標識の見落とし、高速道路の逆走、そしてブレーキとアクセルの踏み間違い。ここ数年、高齢者の交通事故が社会問題になっている。警察庁によれば、全国の交通事故死者は昨年3215人に上り、その半数以上を占めるのが65歳以上の高齢者だった。免許証の自主返納が叫ばれるなか、栃木県内の自動車販売会社が独自の取り組みを始めた。

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「公共交通機関の乏しい地方では、多くの人は高齢になっても簡単に免許証を手放そうとはしません」

 こう語るのは、那須塩原市の『おまかせオート石川』の石川博之社長だ。

「そこで今月24日に『65歳以上専門店』を開業します。恐らく、全国初でしょう。この店で売るのは、人や物を検知して衝突被害を軽減する自動ブレーキなど安全機能装置を搭載している車ばかり。もちろん、踏み間違い時サポートブレーキも後付けできます。65歳未満のお客様には、うちの別店舗を紹介します」

 これで商売になるのか。

「後から付ける安全機能装置も格安で提供するので、正直、利益は薄いですね。自分で言い出したことですし、お客様とは長くお付き合いしたいと考えているので」

 数年前から、石川社長の元には高齢者やその家族から免許返納の相談が急増している。

「若い頃に事故を起こしていなかった人が、65歳を過ぎてから頻繁にドアミラーをこすったりすると、初期の認知症の疑いがあるので、病院へ行くことや免許証の自主返納を促します。怒る人はいませんよ。ここでずっと商売をしているので、顔見知りばかりですからね」(同)

 車を売るだけでなく、認知テストや健康セミナーも行う予定だ。

 石川社長に協力する『まるちゃん鍼灸整骨院』の仲丸博泰院長によれば、

「昨春、石川社長から話を聞いて協力を申し出ました。市内の別の場所から移り、『65歳以上専門店』の横で3月2日に開院します。高齢者の事故は、運動機能の低下が大きな原因。健康セミナーで講師をするだけでなく、実際に器具を使って運動機能や反射神経の維持、回復のお手伝いをします。また、健康新聞を毎月発行するので、そこで執筆もする予定です」

 免許返納後も、電動車イスの貸し出しや生活相談なども実施するという。地元密着ならではのビジネスか。

週刊新潮WEB取材班

2020年1月25日 掲載