「孫正義」一世一代の大芝居で取り繕う窮状 真っ赤っかどころか火の車「ソフトバンク」破綻への道

「孫正義」一世一代の大芝居で取り繕う窮状 真っ赤っかどころか火の車「ソフトバンク」破綻への道

 財務諸表危険度分析プログラム「フロードシューター」を開発した会計評論家・細野祐二氏は、ライザップやZOZOなどの資金繰りの悪化を予言し、的中させてきた。赤字決算に転落したソフトバンクグループの窮状もかねて指摘。破綻は現実味を帯びているのか。

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「ボロボロ、真っ赤っかの大赤字。まさに大嵐というような状況だ」

 15年ぶりの営業赤字決算を11月6日15時に発表した説明会の冒頭で、孫正義会長兼社長はこうアケスケに話した。彼は一般向けのプレゼンテーションが非常に上手だ。決算説明1時間、質疑応答1時間、合計2時間の長丁場だったが、孫氏はこれらをすべて一人でこなした。質疑応答を聞いていてもそつがなく、専門用語の使用を極力避け、素人受けのするストーリー展開に持ち込む。取材するマスコミの勉強不足もあるものの、孫氏の頭脳の良さを感じた。

 プレゼンの出来は良く、結果的にその翌日のソフトバンクグループ(SBG)の株価はほとんど下がっていない。孫氏はこの決算説明における所与の目的を達成したと思う。このことから、我々は、「SBGの経営において、孫正義社長とそれ以外の経営陣あるいは幹部社員との経営者としての実力格差が甚だしい」と理解できる。

 これだけのプレゼンを一人でやり切れる経営者を抑止できる従業員など存在しない。ということは、孫氏の理念先行型の経営と現場レベルの経営実態に大きな乖離が生じているに違いない。

 SBGは今回、ウィーワークを運営するウィーカンパニーへの投資で9千億円もの大損を出した。その救済に更に1兆円ものファイナンス(資金供与)をするのだから、その資金繰りは大変なはずで、社内は上を下への大騒ぎになっているに違いない。しかし、これも孫氏に言わせれば「反省はするが萎縮はしない」ということで済まされてしまう。金の苦労や投資家の批判をものともせず、それらは部下の仕事と切り捨てられるからこそ、大借金をして投資した銘柄で大損を出しても平然と夢を語れるのだろう。良くも悪くも孫氏の強烈な個性がSBGの最大の長所であり、最大の弱点でもあるのだと思う。

 現在のSBGの生殺与奪の権を握るのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)という10兆円規模の巨額ファンドだ。孫氏の個性が悪い方へ振れた時、会社の存在そのものが危うくなりかねない。SBGは危険領域に突入している。

 SBGの株価の推移を見ると、2018年5月の時点で3800円台だったものが、9月にかけて5700円に達した。SBGが発表した巨額利益を好感したものだが、その後3カ月で3500円まで急降下。巨額利益はSVFの計上する非上場株の評価益に支えられていたわけだが、それが紙の上の利益に過ぎないとマーケットが嫌気したのだ。

 非上場というからには市場価格は存在しないわけで、それをどう評価するかは金融工学的に判断するということになっている。

 金融工学的時価とは対象企業の事業計画を基に算出された理論価格のことを言う。数学的に正しいように見えるかもしれないが、将来の事業計画自体は作文に過ぎない。赤字の計画など誰も立てることがないし、実現するかは誰にも分からない。そうやって非上場株に主観的な株価をつけ、評価益を出しているだけだと思われたところ、このうちウーバー・テクノロジーズが19年5月に上場。ウィー社のIPOも同年9月に決まり、株価は反応して6千円に達した。しかし、その後にウーバー株が下落。孫氏は“市場が間違っている”と、怒りの自社株買いに打って出たが、ウィー社のIPOが延期となったこともあり、株価は4千円台前半に戻っていたのである。

