丸刈りか、それに準ずる髪型の2択

 俳優の木村拓哉(51)が主演を務める、テレビ朝日系木曜ドラマ「Believe−君にかける橋−」。橋づくりに情熱を燃やす狩山陸(木村)が刑務所に収監されるところから始まったドラマは、9日放送の第3話で“脱走”というまさかの展開となったが、実際に刑務所で生活したことのある元受刑者には“没入”しにくいという。ドラマとはいえ、刑務所でのシーンの数々に違和感があるというのがその理由だ。

 新型コロナの給付金詐欺で逮捕・起訴され、山陰地方にある刑務所で約3年服役し、昨年11月に出所した50歳男性のA氏がこう語る。

「ドラマの演出だということは承知の上ですが、どうしても引っ掛かるのが受刑者役の髪型です。一ノ瀬ワタルさんが演じる特殊詐欺犯の灰谷がロン毛ですが、さすがにあんな髪型の人は絶対にいません。受刑者に許される髪型は丸刈りか、それに準ずる髪型の2択しかありません」

 髪を伸ばすことはできるが、刑期の最後のほうで、限られた時間だという。

「仮釈放の本面接後、もしくは満期満了の2カ月前から髪を伸ばすことが認められますが、それでも2カ月でロン毛にするのは不可能でしょう。木村さんが演じる狩山もこざっぱりした髪型をしていますが、あれも刑務所内では当然、NGです。木村さんを丸坊主にさせないために、ロン毛の受刑者を同房にさせたんじゃないのかと思って観てしまいます」

 A氏によると、ほかにもドラマはツッコミどころ満載だという。

「第2話で狩山が同房者と食事をしながら、お箸で橋を造るシーンがありましたが、箸の目的外使用にあたるため懲罰対象となります。いくら刑務所から脱走を図ろうとした狩山とはいえ、わざわざそんな無意味なリスクはとらないはず。そもそも、同房者同士で会話することはありえません。食事時間は短く、黙々と食べます。就寝時のヒソヒソ話も、声が他の房(部屋)まで聞こえるからあり得ませんね」

職員を役職名で呼ぶのはタブー

 首をひねりたくなるシーンはまだあるという。

「作業着で運動するシーンもありましたが、運動する際は必ず運動着に着替えます。また、狩山が上川隆也演じる林区長を『区長さん』とか、刑務官を『職員さん』と呼ぶ場面がありましたが、受刑者が役職名で職員を呼ぶことはありません。役職を知らせることは、出所後に身元がバレる可能性につながるので、タブーとなっています。ちなみに、私の場合、20代の自分の子供みたいな担当職員に『私のことをオヤジと呼びなさい』と強要されました。また、第1話で有罪判決が出て、拘置所で狩山が指輪を外すシーンがありましたが、どうせあそこまで描くなら、肛門チェックは無理だとしても、厳しい身体検査のシーンがあってもよかったのかもしれませんね」

 もっとも、A氏からしても、丁寧でリアルに描かれた場面もあったという。

「木工作業のシーンですかね。私の場合、刑務所で自動車のライトの配線作業をしていましたが、ドラマの作業場の雰囲気はそれらしい感じがしました。刑務官を呼ぶ時は、左手を耳に当てて、垂直に手を上げて当ててもらうまでジッと待つのが基本。刑務官に名前を呼ばれたら、(1)番号(2)氏名(3)用件を伝え、刑務官が『ヨシ』と言ったらそれに伴う行動をします。『作業の件で隣の〇〇さんと口談許可、お願いします』『用便の許可、お願いします』と伝える際もこの手順を踏むのですが、あの木工作業のシーンはそれに近いものでした」

 狩山が脱走に成功したことで減少傾向になるだろうが、刑務所シーンはまだ出てくる。A氏の指摘を頭に入れてドラマを見るとより楽しめそうだ。

デイリー新潮編集部