「電通案件」ならぬ「工藤静香案件」と言うべきだろうか。木村拓哉・工藤静香夫妻の長女・Cocomiもついに芸能界デビュー。妹のKoki,と同じくファッション誌の表紙を飾り、クリスチャン・ディオールのアンバサダーに就任するという。妹の時と同様、異例の抜擢ぶりに、また裏で工藤静香が手を引いているに違いないと、反感を買っているようだ。

 妹のデビュー当時、長女は芸能界でなくフルートの名手として国内外で活躍、という触れ込みだったように思う。でも結局芸能界入りするのね……というトホホな感じは否めない。

 とはいえスタートダッシュさえ華々しくできれば、あとはマイペースにやっても話題と人気は集められると踏んだのかもしれない。4月からの大学入学を控え、芸能活動は抑え目にする旨が発表されている。このペース配分、さすがは静香ママである。

 時を同じくして野村萬斎の娘・彩也子さんもTBSの女子アナに内定したと報じられた。公文式のCM出演や読者モデル経験、慶應SFCのミスコン優勝など、多くの民放女子アナが内定までにたどったステップを着々と踏んでいただけに、こちらはやっぱりね、という気がする。

 親の七光りと言われて恥じるような女性は今は昔、使えるものなら親でもなんでも使うというガッツ溢れる姿勢が令和女子たちのデフォルトのようである。でもそれは少し理解できる。自分たちの賞味期限は思うよりも短いことを、それこそ親たちを見て悟っているからだろう。次から次へと美人で才能豊かな若き人材が現れ、自分たちのポジションを脅かす。そして注目度が高いがゆえに、ちょっとした言動の緩みがSNSであっというまに炎上し、芸能界を追われることもある。だったら早いうちに「出る杭」よりも「出すぎた杭」になっておけば、打たれたとしてもリカバリーが早い。打たれている間に親とも相談し、また次のキャリアを考えればいい。そう考えるのはやむを得ないのかもしれない。

炎上時代だからこそ「使い勝手の良い」2世たち 親の背中を見て学ぶメンタルの強さも評価か

 親の七光りに喜ぶのは、2世タレント側だけではない。むしろ起用するメディア側こそ、ありがたいのではないだろうか。何かとすぐ炎上する時代、どうせリスクを負うなら親の身元が確かな人間の方が安心して使える。もっと言えば、親と言うセーフティネットがあるからこそ、何かあった時にすぐ「使い捨てできる」という見方もできるだろう。うちじゃなくたって、よそで使ってもらえるでしょ、親御さんのコネがあれば。という算段である。

 事実、コネアナウンサーと呼ばれた高橋英樹の娘・真麻はフジテレビ入社後フリーに転身し、親子共演も数多く重ねている。彼女もデビュー当初はコネ入社とバッシングされたが、体を張ったコントや中継、親の名前を出されることも辞さない前のめりな姿勢で好感度は急上昇。今やフリーアナの勝ち組である。おそらく野村萬斎の娘もフリー化は既定路線と、TBS側も割り切って採用している部分も大きいのではないか。田中みな実や宇垣美里のように、民放で名前を売るだけ売ったら20代のうちにタレント転身、というのが最近のTBS女子アナの定石だ。ミスコン出場時、一つだけ願いが叶うとしたら「マーベルの映画に出演する」と答えていた彩也子さんのこと、タレント転身は思ったより早いかもしれない。

 また2世タレントならではのメンタルの強さも評価されるべきポイントではないだろうか。芸能人の子どもというだけで、幼い頃から理不尽な目に遭ってきたはずのキムタクの娘たち。しかし彼女たちは怯まない。母を攻撃するアンチに反論し、学友に取材をかけた週刊誌に抗議する。普通の人間だったら耐えられないほどの逆風の強さでも、立ち向かうメンタル。それはやはり、壮絶なアンチ攻勢を受けてきた親の背中を見ていたからではないか。先に挙げた真麻も、入社当時は相当まいっていたようだが、好感度をV字回復させるまで頑張り抜いたのはさすがの一言である。

 しかし、避けられるストレスは事前に避けるに越したことはない。木村姉妹の長女は音楽、次女はモデルに軸足を置き、同じ土俵には立たせないポジショニングも、静香直伝のストレス対策に思える。同じ分野で活動する姉妹は比べられやすい分、どちらかがこじらせがちだからだ。有村藍里・架純姉妹しかり、小林麻耶・麻央姉妹しかり、浅田舞・真央姉妹しかり。木村家の姉妹は、やや歳が近い広瀬アリス・すずと比較されるものの、むしろ目指しているのは安藤桃子・サクラ姉妹の立ち位置ではないだろうか。違う分野で、それぞれが国際的に評価される姉妹。

 デビュー時だけじゃなく、デビュー後のことも考え抜いた静香の戦略。それは無数のアンチや批判と戦い抜いてきた歴史が生み出した、危機管理能力の表れではないか。光あるところには必ず影がある。2世ならではの敵の多さを逆手にとって、親の七光りの次はアンチを利用してリスク管理能力を養う。そうなった時初めて、木村姉妹は本当に向かうところ敵なしになるのではないだろうか。

(冨士海ネコ)

2020年3月27日 掲載