運転資金不足に

 私が開発した財務諸表危険度分析プログラム「フロードシューター」は、過去2100の上場企業を分析してきた。【SBGの業績推移】の会計利益先行率を見てもらいたい。これはフロードシューターの肝であり、〈当期純利益÷営業キャッシュフロー〉で求められる。あげた利益にどれだけ現金の裏付けがあるかを示す数値だ。SBGは、それまでは適正基準の50%程度をキープしてきたが、17年3月期に「危険」水域へ。

 これはSVFがスタートした時期に重なる。要するに、利益は“絵に描いた餅”ばかりということで、19年3月期以降もこの流れを引き継いできた。資金繰りが破綻していることを意味し、私はそのことをかねて指摘してきた。今年9月、SBG傘下のヤフーに身売りしたZOZOも運転資金不足に陥っていたが、これとほぼ同じような状態である。

 ところで、国際会計基準を採用しているSBGを日本基準で分析すると、見え方が全く変わる。国際会計基準は時価を正義とし、日本の会計基準は取得原価を正義としている。つまり、金融工学的時価や作文を認めないのが日本の基準だ。

 これによると16年、17年は経常黒字が7242億円、6641億円だったが、18年、19年は2775億円、661億円の経常赤字、そして今回の9月中間期で2718億円の経常赤字だ。

 SBGが抱える事業のうち、米・携帯電話のスプリント、米・携帯端末のブライトスター、英・半導体のアームは経常資金収支が破綻している。唯一、日銭を稼いでくれるのは、日本の携帯子会社・ソフトバンク株式会社だけだったが、それを昨年末に上場させた。34%の株式を手放し、年間2800億円のキャッシュフローを失う代わりに、2兆円強を調達した。SBGはこれを一体何に使ったのか。

 内訳はSVFに7千億円、16兆円もある有利子負債の返済に7千億円、自社株買いに6千億円だ。自社株買いの弾が尽きたことは既に記したが、これらの借金には財務制限条項がついている。財務制限条項とは、会社の決算内容が悪化した場合に借入の即時返済を迫る銀行との約定契約のことを言う。SBGの借入は、多くがドル建てだから利息は6〜7%と高いのが特徴だ。

 SVFについても触れておくと、ざっくりと出資者は2通りに分かれる。“プレミアム”出資者のサウジ政府は6%の固定利回り、つまり元本保証で6%の利子をつけてSBGに金を貸している。これに加えて成功報酬がつく。“一般”出資者は成功報酬のみだ。

 1度目の決算を見ると、“プレミアム”顧客には1027億円の金利を、“一般”向けには4834億円の配当を支払ったが、これはあくまでも仮払いに過ぎない。含み益を基にした未確定の支払いであり、ファンドの期間が終了した際、利益が無い場合は出資金と相殺することになる。

 今回、ウィー社とウーバーの評価損は約1兆5千億円と見積もられた。当然、その分も差し引かれることになる。決算説明で孫氏は、第2号のファンドが第1号と同規模でスタートできるようなことを言っていたが、そんな話は8月にもしていた。要するに投資家はSVFへの出資に慎重になっているのであろう。

 何よりも第1号“プレミアム”顧客であるサウジアラビアからの追加出資が決まらない。しかし、決算説明でそこまで言うのだから、孫氏にはそれなりの目算があってのことと思うが、その自信の根拠はみずほ銀行だと考えられる。

 かねてよりみずほ銀行はSBGと一蓮托生になっているので、第2号に出資せざるを得ない。第2号は、SBGとみずほ銀行を軸として、何とか年内にでも10兆円を集めるのであろう。とはいえ第2号出資が第1号より好成績となる可能性は低い。

保守主義の原則

 孫氏は6日の記者会見で「もはや私は会計上の売り上げとか純利益とかに目線を置いて経営をしていない。株主価値、これを最大のものさしとしている」と発言し、決算説明会のプレゼン資料等でも“株主価値”が増えていることを強調していた。

