最悪の日韓関係、K-POPアーティストは今年の「紅白歌合戦」に選ばれるか

最悪の日韓関係、K-POPアーティストは今年の「紅白歌合戦」に選ばれるか

 日韓の外交関係が1965年の国交正常化以降、最悪とも言える状態に陥っている。外交問題と文化は別物であるものの、これほど問題が深刻化すると、大晦日のNHK「紅白歌合戦」への影響も避けられそうにない。K-POPアーティストたちの紅白出場はどうなるのか?

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 今年の大晦日のNHK紅白歌合戦は、70回目の記念番組となる。令和になり最初の紅白でもあり、例年に増して華やかな番組になりそうだが、関係者たちの頭を悩ませそうなのが、K-POPアーティストたちの処遇だ。

「日韓の外交問題があるから、K-POPアーティストたちの出場については例年とはまったく違った考え方になるでしょう」(音楽業界と放送業界の内情に詳しい芸能ジャーナリストの渡邉裕二氏)

 K-POPアーティストたちはどうなるのか? それを占う前に、まずは平時であるなら出場が有力視されるK-POPアーティストたちの活躍ぶりを簡単に確認しておこう。

 2018年の第69回紅白にK-POPアーティストとして唯一出場したのが、多国籍ガールズグループ・TWICEだ。2年連続の出場だった。同9月にリリースした日本でのファーストアルバム「BDZ」がオリコンの週間ランキングで1位に輝いており、誰もが納得する選出だった。

 今年の彼女たちはどうかというと、人気は上昇の一途と言っていいだろう。3月から4月にかけては全国3都市(京セラドーム大阪、東京ドーム、ナゴヤドーム)でのドームツアーを成功させた。

 紅白に過去3回出場している男性デュオ・東方神起の活躍もめざましい。今年7月末にリリースした両A面シングル「Hot Hot Hot/ミラーズ」は、タワーレコードオンラインによる「J-POPシングル ウィークリーTOP30」で、日本人アーティストを押し退けて1位に輝いた(8月5日付)。「ミラーズ」はテレビ朝日の連続ドラマ「サイン―法医学者柚木貴志の事件―」の主題歌でもある。

 紅白には出たことがないものの、男性7人組のヒップホップグループ・BTS(防弾少年団)は世界的人気を誇る。今年4月にはアルバム「MAP OF THE SOUL:PERSONA」が米国ビルボード200のチャートで1位を獲得。1位獲得は通産3回目だ。

 7月3日に日本でリリースしたシングル「Lights/Boy With Luv」は、日本レコード協会から海外男性アーティストのシングルとしては初のミリオン認定を受けた。

 ほかにもガールズグループのBLACKPINK、男性13人によるグループのSEVENTEENなどが日本でも高い支持を受けている。

 なぜ、こんなにもK-POPは強いのか?

「世界基準に沿ったアーティストづくり、作品づくりに徹している。ファッションもそう。世界で人気を得ようとしている。ここが、基本的に国内にしか目を向けていない日本とは違うのです」(レコード会社元幹部)

物足りない日本のアイドル

 また、日本はアイドルの選択の幅が狭く、それに物足りなさを感じる音楽ファンが、K-POPに流れているという一面もあるようだ。そう指摘する芸能関係者は少なくない。

 日本の男性アイドルはジャニーズ系にほぼ限定されている。女性アイドルはAKB48系かモーニング娘。が大半を占める。それ以外のニーズをK-POPが吸収している、という構図である。加えて、日本のアイドルのファンは大半が異性だが、K-POPは同性にもウケるという特徴がある。

「もはやK-POPは日本における音楽の一ジャンルにほかなりません」(前出・芸能ジャーナリストの渡邉裕二氏)

 事実、オリコン・リサーチが今年4月に発表した「ORICON エンタメ・マーケット白書2018」によると、K-POPの音楽ソフトと映像ソフトを合わせた2018年の日本での推定総売上額は、274億5000万円にも達した。前年比56.4%増で過去最高だった。

 ちなみに同レポートによれば、国内全体での音楽ソフトの総売上額は2854.8億円、映像ソフトは同2174.1億円。確かにK-POPの存在感は無視できるものではないのである。

