内閣府は2018年3月、40〜64歳の「ひきこもり」は全国で推計61万3000人いるとの調査結果を発表した。経済評論家の上念司氏が今月出版した『誰も書けなかった日本の経済損失』(宝島社)によると、この61万人の経済損失は約11兆円になるという。「ひきこもり」の他に、NHK受信料は6617億円、飲酒は2兆7000億円、睡眠不足は8378億円……。それぞれどんな根拠があるのだろうか。

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 上念氏は、今回の本の中で、24項目の経済損失を列挙している。ひきこもりについては、経済損失を計算する方法を見つけ出せなかったので、厚生労働省の自殺者の経済損失額を採用したという。『誰も書けなかった〜』から一部を引用してみると、

〈日経新聞は「自殺者が出たことによる経済的な損失額が2015年で推計約4600億円に上ることが23日、厚生労働省研究班の調査でわかった」(内閣府「生活状況に関する調査」)と報じている。
 厚生労働省自殺対策推進室によると、この年の自殺者数は2万4025人である。このことから自殺者1人当たりの経済損失は次のように算出することができる。
 4600億円÷2万4025人=1914万6722円
 大変不謹慎であることを覚悟で、「ひきこもり」になった人を「いないも同然」とみなし、この数字を適用して経済損失を推計してみることにした。(中略)もし、61万人の「ひきこもり」が全員20年以上ひきこもったままであれば、その損失は約11兆円となる。〉

NHKは受信料を値下げすべき

 飲酒の経済損失は、厚労省の調査で明らかとなっている。2012年に発表された飲酒による社会的損失は4兆1483億円になるという。内訳は、約1兆円が治療にかかる医療費、約1兆円が死亡による労働損失、約2兆円が病気による労働損失となっている。

「その4兆1483億円から酒税による税収1兆4614億円を差し引き、実際の損害額を約2兆7000億円と計上しました」

 意外なことに、NHKはその金満体質のせいで、受信料が経済損失をもたらしているという。

「NHKは、集めた受信料を全額使い切っているのであれば何ら問題ありません。しかし現状は、使い切っていないどころか、長年余ったお金が山のように積み上げられているのです。本来なら国民が消費したであろうお金が、消費されずに滞留しているのです。2018年度の連結決算によれば、現金または現金同等物の合計は6617億円で、総資産に占める割合は50・1%となります。つまり、NHKが保有する資産のうち、放送に使われているものは半分程度ということです。こんなにお金が余っているのであれば、受信料を値下げすべきですよ」

 日韓関係の悪化により韓国で日本製品の不買運動が起きた。この経済的損失は――、

「明治大学の飯田泰之准教授によれば、韓国からの訪日客の大半はビジネス客なのだそうです。そう考えると、韓国からの訪日が減った理由は不買運動というより、韓国自体の景気低迷のせいではないでしょうか。訪日のビジネス客が減っても、そんな大きな影響はありませんよ」

 日本企業は、韓国のホワイト国認定解除で顧客を失ったと言われているが、

「ホワイト国認定解除によって、韓国への輸出手続きが厳格化した半導体材料3品目(レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミド)は、昨年7月から9月の間で、フッ化水素のみが30・3%減となっていますが、レジスト、フッ化ポリイミドはそれぞれ3・3%増、54・7%増となっているのです。輸出が途絶えたわけではありません。日本の企業が韓国の顧客を失ったというのはデマです。結局、韓国の不買運動による日本の損失は、九州の対馬や湯布院など一部の観光地を除けば、統計上はほぼなしと言えます」

 上念氏は、24項目の経済損失の中で、一番問題視しているのは睡眠不足である。2014年のOECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本は加盟国29カ国中、韓国に続いて2番目に睡眠時間が短かった。厚労省の最新の国民健康・栄養調査報告(2017年)によれば、睡眠時間が6時間未満の人の割合が男性36・1%、女性42・1%に達しているという。睡眠時間6時間未満と7〜7・9時間の人を比較すると、癌で死亡する確率は睡眠時間6時間のほうが男性で3・1倍、女性で1・1倍高くなる。

「睡眠不足は、死亡リスクを高めます。2018年に癌で死亡した人数は男性が21万8605人、女性が15万4942人でした。この死亡人数に厚労省の睡眠時間6時間未満の割合を掛け合わせると、男性が7万8916人、女性が6万5231人となります。もし彼らが7時間〜7・9時間の睡眠を取っていたとしたら、何人が死なずに済んだでしょうか。睡眠6時間未満と7〜7・9時間の癌の死亡率から計算すると、男性は5万3460人、女性は5930人が死なずに済んだかもしれません。睡眠不足による病気の医療費は年間で8378億円。睡眠不足の原因は、長距離通勤が挙げられます。在宅勤務を導入するなど、働き方改革を本格的に実施すべきでしょう」

週刊新潮WEB取材班

「週刊新潮」2020年1月24日 掲載