 具体的には、SVFが3兆2千億円、アームが2兆7千億円、スプリントが3兆1千億円、ソフトバンク株式会社が4兆8千億円、アリババが13兆3千億円、その他が8千億円で、合計27兆9千億円の資産価値に対して純負債が5兆5千億円。正味株主価値22兆4千億円となり、これは第1四半期末より1兆4千億円増えているというのだ。

 そもそも、会計上、株主価値なるものは定義されていない。SBGが独自に定義し、彼らだけに通用する株主価値というわけだが、当のSBGはその定義を明示していない。最近、日本においても財務諸表上の経営指標ではなく、会計上の定義がない独自指標を使って開示を行う企業が散見されるが、困ったことである。米国では10年ほど前に大流行したことがあり、米国証券取引委員会がこれを規制するに至っている。

 今回は、ウーバーやウィー社の失敗で巨額減損が出たので、「国際会計基準では経営実態は分からない」などとして、独自指標の株主価値なるものを持ち出してきた。この人たちは自分に都合が悪くなると基準を変える。SBGの一般投資家に対する姿勢に疑問を感じる。

 先に触れた通り、SBGの連結有利子負債は合計16兆円あるが、彼らは持株会社たるSBG単体の純負債を5兆5千億円と見積もり、独立採算子会社の有利子負債を除外している。資産評価の内、SVF、アーム分は非上場なので、負債の返済原資としては評価できない。ソフトバンク株式会社とアリババ及びスプリントは上場株ではあるが、これだけ大量の株式を売却することは事実上不可能なので、これまた負債の返済原資としては評価できないと思う。

 それでもあえてSBGの連結株主価値を会計上算定すると、アリババとソフトバンク株式会社の含み益を考慮しても、14兆円程度のものだと思う。彼らが定義する株主価値は22兆4千億円だから大いに乖離している。かねてより私が一貫して主張しているように、会計上、SBGが3兆円超の実質連結債務超過という事実は動かず、その経営は売るに売れないアリババ株の含み益依存で、まことに頼りないものなのである。

 また孫氏は、プレゼンの中で、SVFの累計投資実績として、投資88銘柄のうち価値が増加したのは37社で、その内訳は実現益が5千億円、評価益が1兆3千億円と明かした。他方、価値が減少したのは22社で、その内容は評価損が6千億円だという。益が1兆8千億円に対して損が6千億円なので、SVFは全体として高い投資パフォーマンスを出していると自賛しているが、この考え方は間違っている。

 会計では保守主義の原則がある。保守主義の原則とは、「予想される利益は取り込まないが、予想される損失は取り込むという考え方」のことを言う。

 保守主義の原則は複式簿記700年の人類の英知である。保守主義の原則の下でのSVFは、益が5千億円に対して損が6千億円なので、累計投資実績は1千億円の赤字なのである。孫氏は、ウィー社の経営者の手腕を見誤ったことを反省するなどと訳の分からないことを言っている。

 しかし、本当に反省しなければならないのは孫氏自身の経営思想そのものではないか。6%もの高利で資金を10兆円も集め、累計正味1千億円の損失を出しながら、なおSVF第2号などと言っては際限なく投資を続けようとする経営思想こそ批判されなくてはならない。

 今回、SBGは本体で5千億円、SVFで4千億円、合計9千億円にのぼるウィー社の評価損を取っており、これは私が想定していた規模とほぼ一致する。現時点において、未計上の最大評価損は、ウィー社に対する追加ファイナンス1兆円から出てくる評価損ということになる。

 そもそもSBGは本体とSVF合計で1兆1千億円をウィー社に投資し、その後一旦評価益を出しながらも、今回9千億円の評価損を出した。それに対して何を血迷ったか、更に1兆円のファイナンスを打つ。ならば、追加1兆円のファイナンスから1兆円の追加評価損が出てくる可能性がある。

 ウィー社の業績は新規ビル投資を止めれば時間が解決して黒字になる――。孫氏はそんな調子のよいことを言うが、そうは問屋がおろさない。ウィー社は700戸のビルを開発している。最初の100戸のビルが12カ月で黒字化したのならば、次の100戸の黒字化は15カ月かかるはずで、更に次の100戸は20カ月、30カ月……とどんどん黒字化に要する期間は長期化していく。条件のいいビルから事業化し、残されたものはどんどん条件が悪くなるに決まっているからだ。ウィー社への追加投資はSBGの命取りとなるように思う。