 若者を中心にTWICEやBTS、東方神起らのファンが多数いる。紅白に選出されたら、大喜びする若者が大勢いるだろうが、事はそう簡単に運びそうにないのである。

「好きな人だけが買うCD、行きたい人だけが行くライブと、さまざまな人が見るテレビはまるで違う。『日韓外交が最悪の時期に韓国の歌手など見たくない』という人の意見も考慮しなくてはなりません。スポンサーが渋面になる怖れがある民放での出演は簡単ではないし、視聴者の抗議には慎重に耳を傾けるNHKの紅白となると、出場は至難でしょう」(民放社員)

韓国人歌手と紅白の歩み

 前出・芸能ジャーナリストの渡邉氏も「ファンの人は紅白出場を待ち望んでいるでしょうが、国民感情を考えると、無理ではないか」と読む。

 10月中には決まる紅白出場歌手の選考基準は通常、以下の3点だ。(1)今年の活躍(2)世論の支持(3)紅白の企画に合うかどうか――。K-POP勢にとって、(1)は難なくクリアできるだろうが、目下の情勢では(2)が障害になってしまいそうなのだ。

 K-POPを支持する自由は完全に認められなくてはならないが、テレビの場合、支持しない自由もまた尊重しなくてはならない。それがテレビの難しいところだ。

 実は2018年にもBTSは出場が有力視されていた。同4月発売のアルバム「FACE YOURSELF」と、同11月発売のシングル「FAKE LOVE/Airplane pt.2」がオリコンの週間ランキングで1位になっており、人気面では当選ラインに十分達していると思われた。

 ところが、原爆投下時の様子を印刷したTシャツをメンバーが着ていたことで猛批判を浴びる。これが選考に深刻な悪影響を与えたとみられる。テレビ朝日も同11月、Tシャツ問題を理由に「ミュージックステーション」の出演を見送った。

「そもそも韓国人歌手勢の紅白出場は外交問題や世論と関わり続けてきました」(前出・芸能ジャーナリストの渡邉氏)

 事実、チョー・ヨンピル(69)が韓国人歌手として紅白に初出場し、「窓の外の女」を歌ったのは、ソウル五輪を翌年に控え、日韓友好ムードが高まっていた1987年だった。以降、1988年にケイ・ウンスク(58)、1989年にはキム・ヨンジャ(60)、パティ・キム(81)が初出場をはたす。

 ここまでは演歌歌手だが、W杯サッカーが日韓で共催された2002年には、K-POPの嚆矢とも呼べるBoA(32)が初出場。日韓首脳会談が行われた2004年にはRyu(45)、イ・ジョンヒョン(39)が初出場した。

 2003年から2004年にはNHKで放送された韓国ドラマ「冬のソナタ」が爆発的人気に。音楽と合わせ、第1次韓流ブームと呼ばれた。

 2008年には東方神起、2011年にはKARA、少女時代がそれぞれ紅白に初出場。このころを第2次韓流ブームと称されている。

 当時は日韓の外交関係が悪くなく、首脳会談がたびたび開かれていた。2009年には「東アジア学生フォーラム・日韓2009」が行われるなど、市民レベルの友好ムードも高まっていた。

 ところが、2012年以降は2017年にTWICEか初出場するまで、5年間にわたって韓国勢の登場がなかった。NHKがそれを理由にすることはないが、2012年8月の李明博元大統領による竹島への上陸問題が影響しているとみられる。さらに李氏は天皇への謝罪要求も行っており、国内の反韓感情が熱を帯びていたのだ。

 李氏は2013年に大統領から退き、後任に朴槿恵前大統領が就いたが、日韓の外交問題は一進一退と言える状態だった。そして2017年、現在の文在寅大統領が就任すると、「徴用工」訴訟など数々の問題が勃発。このままだと紅白は李政権時代と同じ道を辿りそうだ。

「そもそも紅白側がK-POP勢を選出したとしても、選ばれた側は出にくいでしょう。韓国では『東京五輪をボイコットすべき』という声すら高まっているから、紅白に出場したら母国で『なぜ紅白に出るのか』と批判されかねない」(前出・芸能ジャーナリストの渡邉氏)

 現在は第三次韓流ブームと呼ばれる。とはいえ、売れていれば出場させられるというわけにはいかない。それが国民的番組の宿命だ。

鈴木文彦/ライター

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月22日 掲載


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