沢口靖子(54)が主演しているテレビ朝日の連続ドラマ「科捜研の女season19」(木曜午後8時)が、来月で1年間の放送を終える。近年の連ドラはほとんどが3カ月間で終わるため、放送記者らの間には「途中で飽きられるのではないか」といった冷ややかな声がスタート前にあったが、現時点までの平均視聴素率は10%を超えている。誇れる成績だ。カルト的ファン、科捜研オタも増えている。

 昨年4月上旬、「科捜研の女season19」の記者発表の席で、沢口は1年間のロングラン放送に臨む心境をこう話していた。

「いただいた使命の大きさに心躍りました。フルマラソンを走り抜きたい」(記者発表での沢口の言葉)

 永遠の学級委員的美女である沢口らしく、生真面目な抱負だったが、そのゴールがいよいよ見えてきた。最終的な平均視聴率が10%を超えるのは確実。残りの放送はウィニングランとも言えそうだ。

 沢口が演じているのは京都府警科学捜査研究所の法医研究員・榊マリコ。口癖は「科学は嘘をつかない」。このドラマを見ない人であろうが、マリコの名前くらいはご存じではないか。なにしろ、「科捜研の女」の第1作の放送は1999年。沢口が34歳の時だった。同じテレ朝の「相棒」が2時間ドラマ「土曜ワイド劇場」内で単発ドラマとして始まったのは2000年だから、それよりも歴史が長い。

 法医研究員としてのマリコは極めて優秀で、飛び抜けて職務熱心。その上、美しく、品行方正。こう書くと、パーフェクトな女性のようだが、実際には天然ボケなところがあり、ツッコミどころ満載。だからこそ魅力的で、見る側は引き寄せられるのだろう。完璧な主人公は面白みに欠ける。

 マリコのツッコミどころはというと、その一つは、知っていることは口にしないと気が済まない点。空気なんて読まない。遠慮もしない。まるで子供のよう。昨年7月18日放送の第10話「マリコ寿司を握る」で、鑑定の参考とするために寿司職人養成学校に体験入学した際は、講師が生徒側に「わさびとショウガを添えるのは何ででしょうか?」と問い掛けると、マリコは途端に「はい!」と声を上げ、こう答えた。

「わさびにはアリルイソチオシアネート、ショウガにはジンゲロールが含まれるからです! どちらも抗菌作用があると言われています」

 寿司職人を本気で目指すほかの生徒のことはお構いなしだった。

 マリコは職場の同僚の疲労やプライベートの都合なども全く酌み取れない。人一倍、職務熱心なのだが、その分、同僚たちがどんなに長時間勤務でクタクタになっていようが、新しい証拠が出てくると、「鑑定しましょう」と目をキラキラと輝かせる。何時であろうがお構いなし。

 この言葉に映像データ担当の亜美(山本ひかる、28)は時に抵抗の表情を見せるが、マリコが屈することはない。マリコのスルー力は天下一品なのだ。亜美はやむなく「ラジャー!」と、服従する。

 化学担当の宇佐美(風間トオル、57)は寡黙な紳士なので最初からマリコに抗わず、押しの弱い物理担当の呂太(渡辺秀、28)も言われるまま。唯一、科捜研所長で文書鑑定担当の日野(斉藤暁、66)は「マリコ君…」とブレーキをかけようとするが、最後はマリコの言う通りにする。いくら止めようが、言うことを聞かないのが分かっているからだ。また、マリコを1人で働かせるわけにもいかない。

 主人公だから当たり前とはいえ、科捜研は完全にマリコ中心の組織。上司まで動かせてしまうのはマリコが優秀かつ無私で天然という特異なキャラクターだからだろう。

 考えてみると、天然の部分はさておき、ほかは沢口自身のキャラクターに近いのではないか。大阪の進学校に在学中、親友に強く勧められ、「東宝シンデレラオーディション」に応募。すると、3万1653人の中からグランプリに選ばれた。学校の成績も良く、芸能界入りのために入学は辞退したが、国立の奈良教育大学に合格していた。

