人気女優も昔は脇役

 今年3月30日にスタートしたNHK朝の連続テレビ小説最新作『エール』。昭和の名作曲家・古関裕而と妻・金子をモデルにした作品で、主人公の古山裕一を窪田正孝(31)が、そして、その妻である音を二階堂ふみ(25)が演じている。

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 古関裕而は1909(明治42)年に生まれ、1989(平成元)年に80歳で没した。軍歌、歌謡曲、応援歌、行進曲の名作曲家として、戦前、戦中、戦後という激動の時代に活躍した。

 ドラマは人々の心に寄り添う多くの楽曲を生み出した作曲家とそれを支えた妻の物語であり、この二人の夫婦愛をどう描いていくかが注目されている。

 だがこれは、いわゆる“王道”の見どころ。少し視点を変えると、脇役を演じる“助演女優”に注目するという楽しみ方もある。

 というのも朝ドラには、のちにゴールデンタイムの連続ドラマで主演を務める女優たちが、まだ若き日に、実に意外な形で、あまた出演しているからだ。

 今回はそんな女優たちの中から5人をセレクトし、彼女たちが出演した朝ドラを紹介していこうと思う。

 まず1人目は、映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』の公開を控える長澤まさみ(32)。

 彼女が出演した朝ドラは、2002年上半期作品の『さくら』。高野志穂(40)演じるハワイ生まれの日系4世・松下さくらが英語指導助手として岐阜県飛騨地方の男子中学校に赴任し、日米の文化の違いに戸惑いつつも奮闘する、ほのぼの系ホームドラマだった。

 そしてこの作品で長澤が演じたのは、さくらの下宿先である沼田ろうそく店の長女でちゃっかり娘の高校生・佳奈子だった。

 00年に芸能界デビューしてからわずか2年での朝ドラ出演で、撮影当時はまだ14〜15歳だった。当然のように雰囲気は幼いのだが、みずみずしい演技でこのドラマには欠かせない“可憐な花”的存在であった。

 中でも同年代の男子と遊んで夜遅く帰ってきたせいで、父親に叱られて親子喧嘩するエピソードが印象深い。

 続いては吉田羊(年齢非公表)。14年に放送されたドラマ『HERO』の第2シリーズ(フジテレビ系)で演じたキレものの女検事・馬場礼子でブレイクして以降、今やドラマに映画、舞台などで欠かせない存在となっている。

 昨年は『凪のお暇』(TBS系)と『まだ結婚できない男』(フジテレビ系)という2本の連ドラで存在感を発揮した。

 そんな彼女は、実は過去3本の朝ドラに出演している。08年上半期作の『瞳』に10年上半期作の『ゲゲゲの女房』、そして12年下半期作の『純と愛』の3本である。

 特に女性看護師役で出演した『瞳』は、偶然その出演場面を見ていた中井貴一(58)の目に止まった。彼は、その颯爽とした演技に惹かれ、直接NHKに問い合わせたという逸話が残っているほどなのだが、インパクトという点では『純と愛』だろう。

 本作は亡き祖父が経営していた実家のホテルを愛し、いつか自らの手で再建したいと願うヒロイン・狩野純[夏菜(30)]の奮闘記だ。

 本作で吉田が演じたのは純の最初の勤務地となる大阪のオオサキプラザホテルで彼女の指導役を務める先輩・桐野富士子だった。

「純と愛」は黒木華も出演

 規律や礼儀に厳格で、規定から外れた行動をする純を厳しく注意するなど、まさに“キャリアウーマン”を地で行くキャラクターだった。

 そのあまりのキャラの強さに、本編終了後には富士子を主役にしたスピンオフドラマ『富士子のかれいな一日』が制作されたほど。当然、話題となったことは言うまでもない。

 さらにこの『純と愛』にはもう一人、今のエンタメ業界を語る上で重要な女優が出演している。

 日本アカデミー賞最優秀助演女優賞2度獲得を誇る若手の演技派・黒木華(30)だ。

 彼女が演じたのは、純と同期入社のフロント係・田辺千香だった。普段は大人しく気が弱いが、怒ると荒々しい関西弁でドスを利かせる豹変キャラだ。

 さらに嫉妬深く、思いを寄せる水野安和[城田優(34)]が自分よりも純に好意を示していると知ると、純に対して敵愾心を見せ、陰湿な嫌がらせをたびたびすることも。

 純が結婚したあとには良き友人となったが、それ以前は“敵キャラ”としての存在感を存分に発揮していたのだった。

 なお、黒木の朝ドラ出演作には14年上半期作の『花子とアン』もある。このときはヒロイン・安東はな[吉高由里子(31)]の妹・かよだった。前作から一転、本作ではけなげな役柄を好演している。

