コロナ禍で、民放テレビ局はドラマの撮影ができず、再放送でお茶を濁している。一方、NHKはテレワークでドラマを制作するとぶち上げた。ところが、その意欲作「今だから、新作ドラマ作ってみました」が放送されると、まったくもって実にガッカリ……。やっぱりテレワークじゃ仕事にならねえ、との思いを新たにした人もいるのでは。

 ***

 NHKは4月27日、テレワークドラマの放送を発表した。出演陣やスタッフも打ち合わせはじめリハーサル、本番収録にも直接会うことなく、パソコン、スマホなどを使って制作するというのだ。5月4日、5日、8日と3夜にわたって放送されたオムニバスドラマで、総タイトルは「今だから、新作ドラマ作ってみました」。“今”とはもちろん、コロナ禍により各局が新作ドラマの撮影ができず、困っている現状を指しているのだろう。攻めのNHK、ここにあり……という勢いはあった。民放プロデューサーが言う。

「テレワークドラマの発表があった時は、NHKもやるなあと感心しました。民放だって、何か新しいやり方はないかと考えています。しかし、4月7日に安倍首相が緊急事態宣言を発動してわずか20日後のことでしたからね。NHKは一体いつから準備していたのかと思いました。ところが、宣伝を兼ねて制作過程を綴っているスタッフブログを覗いてみると、企画から2週間足らずで撮影していたようです」

 脚本はメールで送り、2日後に監督との初打ち合わせ、本読みもテレワークで行われたようだ。リハーサルではカメラ位置なども確認された。カメラマンはおらず、出演者自身が設置して、スタッフからの遠隔操作で位置決めが行われた様子も記されている。そして本番では、《日本中が一斉にリモートで仕事を始めたことで回線が混雑したためか、ビデオ通話の映像が何度もフリーズ》ともある。

「ドタバタの撮影だったことも明かされて、大丈夫かなあと心配になりました。実際に放送を見てみると、正直言って、つまらなかったですね」(同)

 ちなみに4日に放送された第1夜「心はホノルル、彼にはピーナツバター」(出演:満島真之介、前田亜季)の視聴率は1・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)。5日の第2夜「さよならMyWay!!!」(出演:小日向文世、竹下景子)は2・2%だった。

「見事にコケましたね。関心が高かったのは業界だけだったのかもしれません。視聴者から“受信料返せ!”と言われても仕方ないレベルでした。まあ、それはそれで良かったかもしれませんが……」(同)

破れかぶれのNHK

 プロから見ると、どこがそれほど酷いのか。

「出演者の元には、パソコンの他に、少なくとも3台の撮影用カメラが置いてありました。メインはパソコンの映像ということなのでしょうが、周りのカメラとの画質の落差が激しすぎです。それならパソコンは、はめ込みでいいから、最初から撮影用カメラで取ったほうがよほど見やすかったはずです。また、スタジオは使わず、出演者の自宅からのテレワークなんて報じたところもありましたが、どうにもセット感がアリアリでしたね。それなら、NHKのスタジオ使えばいいんですよ。そして音声、パソコンマイクのモゴモゴ音が聞き取りづらかった。演出のつもりかもしれませんが、モゴモゴ音にBGMがカブると、さらに聞き取れない。また、部屋にモノが少ないせいか、撮影用マイクで拾った声も反響していました。こんな習作の域も出ていないドラマでは、視聴者には無論、仕事が減って文句も言えず、機材設置までやらせた俳優たちにも失礼です」(同)

 むしろ、制作風景を見せたほうが面白かったかもしれない。

「NHKはなんだか、コロナに乗じて破れかぶれというか、何でもありな雰囲気です。ひょっとすると、それも放送するかもしれません」(同)

 民放がやるべき番組だったのでは?

「はっきり言ってしまうと、民放は視聴者よりも、スポンサーにお見せできる作品を作らないと、会社が潰れてしまいます。あれは何だ!と怒りを買って、出稿を止められたら死活問題ですからね。ですから、ある程度、実績のあるプロデューサー、ディレクテーでないと、起用されることはない。少なくともワイドショーなどのコーナーで鍛えられ、腕を磨いてからでないと。もちろん、NHKに入局する人も番組を作りたくて行くのでしょうが、東京制作の全国放送を手がけられるのは一握りでしかない。若い人にはフラストレーションも溜まるでしょうし、このコロナ禍ではなおさらでしょう。だからといって、見る側の気持ちを考えない、独りよがりの番組を“みなさまのNHK”が放送してはいけませんよ。テレワークドラマを“民放も追随か”なんて報じたところもありましたが、とんでもない。反面教師にしかなりませんでした」(同)

 大河ドラマ「麒麟がくる」は、6月7日放送分の第21話でストックが切れるというが、さすがにリモートじゃ無理か。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月12日 掲載