文が入っているという。現役のセブン本部社員は次のように語る。

「例年、全国平均ではひと店舗あたり、クリスマスケーキは予約開始初日で25個くらい、おせちだと30個くらいの売り上げがあります」

 今年に関していえば、ケーキは9月23日から、おせちは10月2日から予約が始まった。テレビCMで宣伝しているわけでもなく、予約が始まっていること自体、知らない方も多いはずだ。

 実をいえば、この数字にはカラクリがあって、

「こうした売り上げは、主にOFC(店舗経営相談員)という役職の本部社員や店舗オーナー、従業員が買ったものが、かなり含まれています」(同)

 OFCとは、セブン直営店舗の店長を経た社員が就く役職で、店舗を指導する主力級だ。一般企業の“係長クラス”といえばわかりやすいだろうか。ひとりで7〜8の店舗を担当し、セブン全体で3000人ほどがいる。

 実際にSNSなどネット上では、アルバイト従業員を名乗るアカウントによる、

「クリスマスケーキやおせちは高いから、ノルマは勘弁してほしい」

 という趣旨の投稿が散見される。“身内”が自腹を切ってケーキやおせちを買い上げる……店舗はどう思っているのか。元セブンオーナーに実態を聞くと、

「最初のうちは目標達成のためにアルバイトにも買い取って貰っていました。しかし、あるとき、高校生アルバイト従業員に買わせて親御さんにこっぴどく怒られて以降はやめました」

 さらに、

「ウチは、クリスマスケーキやおせちのような高いものを自腹買いさせたことはありません。でも、恵方巻き2、3本程度なら『欲しいなら買ってね』と勧めたことはあります」

 こう証言するのは、大阪府東大阪市にあるセブン-イレブン南上小阪店のオーナー・松本実敏氏だ。今年2月に24時間営業を止め、注目を集めたあの人物である。

「よその店舗では(ノルマ達成の)表彰状をバックヤードに飾ってあったりして、そういう店はオーナーが進んで自腹買いをやっているのではないでしょうか。あるいは気の弱いオーナーさんのお店に、本部が強く出ているのか……」

 どうやら相当過酷なノルマが課せられている印象を受ける。目標が達成出来ないとどうなるのだろうか。

「隔週で1回、全国FC会議という本部社員を集めた会議があり、目標を達成出来なかったOFC社員はそこで吊し上げに遭います。『お前は何をやっていたんだ!』とか、もっと厳しい言葉が浴びせられることも……。そのため、クリスマスケーキとおせちが始まる9月と10月は、離職するOFC社員が多く出ます。12月のボーナスを待たずにですから、いかにノルマが過酷かがお分かり頂けるはず」(先の現役本部社員)

 加えて筆者の取材によれば、OFCは徹夜勤務もあたりまえの過酷な労働環境だそう。セブンのこうした実態は、コンビニ業界では知られた話である。もっとも、今回筆者の取材に答えてくれたのがセブン関係者であり、ローソンやファミリーマートなど、他のコンビニチェーンでも、季節商品の売り上げノルマはあり、自腹買いがないわけではない。とはいえ、関係者は口を揃えて、

「ローソンやファミマはセブンほどうるさく言ってこない」

 と証言する。

自腹買いの裏側

 ただこの問題の難しいところは、表向き、“自腹買いは行われていない”とされている点だ。実際セブンに聞くと、

「自腹買いということはしていない。目標が達成出来ないからと言って、FC会議で社員を吊し上げるということもない」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)

 と答えるのみだ。どういうことなのだろうか? 元セブン本部社員の解説によれば、

「OFCの上司にあたる部長級のZM(ゾーンマネージャー)や課長級のDM(ディストリクトマネージャー)は、『自腹買いをしろ』とは口が裂けても言いません。社長以下の幹部クラスでは『自腹買いは卑怯なことだ』と言っているほどです。しかし、現場で自腹買いが定着してしまっているのは事実。私が在籍していた頃は、普通に売ってはとうてい達成出来ないような目標がZM、DMから命じられ、泣く泣くの自腹買いが行われていました。ですから、建前では自腹買いはないことになっているんです。幸い、私の上司はあまり自腹買いをしなくてはならないような目標を吹っ掛けてくる人ではありませんでしたけれど」

 世間のコンビニ業界への風当たりを気にしてか、最近では個数を指定しての“目標”のお達しはされないという。そもそもZMやDMの裁量による部分も大きく、元社員の証言にあるように、ノルマは店舗によってまちまちだったようだ。

 ただし、ノルマそのものが完全になくなったわけでは、もちろんない。ケーキやおせちではないが、比較的最近に私が耳にしたところでは、ある店舗では「ひと月におでん1000個」というノルマがあった。このあたりは本部も把握しきれていないのだろう。業界の“闇”の部分といえるかもしれない。

 先の現役本部社員は、こんな愚痴も漏らす。

「そもそもクリスマスケーキなんて12月に入るぐらいの時期にケーキ屋さんなどで予約するもの。今の時期から、しかもコンビニで売れる訳がありません。自腹で買ったクリスマスケーキを、学生時代のゼミの友人に買って貰ったりしたこともあります。セブンに入社すると、忙しすぎで社外の人との付き合いがほとんどなくなりますから、なけなしの人脈ですよ。おせちは10万円分ぐらいを実家に送ったりもしましたね」

 ノルマ達成のために、今後も自腹買いはつづく……。

角田裕育(すみだ・ひろゆき)
兵庫県神戸市出身。北大阪合同労働組合青年部長、人民新聞記者などを経てフリーに。著者に『セブン-イレブンの真実〜鈴木敏文帝国の闇〜』(日新報道)、『教育委員会の真実』(宝島社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月16日 掲載


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