 デビュー作は1984年の東宝映画「刑事物語3 潮騒の詩」。その後も東宝映画に出演してきたほか、NHK連続テレビ小説「澪つくし」(1985)、フジテレビ「ホテルウーマン」(1991)、テレ朝「鉄道捜査官シリーズ」(2000)、TBS「警視庁機動捜査隊216シリーズ」(2010)、フジ「検事・霞夕子シリーズ」(2011)などに出演してきた。すべて正義の人なのが沢口らしい。

 私生活ではデビュー以来、スキャンダルがただの一度もない。ロマンスの報道すらなかった。恋の噂は何度か流れたが、結局はすべてデマ。いまだスキャンダル処女である。今や死語になりつつある「清純派」という形容詞が、54歳の今も似合う人だ。

「科捜研の女」の話に戻すと、仕事一途のマリコも独身で、沢口と一緒。だが、マリコのほうはバツイチ。第1シリーズが始まった時点で既に離婚していた。相手はキャリア警察官(渡辺いっけい、57)だった。となると、ひょっとしたら1年間の長丁場の締めくくりはマリコの結婚なのか…。相手はもちろん内藤剛志(64)が演じる熱血刑事・土門薫しかいない。ファンの間でこの2人は「どもマリ」と呼ばれている。

 内藤は昨年4月の記者発表で、「20年やっていて、接近しないのはえらいこと」と熱弁。これに沢口も「そうですね」と恬淡と応じた。もし、2人が結ばれたら、ファンは狂喜乱舞するに違いない。

 ちなみに土門もバツイチ。その理由は昨年12月5日放送の23話「土門刑事の妻」と同12日放送の24話「土門刑事の選択」で明かされた。土門の元妻・有雨子(早霧せいな、年齢非公表)は看護師で、土門の同僚刑事との不倫が噂になったため、有雨子側から離婚を申し出た。その後、病死する。実際には不倫はなく、有雨子側はテロ事件の極秘捜査に巻き込まれていた。

 この24話の後、土門は警察学校の教官職に異動。内藤は4月から同じテレ朝の連続ドラマ「警視庁・捜査一課長2020」に主演するため、「勇退?」との見方もあり、ファンはざわついたが、1月23日放送の27話「マリコの動画チャンネル」であっさり刑事に復帰。

 いい意味で変化に乏しいのが「科捜研の女」の特徴の一つ。それだけに、どもマリが結ばれたら、インパクトが大きいだろう。まさにサプライズだ。

 このドラマの特徴をさらに挙げると、ストーリー前半で視聴者の大多数が「こいつが犯人に間違いなし」と思う人物は大抵がシロ。逆に、すこぶる善人に見える人が大逆転で犯人であることが多い。正味42分間のドラマでありながら、結末の予想がしにくい。犯人の予想が難しいという点では現存の事件モノでナンバーワンだろう。

 1年間の放送は、テレ朝の絶対的権力者・早河洋(76)の鶴の一声で決まったそうだが、実のところ現在の同局は「科捜研の女」まみれの状態。Season19を放送しているのみならず、2011年から2012年に放送したseason11を再放送中。それにとどまらない。CS放送のテレ朝ch1では第2作(2000)と「新・科捜研の女」(2006)を放送中。録画キーワードを「科捜研の女」と入力し、自動録画をセットすると、1週間で膨大な数が録れる。20年放送しても勢いが衰えないのだから、立派である。

 さて、沢口というと、「ルヴァン」(ヤマザキビスケット株式会社)のCMでも知られるが、「科捜研の女」の中では科捜研のメンバーが登場する特別バージョンのCMが流れている。生CMもあった昭和の時代と違い、出演陣が登場するCMはいまどき珍しい。このドラマは東映が作っているがCMも東映が制作しているそうだ。道理で雰囲気がドラマと一緒だ。

 このCMなぜかマリコがいない。無事、ドラマが撮り終わったら、マリコを囲んで「ルヴァン・パーティ」の開催となるのだろうか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
ライター、エディター。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年2月13日 掲載