 4人目は、現在放送中のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』に、主人公・明智光秀[長谷川博己(43)]の正室・煕子(ひろこ)で出演中の木村文乃(32)だ。

 彼女は、朝ドラにこれまで2本出演している。08年下半期作の『だんだん』と12年上半期作の『梅ちゃん先生』だ。

 前者には三倉佳奈(34)演じるヒロイン・一条のぞみのライバルとなる舞妓・涼乃で出演していたが、より光っていたのが後者で演じた野島静子だろう。

 堀北真希(31)扮するヒロイン・下村梅子が新米女医時代にアルバイト勤務した坂田医院の看護師で、とにかく冷静でいつもクールだった。

 加えて劇中での本人のセリフによると「人に言えない過去がいっぱいある」という何やら意味深な部分もあり、全体的にほのぼのとしたドラマの中で異彩を放っていたのだ(実はその過去の一つに“男性問題でもめて大きい病院を辞めている”という設定がある)。

 それでも看護師だけあって優しい部分も時おり顔を覗かせ……。いわゆる“ツンデレ”なキャラだったのだが、とにかくインパクト大であった。

 このちょっと影のある女性・静子を好演したことで、木村は全国区の知名度を獲得、徐々に連ドラの主演女優としての階段を駆け上がっていくこととなる。

戸田恵梨香も、あの役を……

 最後の5人目は、今年4月期の新ドラマ『家政夫のミタゾノ』第4シリーズ(テレビ朝日系)でヒロイン・霧島舞を演じる飯豊まりえ(22)である。出演していたのは15年上半期作品の『まれ』だった。

 ヒロイン・津村希[土屋太鳳(22)]がパティシエールを目指して成長していく物語で、彼女が登場したのは最終回までラスト1カ月を切ってからのこと。

 演じたのは、希がオーナーシェフを務めるケーキ店「プチ・ソルシエール」の常連客で、のちに弟子入りすることにもなるケーキ大好き少女・沢沙耶。接客のほか、希の助手も務めるなど、とにかく有能な右腕ぶりを発揮した。

 力を合わせてケーキ屋を切り盛りしていく。この二人の若さ溢れる師弟タッグが本作の終盤の見どころの一つとなっていたのである。

 実は彼女は、この前年の7月期から、ゴールデン帯の地上波連続ドラマに4クール連続で出演しており、業界内では一躍注目の存在となっていた。

 その流れの中で、満を持しての朝ドラ初出演だった。最終章のレギュラーキャストという短い期間ではあったが、勢いに乗っている若手女優らしく輝くような存在感がとにかく圧倒的であった。

 最後に変わり種を一つ。前作『スカーレット』のヒロイン・川原喜美子の好演も記憶に新しい戸田恵梨香(31)である。

 なんと彼女は00年下半期作の『オードリー』で、ヒロイン・佐々木美月[岡本綾(37)]の養母となる吉岡滝乃[大竹しのぶ(62)]の少女時代を演じていたのであった。

 そして今作の『エール』である。これまでに発表されたキャストを見ると堀田真由(22)や森七菜(18)といった今後期待の若手女優のほか、加弥乃(26)と井上希美(27)といった、まだ一般にはあまり知られていない名前が並んでいる。のちにこの二人が“実は『エール』に出ていた”と言われる存在になるかもしれない。

 特に加弥乃は、元AKB48のメンバーで第1期生だったという経歴の持ち主だけに、話題性は十分。登場の仕方やキャラクター次第で、ブレイクする可能性はあるのではないだろうか。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月3日 掲載