最良・最悪のシナリオ

 SBGにとって最良のシナリオは、SVFから第二のアリババが出てくることである。ウーバーやウィー社はその候補銘柄だったが、今回その目はなくなった。

 逆に、最悪のシナリオはSBGの資金ショートであり、これは予断を許さない。SBGは前述の通り16兆円の連結有利子負債があり、毎年1兆円程度の借入返済期日がやってくる。これに対してSBGの19年9月中間期における連結営業キャッシュフローは3736億円(年間換算7472億円)にすぎない。現在の孫流ビジネスモデルを継続する限り、SBGは毎年2528億円(1兆円−7472億円)の借金を連結で永遠に増やし続けていかなければならず、それは不可能である。

 特に、22年3月期は国内の劣後債など合計1兆3056億円の返済期日がやってくる。また、今回ウィー社の追加ファイナンス1兆円のうち、5千億円が通常の返済とは別に降りかかってくる。みずほ銀行がこれだけの資金を出せるかどうかは疑わしい。“得意”の社債発行で凌ぎたいところであるが、右肩下がりに推移する現在の4千円程度の株価では社債は売れない。こんな時に虎の子のアリババの株を売り出せば、株価は大暴落するのが関の山。私には、返済資金の目途はつかないように思える。

 本稿に対してSBG側に回答を求めた。その主張は次の2点に尽きる。

(1)弊社は持株会社ですが、連結対象の子会社も含め、投資先は全て独立採算で運営されており、その有利子負債の返済義務は持株会社であるSBGには一切なく、法的にも道義的にも返済する必要のないものです。

(2)ご提示の営業キャッシュフローは連結ベースであり、ソフトバンク(株)、スプリント、SVF等のキャッシュフローを含みます。既述の通り、SBGは子会社のキャッシュフローを使用しませんので連結営業CFはSBG単体の負債返済能力とは全く無関係です。

(1)は道義的にどうかというのは私には分からないが、法的にはその通りだと思う。(2)で〈〜全く無関係〉というのも法的には正しい。

 ここで、SBGは持株会社SBG単体での財政状態を主張している。すなわち、連結ベースで判断するのと持株会社単体ベースで考えるのでは、SBGの財政状態は全く違うということになるのであるが、私は、連結ベースで判断すべきだと思う。なぜなら、「SBGの投資先は全て独立採算で、持株会社SBGは、その負債に責任を負わず営業キャッシュフローにも関与しない」と言いながらも、SBGは、その投資先を時価評価してそれがSBGの株主価値と主張しているからである。

 独立採算の投資先が債務弁済に支障を来せば、その投資先の時価評価は大きく毀損するのだから、その毀損が決定的に重大なものであれば、SBGは株主価値を保全するために投資先の資金繰りを支援せざるを得ない。現に、独立採算であったウィー社に対して今回1兆円もの追加ファイナンスを打ったではないか。独立採算子会社の負債に責任を持たないのであれば、独立採算子会社の時価を株主価値として主張すべきではない。良いところ取りはできない。

 SBGのビジネスモデルは、資本市場と金融市場からの潤沢な資金調達を前提として際どく成立してきた。日本社会はSBGの資金調達に対し、強く警戒しなければならない。

細野祐二(ほそのゆうじ) 会計評論家
1953年生まれ。「会計士界のレジェンド」と許される会計評論家。財務諸表危険度分析プログラム「フロードシューター」を開発した。フロードシューターの分析通り、ライザップは業績見通し下方修正を行ない、ソフトバンクグループの携帯子会社ソフトバンクの新規上場も、初値公募価格割れとなる事態が出現した。複式簿記研究会を主宰。年会費は1万円。http://yuji-hosono.com/

「週刊新潮」2019年11月21日号 掲載


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